国際関係学部 平和構築論で外部講師を招いてオンライン講義「平和と開発—日本/JICAのミンダナオ支援の現場から」を実施

2020.12.21

12月17日(木)、「平和構築論II」(担当:国際関係学部 クロス京子准教授)において、JICA(国際協力機構)の落合直之さんによる「日本とJICAのミンダナオ支援」についてオンライン講義がありました。
2014年、フィリピン政府と少数派イスラム教徒の武装勢力との間で和平合意が成立し、40年以上も続いた内戦に終止符が打たれました。フィリピン南部のミンダナオ島を舞台にして戦われたこの紛争では、少なくとも15万人が命を落とし、およそ200万もの人々が家を追われたと言われています。長期にわたって続いた紛争によって、イスラム教徒が居住するバンサモロ地域では他地域に比べて開発が遅れており、和平実現にあたり経済格差の解消と地域住民の生計向上が必要とされています。
日本政府は2002年から和平プロセスに関与し、JICAを通じた経済開発や復興援助のほか、国際停戦監視団(IMT)への要員派遣を行っています。今回講義をしていただいた落合さんは、1994年からミンダナオ和平支援に携わっておられ、2010年からはIMTに社会経済開発担当要員として2年間派遣され、その後2015年から3年間現地でJICAの支援を総括さました。現在は和平合意によって設置されたバンサモロ暫定自治政府の首相アドバイザーとして活動されています。 
講義では、日本のODAを用いた開発援助が平和構築支援においてどのように位置づけられるかが概観され、ミンダナオ和平支援におけるJICAの活動について、具体的なプロジェクトに言及しながら解説していただきました。落合さんは、JICAがフィリピン政府とミンダナオの現地の人々に一貫して寄り添いながら、すべての関係者との信頼関係を構築し、ミンダナオの和平プロセスを下支えしてきたことを挙げ、ミンダナオの和平支援が平和構築を通じた日本の対フィリピン外交の成果として評価されていると説明されました。JICAは現在、バンサモロ暫定自治政府に対し、正式な自治政府への移行を前にしたガバナンス、経済開発支援を行っているほか、武装組織の武装解除やコミュニティ開発を行っています。これらの取り組みは、ミンダナオ和平を定着・強化するものとして期待されています。 
学生からは、「プログラム内に立場が異なる集団がいるときに、開発支援が対立の要因とならないためにどのようにしているのか」といった質問や「紛争の再発を防ぐために、どのような取り組みをしているのか」といった質問が出されました。落合さんからは、紛争は突然始まったのではなく、そこには必ず歴史があること、平和構築支援には現地の人々と膝を突き合わせじっくり話を聞くことが重要であるとの答えがあり、現場での経験に基づく貴重なお話を伺いました。 

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