サレントで学んだこと(関谷 百恵さん)

私はレッチェで暮らして、たくさんのイタリア人やさまざまな国の人たちと言葉を交わしたり遊んだりしているうちに、ありのままに振舞ってもいいんだ、といった子どもの心を取り戻したように思います。イタリア人は自分がしたいように振舞い、思ったことをはっきり言ってしまう人が多いです。最初は「イタリア人は少しわがままだなぁ」と感じたこともありましたが、そのうち、感情を偽らずありのままに自分を出すことのほうが大切なように思えてきました。感情をむきだしにすることはカッコ悪いことではなく、意見を伝えるための大切なコミュニケーション方法であることを実感したのです。
私が嬉しかったのは、言葉や文化が違っても考え方の合う人は海外にもたくさんいるということが分かったことです。もしあなたが日本のおしとやかな文化が自分には合わないと感じていたとしても、外に出れば自分に合う文化をすぐ見つけられるのではないでしょうか。特に南イタリアは日本の文化とかけ離れていたので、面白かったです。個性の強い人が多かった分、自信をもって自分の性格を活かしてたくさんの人と意見を交わすことができましたし、時には苦手としていた反対意見も言うことができるようになりました。なぜなら彼らは一人ひとり意見が違うのは当たり前と思っているからです。個人的に面白かったのは、バールや友達の家に入り浸って、それぞれの国の問題点や課題、経験したカルチャーショック、個人的な相談などを熱く語り合ったことです。生の意見や本音を聞けたことで留学したかいがあったと思いますし、一生忘れない思い出になりました。話すのが楽しくて、インドア派だった私がほぼ毎日外に出かけて、誰かと会ってコミュニケーションをとっていたことは今でも驚きです。そして自分がきっかけになって日本に興味をもってもらえたり、日本に留学したいという友人ができたりしたので、外国の人たちに影響を与えられたことにとても喜びを感じました。
自分は留学に行く前にたくさんの人と話すことを目標としていたので、授業や電車の中や手続きなどの待ち時間に、近くにいる人に話しかけるようにしていました。みんなちゃんと質問に答えてくれたし、初対面でものりがよく、自分が声をかけたことがきっかけで仲良くなった人もたくさんいました。あのとき勇気を出して思い切った行動に出て、本当によかったと思います。友人には「イタリア人みたいだね」と言われました。ときには文化の違いで分かってもらえないこともありましたが、話すことで誤解を少しずつ解いていくことができました。本当にコミュニケーションの大切さが身にしみました。
留学前、日本に住んでいたり、日本に旅行しに来る外国の人たちが何を考えているのか、彼らが日本をどのように見ているのか私は気になっていました。そして彼らの幅広い考え方を自分にも取り込んでみたいと思っていたので、少しでも彼らの考えに近づけるよう試行錯誤しました。しかし近づこうとするたび、彼らとの軸となる考え方が根本的に違うということも実感しました。例えば私たち日本人は何かを語るとき、いつも他人の目があり、言葉一つ一つに重みが感じられるときもありますが、イタリア人からすれば言葉は単なる伝える手段に過ぎないので、気軽にしゃべりやすかったのです。ニュースやメディアで取り上げられるヨーロッパには、日本目線の解釈がたくさん含まれてしまっていて、実際はかなり違った考え方や価値観を彼らは持っているのだなと思いました。
イタリアだけではなく、逆に日本の良いところもたくさん知ることができました。それぞれの国の長い歴史が積み重なって、国に合ったやり方ができていることが分かりました。
カルチャーショックはたくさんありましたが、その際に自分の知らなかったイタリア文化を発見することができました。それが私にとって、そこで得た宝物であり、今後もまた新しい物の考え方を知りたいと思っています。人と言葉を交わすこと、人との出会いの大切さに気づかされたイタリアでの1年間でした。
サレント地方の海にて
最後の授業とテストの後で
泊まらせてもらった友達の家にて
オリーブ畑で収穫の体験
誕生日を友達やシェアメートと一緒に
学校近くの公園で
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