国際シンポジウムおよびさくらサイエンスの活動報告

2015.12.28

さくらサイエンスプラン

京都産業大学経済実験室(KEEL)は、2002年3月に建設され,実験経済学の教育と研究の拠点として機能しています。この活動と人材育成の成果に基づき、科学技術振興機構(JST)の支援事業「さくらサイエンスプラン」とし、実験経済学の教育プログラムを2015年12月7日から15日まで京都産業大学で実施しました。

さくらサイエンスプラン参加者は、蘇州大学(蘇州),國立政治大学(台北)、マレーシア科学大学(ペナン)、ノッティンガム大学マレーシア校(クワルランプール)に所属する学生・院生・研究者11名であり、以下の活動を経験しました。

学部上級生と博士前期課程院生を主な対象とする実験経済学と実験哲学の体験的授業

小田教授が教室実験の実施と解説による授業を行いました。授業は、小田教授が京都産業大学経済学部と京都大学文学部で開講する講義の縮小英語版として、実験参加者の選好の制御を主題に組織されました。参加者は人文社会科学における実験研究の理論と実際を体験的に学びました。

博士後期課程院生および研究者を主な対象とする実験経済学と関連する理工学の授業

ニック・フェルトヴィッチ氏(メルボルン・モナーシュ大学)、西野成昭氏(東京大学)、小川一仁氏(関西大学)、秋山英三氏(筑波大)が、各々の研究に関連する話題(美人投票ゲーム、サービス工学、独裁者ゲーム、エージェント・モデル)についての授業を行ないました。これらによって、参加者は 実験経済学の最新の研究動向と 実験経済学の方法が経済学以外の科学や工学に応用されることを第一線の研究者から学びました。

経済実験と哲学実験の見学・体験・分析

参加者はKEELでの実験を見学するとともに自ら実験参加者として実験に参加しました。実験は周艶特約講師(京都産業大学)が担当し、実験の設計と参加者募集には飯田善郎教授(京都産業大学)と北村紘准教授(京都産業大学)が当たりました。参加者は実験者と実験参加者の両方を体験し、実験経済学の理解を深めました。

京都地域の企業と産業博物館の訪問

京セラ博物館と川島セルコンを見学しました。

国際会議「経済学と哲学における意識と意図」への参加

会議の詳細については後述しますが、さくらサイエンスプラン参加者は、最新の研究に触れるとともに内外の研究者との交流を深めました。


今回のさくらサイエンスプランは、昨年度末に短期間で準備して応募したところ採択になったものであり、これに学内資金による国際会議を関連させることで、国際交流、教育、研究の3面にわたる有意義な活動が可能になりました。これを可能にした大学の組織と個人に感謝します。とりわけ国際交流センター事務室にはよく助けられました。

今回の活動を可能にしたのは、KEELで人材が育ったこととアジア地域における経済学研究の発展です。実際サイエンスプランに参加した4大学はすべて小田が2008年以降に国際会議の基調講演や実験研究のために訪問したことのある研究教育機関でありますが、これらの大学との交流を深めるに際しては、KEELで実験研究に取り組んで研究者となり国内外の研究機関で活躍する諸君の貢献が大きく、また上記の担当者の中には、かつてKEELで博士論文のための実験研究をして研究者としての歩みを始めた人たちもいます。

さくらサイエンスプランの授業と講演はすべて英語で行われましたが、プラン参加者はマレーシアからの非中国系の参加者も含めてみな中国語を解し、本学から参加した学生も中国からの留学生たちでしたので、担当者以外はすべて中国語で意思の疎通ができる環境でした。これに驚いていると、教授以外はみな中国語が分かる研究室は世界中いくらもあるよとフェルトヴィッチに言われて、京都産業大学における私の演習も数年前からそのような環境であることが多いことに思いいたりました。今後の研究と教育においてこの含意は大きく思われます。

国際会議「経済学と哲学における意識と意図」

KEELにとっては、2004年と2010年の国際会議に続く3回目の国際会議であり、内外から70名の参加(海外から27名、国内から43名)があり、活発な議論が行われました。

意識と意図は、哲学においてはつとに重要な論題であり、神経科学においては最近注目されつつある研究対象です。哲学者と心理学者による基調講演および分科会報告は、人間が(人間および人間以外の)他者の行動の背後に意識と意図を認める条件の探求に関わるものが多かった。神経科学研究者による基調講演および分科会報告は、主体が自らの認知において意識と意図を自覚するか否かや、そのときの脳活動の計測に関わるものが見られました。

経済学研究者による講演および報告は、経済的意思決定において意識や意図があまり議論されない現状を反映して、それらに間接的に言及するものが主でした。しかし、他者の効用だけでなく他者の意図を考慮しての意思決定の観察と定式化に関する基調講演と分科会報告もあり、新たな研究方向を示唆するものでした。

KEELにおける研究成果も発表され,有益な議論がなされました。これは発表された研究に有益であるだけでなく、特色ある研究の発信地としてKEELがさらに認知されることに貢献したと思われます。さらに基調講演と分科会報告で様々な研究を知ったことは、KEELの所属する院生と指導教授にとっても特に修士論文や博士論文や論題の選択に際して有意義でした。
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