理学部の諏訪雄大准教授が新しいニュートリノ輸送方程式についての主著論文を出版

2019.08.27

成果

理学部宇宙物理・気象学科の諏訪 雄大 准教授は、田原 弘章 氏(東京大学)、小松 英一郎 所長(ドイツ・マックスプランク宇宙物理学研究所)と共同研究を行い、ニュートリノ輸送現象についての新規的な定式化を行い、新しい主著論文をProgress of Theoretical and Experimental Physicsから出版しました。

掲載論文

題目:Kompaneets equation for neutrinos: Application to neutrino heating in supernova explosions
著者:諏訪 雄大、田原 弘章、小松 英一郎
掲載誌:Progress of Theoretical and Experimental Physics, 2019, 083E04 (2019年8月23日出版)
https://academic.oup.com/ptep/article/2019/8/083E04/5553573
(オープンアクセスのため、どなたでも閲読可能です)
 

背景

非平衡輸送現象は物理学において普遍的な現象です。こうした現象を記述するときに使われるのがボルツマン方程式です。ボルツマン方程式は積分偏微分方程式の形で定式化されており、そのままの形で解くことは困難な方程式です。着目しているシステムに適した定式化を行うことで"解ける方程式"に書き換えることが重要なステップとなっています。

諏訪准教授の研究テーマである宇宙物理学では、光の輸送現象を記述する輻射輸送方程式が様々な場所で現れ、多種多様な定式化や解法の開発が活発に行われています。その中でも、カンパニーツ方程式は電子と光の散乱現象を記述するときに使われるもので、宇宙論や天体物理でよく使われているものです。

一方、超新星爆発や中性子星といった超高密度天体の環境下では光の輸送だけではなく、ニュートリノと呼ばれる電荷を持たない微粒子の輸送現象が重要な働きを及ぼすことが知られておいます。ニュートリノ輸送方程式は様々な方面から研究が進んでいる真っ最中の活発な研究現場です。

研究概要

この論文で諏訪准教授らのグループは、光の輸送現象の知見をもとにニュートリノ輸送現象を見直し、ニュートリノ版カンパニーツ方程式を導出しました。その形は光のカンパニーツ方程式によく似ていましたが、物質との散乱の強さの違いを反映した異なる方程式であることがわかりました。グループはさらにこの方程式の解析的な解を導き、またより複雑な状況に対応する数値的な解も求めることに成功しました。これらの解を詳しく解析することで、新しい方程式ではこれまで使われていたニュートリノ輸送方程式では見過ごされていた現象を定量的に計算できることを明らかにし、星が一生の最期に引き起こす大爆発、超新星爆発に大きな影響を及ぼし得ることが発見されました。

参考

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