経済学部 フィリピン大学 マリア・クリスティーナ・エピシャ氏 研究会報告

2019.12.05

フィリピン大学経済学部助教授 マリア・クリスティーナ・エピシャ氏を迎え、「フィリピン労働市場における教育過剰の計測」についてご報告いただきました。

11月13日(水)の本研究会では、2019年11月にエピシャ氏が執筆したばかりの論文「College graduates in Non-college jobs: Measuring overeducation in the Philippine Labor Market」に基づいて、フィリピンの労働市場に起きている学歴ミスマッチについて考察されました。近年、フィリピンでは高等教育機関への進学率が高くなり、フィリピンにおいて大学卒業者の相対的な供給を増加させましたが、労働市場における雇用の分布は低スキルの仕事に大きく偏っており、一部の大卒者が教育を必要としない仕事に就いている可能性(教育過剰)および生産性に与える影響について考察されました。
エピシャ氏の研究では、学歴ミスマッチを統計的に検証しています。多くの労働市場で労働者に求められる学歴に対して、大学卒業者の能力が「学歴過剰—教育過剰(overeducation)-」状態です。検証作業にはフィリピン政府の2003年と2009年の家計・労働調査(15歳から64歳対象)のパネルデータ(サンプル・サイズ6万以上)を用いて、大学卒業者に対する賃金プレミアムを計算し、高校以下の卒業者に対する金銭的優位性を検証しました。さらにヘックマンの2段階推定法を用い、賃金プレミアムデータから大学卒業者と高校以下の卒業者の仕事を分類し、それぞれの労働生産性を測定するために双方の平均賃金を用いました。この分析により教育年数・在学年限と教育過剰の発生率との関係について有意性がみられました。分析結果から、全国の教育過剰率は30.9%で、産業別の場合、農林漁業(77.9%)、製造業(47.5%)、サービス産業の下で高度なスキル職類(16.8%)、低スキル職類(72.2%)があることがわかりました。
また研究会の後半では、フィリピンの大学卒業者の失業率が依然と高い中で、教育過剰の定義とそれから派生する生産性の影響についてディスカッションを行い、雇用機会の質の向上を図るための施策及び政府や企業の取り組みの在り方について、エピシャ氏と様々に意見交換しました。

11月14日(木) 3限には、学部生向けの講義「An Overview of the Philippine Economy:A Macroeconomic Perspective」も行いました。マクロ経済という観点から、フィリピン経済の構造変化及び格差と経済成長の関係について述べました。上級英語プログラムIIの学生が対象の為、講義は英語で実施し、フィリピンについての簡単なクイズに正解した学生には、景品付きの賞も設けました。本講義には約62名(学生と職員含む)が参加しました。

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