国際関係学部 グローバル・ガバナンス論IIで外部講師を招いてオンライン講義「ツバルの現状とNPO/NGOの役割」を実施

2020.12.18

12月17日(木)、「グローバル・ガバナンス論II」(担当:国際関係学部 井口正彦准教授)において、NPO法人ツバルオーバービュー理事の河尻京子さんが「ツバルの現状とNPO/NGOの役割」について講演しました。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、ツバルの首都フナフティの海面は毎年平均で最大約4ミリ上昇しており、今世紀で最大60cm海面が上昇すると指摘されています。また、大型化したサイクロンによる被害も以前より見られるようになってきています。ツバルではこのような気候変動の影響が日常の一部となってしまっており、海面上昇などにより地面から海水がにじみ出ることによる農園や畑への塩害や、波が道路にかかって通行が難しくなるといった被害が出ています。これに加えてツバルには川がなく、真水の水源は雨水だけという状況の中、サイクロンによって雨水タンクも海水に流されてしまい、飲水を失ってしまうこともあるという衝撃の現状があります。

オンライン講義の様子
2006年より日本のNPOが海面上昇による海岸の浸食を少しでも防ぐために行ってきたマングローブ植林事業を行ってきました。河尻さんは、2019年より現地駐在員として、この事業を管理し、現地の島役場に事業を移管する仕事を行いました。ツバルでは地理的にマングローブの植林に適した土地が限られていることもあり、植林してもマングローブの種が潮で流され、定着率が良くないという困難に直面しながらも、地元の人の協力を得て根気強く地道に事業を展開されてきました。現在では、継続的な資金の確保という課題はあるもののNPOの手助けがなくても、地元の人達が自分たちで自主的にやり続けることができるようになったそうです。また、ツバルの人たちは積極的に各国政府や国際機関などから支援を確保し、海岸の埋め立てや護岸工事なども推進しています。その背景には、地元の人達は、外国へ移住するのではなくて、もっとツバルを良くしていこう、自分たちがその土地で生きていく権利を守ろうという前向きな姿勢がある、というお話には大変感銘を受けました。 
マングローブを植えるツバルの人々。ツバル政府の気候変動啓発週間の一環として実施。
ツバル政府関係者と河尻さん(後列左から三番目が河尻さん、前列右から4番目がカウセ・ナタノ首相)
また、将来、NPOで働きたい学生に向けて、大学を卒業してすぐにNPOに就職するよりも、一回企業などで就職をして、経験を積んでから、そのキャリアを活かす形でNPOに就職するのが良い、というアドバイスもいただきました。

学生からは、「海水が地面から染み出ていることにツバルの人々が慣れてしまっているという事実に驚いた」、「NPOは政府や企業など、他のアクターでは補えない活動をしているイメージがあったが、今後社会変革を起こしていく上で非常に重要だということが分かった」、「現地の人々が改善に向けて努力しているにもかかわらず、環境破壊に影響を及ぼしている先進国は、住めなくなった現地の人々をどう保護するかを話し合っている。そうではなく、今の状況を諦めずに改善方法を考える事が必要だと感じた」といった声があり、より深い学びへと繋がりました。 

国際関係学部の授業では、外交、ビジネス、国際協力の現場で活躍する実務家を招き、世界の最前線の知識や実情を学びます。
他にもさまざまなゲストスピーカーによる講演会を開催しています!

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