留学体験レポート 池之上 祐太郎さん(プーシキン大学)

はじめに

ロシア語留学できる都市はモスクワ、サンクトペテルブルグ、ウラジオストク、ミンスクなどたくさんあります。それぞれの都市に自身の歴史があり、観光名所があり、そして異なる価値観や背景を持った様々な人々が住んでいます。どこに留学してもかけがえのない経験となるはずです。私はモスクワにあるプーシキン大学で10ヶ月間ロシア語を学びました。相対的に比較することはできませんが、大学での授業、寮生活、週末の過ごし方など、この10ヶ月間を通して感じたこと、良かった点、悪かった点を述べていこうと思います。

大学での授業

1日90分が3コマあり、クラスの人数は10人くらいです。授業はもちろんすべてロシア語で行われクラスの人ともロシア語で会話します。宿題で読んできた内容について、わからない単語や表現を先生が解説したり、自分の意見を求められたりします。日本に関して聞かれることも多く、中には答えるのが難しい質問もありました。日本の歴史や文化について知ることも外国語を勉強するうえでは大切だと実感しました。私のクラスでは、週に1日リスニングの授業があり、ロシア語のニュースを聞き、それを要約し、ニュースで使われる形式的な単語を学びました。ロシア語のニュースはかなり早く読まれるため、リスニングの練習には最適だと思いました。2人1組でペアになり話し合うことも多く、クラスの人とコミュニケーションをとることに重点を置いた授業もありました。

寮生活

1つのブロックに2つの部屋があり2人用と3人用に分かれています。トイレ、シャワーは5人共用で、キッチンは各階に1つ設置されています。寮はお世辞にも奇麗とは言えず最初はこの寮で10ヶ月過ごすことができるだろうかと思いました。しかし良い点もあります。それは大学と寮がつながっており、外に出ることなく徒歩3分で教室に行けることや、様々な国から来た外国人が住んでいるためその人たちと交流できること、そしてクラスで仲良くなった人たちと一緒に料理をしたり食事したりできることです。困ったことは大学職員の仕事に対するルーズさです。人によって言うことが違ったり、手続きをたらいまわしにされたり、部屋の修理を頼んでも来てもらえなかったり、トラブルはたくさん起こりました。それでも私が寮に住んでよかったと思うのは、上に述べたようにクラスで仲良くなった人や同じ京産からの友人達といつでも会うことができ、多くの時間をともに過ごせたからだと思います。

週末の過ごし方

留学の前半は授業についていくのに必死で予習復習に多くの時間を費やしました。
それでもロシア人の友人と出かけたり、お互いの言語を教えあったりして、できるだけロシア語に触れる機会を増やそうと努めました。後半になると生活にも慣れ、自分のロシア語のレベルも上がり、モスクワだけでなく他の都市へも行きたくなり、様々な名所を見て回りました。中でもウクライナのキエフはとても印象に残っています。キエフの独立広場では2013年末から2014年にかけて大規模デモが起こり、自分と同じ年代の多くの若者が亡くなりました。日本のニュースで見ていた場所に行き、肌で感じ、自分自身の目で見ることができたことは良い経験でした。また、移動中の寝台列車でロシア人に囲まれて過ごし彼らと話したこと、現地の人たちと交流できたことは良い思い出です。

最後に

人それぞれ留学の目的は様々です。もちろん語学留学をしに行った以上、レベルが上がらなければ本末転倒ですが、そればかりにとらわれるのも良くないと思います。現地の人と交流したり、1人で知らない都市に行き日本とは違う雰囲気を感じたりすることも大切だと思います。言いたいことが伝わらず、時には嫌な思いもします。また、様々な人種が住んでいるロシアでは外国人を外国人扱いしないことも多く、ロシア人と同じ扱いをされ、困っていても気づいてくれないこともあり、冷たさを感じることもあります。しかしそれは決してロシア人が冷たいのではなく、言わなければ伝わらないという文化の違いからです。言えば助けてくれる人は必ずいて、人の優しさを感じることも多々もありました。このようなことは日本にいると経験できないことです。留学の間に様々なことを経験し、そういう中で一生付き合える友人が1人でもできると、留学してよかったと思えるはずです。
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