生命科学研究科の村井 亮太さんと生命科学部 本橋 健 教授らのグループが、光合成機能調節に関与すると考えられるCBSXの機能を再評価

生命科学研究科 大学院生(研究当時)の村井 亮太 さんと生命科学部 本橋 健 教授らのグループが、光合成機能調節に関与すると考えられるCBSXタンパク質の機能を再評価しました。
本研究成果は、2021年2月16日付で、国際オンライン科学誌「Frontiers in Plant Science」に掲載されました。

研究の背景

植物は太陽光のエネルギーを用いて、空気中の二酸化炭素を有機物に固定する光合成を行います。光合成の反応は複雑であり、昼と夜でその反応は厳密に制御されています。植物には、昼夜での光合成代謝反応の切替えを担うチオレドキシンと呼ばれるタンパク質が存在しており、光合成の反応を制御しています。
光合成を行う植物の葉緑体では、数多くの種類のチオレドキシン(Trx)が存在していますが、それらがどのように標的のタンパク質を見分け、その機能を制御しているか、明らかとなっていません。これまでに光合成機能調節因子チオレドキシンを制御する因子の候補がいくつか見つかっており、そのひとつがcystathionine β-synthase X (CBSX)です。しかし、CBSXはチオレドキシン機能を制御することが提唱されているものの、その具体的な制御の実体は明らかとなっていません。

研究の概要

図1 シロイヌナズナcbsx変異株の生育
葉緑体に局在するCBSXは2つの遺伝子が知られており、その二重変異株は、野生型とほぼ同様な形態を示した。
今回、葉緑体チオレドキシンが制御するカルビン回路のフルクトース1,6-ビスホスファターゼ(FBPase)、セドヘプツロース1,7-ビスホスファターゼ(SBPase)に加えて、チオレドキシンの主要な標的タンパク質であるNADP-リンゴ酸デヒドロロゲナーゼ(NADP-MDH)について、Trxがこれらの酵素を活性化する際に、CBSXがチオレドキシンの制御を行うかを調べました。
試験管内 (in vitro)での実験では、これら3つの酵素のチオレドキシンによる制御に、CBSXは関与していませんでした。さらに、生体内 (in vivo)でのCBSXの機能を調べるため、シロイヌナズナCBSX欠失株を用いて解析を行いました。 CBSX欠失変異株の植物体は、野生株とほぼ同じ表現型でした。
図2 Trxによる標的タンパク質の活性化におけるCBSXタンパク質の関与
Trxにより活性制御されるFBPase, SBPase, NADP-MDHの活性化に、CBSXタンパク質は直接関与していなかった。
また、CBSXがチオレドキシンの機能制御に関わっているとすれば、CBSX欠失株ではチオレドキシンが制御するFBPase, SBPase, NADP-MDHの活性調節に異常が生じるはずです。しかしながら、CBSX欠失変異体において、FBPase, SBPase, NADP-MDHは野生型と同様に光による活性化を正常に受けていることが明らかとなりました。
今回の研究から、チオレドキシンの機能を制御することが予想されるCBSXタンパク質は、チオレドキシンによるFBPase, SBPase, NADP-MDHの活性化制御とは、少なくとも関係ないことが分かりました。
今後、チオレドキシンの制御する数多い経路のうち、CBSXタンパク質がどの経路に関与するのかの解明が必要となります。

論文情報

論文タイトル 「Evaluation of CBSX Proteins as Regulators of the Chloroplast Thioredoxin System」
掲載誌 Frontiers in Plant Science
掲載日 2021年2月16日
著者 村井 亮太(京都産業大学)、桶川 友季(京都産業大学)、佐藤 望(京都産業大学)、本橋 健(京都産業大学)
DOI 10.3389/fpls.2021.530376   
和文タイトル 葉緑体チオレドキシンシステムの制御因子としてのCBSXタンパク質の評価
 

謝辞

本研究は、JSPS科研費(16K07409)、発酵研究所(一般研究助成 G-2019-2-067)、戦略的研究基盤形成支援事業「植物における生態進化発生学研究拠点の形成-統合オミックス解析による展開-」(S1511023)の支援を受けて実施されました。
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