「フライブルク大学での海外実習を終えて」 宮崎 幹大さん

ドイツでの海外実習を通して感じたことをありのまま書こうと思います。

今回が初めてのドイツでの生活ということもあり、慣れないことも多くこの1ヶ月間はあまり自分に余裕がありませんでした。こういった状況では自分の弱さが露骨に見えてきます。もちろん、この弱さは日本でも何度か目にしたことがありましたが、それなりに誤魔化せてきました。しかしドイツではそうはいきませんでした。伝えたいことが伝わらないもどかしさや、伝えることから逃げたくなる状況も多々ありました。ただ逃げることは出来ませんでしたし、そうしたくないという思いもありました。

海外で生活することは非常にストレスのかかることなのだと実感しました。私は寮に滞在しており、同居人には3人のドイツ人がいました。寝ている間に、彼らが喋っているドイツ語が聞こえてきただけで飛び起きたことも数回ありました。あの頃は本当にドイツ語自体がストレスだったのだと思います。ただこれは時間が経つとともに収まりました。今思うとドイツ語を喋らなければならないと気負っていたのでしょう。

精神的に余裕がない状況を、冷静に見つめることが出来ない時期は苦しかったです。なぜか他人のことばかりが気になって、自分を直視することが出来ずにいました。楽しそうな生活を送っている人を羨ましがったり、クラスメイトたちが不自由なくコミュニケーションが取れている状況を目にして焦ったりもしました。この頃は純粋に自分を見失っていたのだと思います。実習が始まり1週間ほど経ったころに、自分のやるべきことは自分一人で決めなければならないのだと気付きました。当たり前のことだろう、考えなくても分かるだろうと思うかもしれませんが、あの頃は本当に分かっていなかったというか、気付けなかったのです。ストレスのかかる環境に身を置く場合は、完全に一人になって冷静になる時間が必要なのだと学びました。

この実習では、一人でいる時間の大切さを感じました。あまり友達も多い方ではないし、日本でも一人でいる時間の方が長いですが、あれは本質的には一人ではなかったことに気付きました。口癖のように「一人でいる方が楽だ」とか言ってきましたが、あれは他人から干渉されることを避けたいという意味を込めて言っていた言葉でした。今となっては一人でいることはさほど楽なものでもなくなりました。というのも、一人でいる時間は真剣に自分と向き合える時間だと気付いたからです。必ずしも向き合う必要はないですが、一人でいる時間に価値を持たせるためには自分と向き合わないといけません。これからの時間を有意義に過ごすためにも、この習慣を失うわけにはいきません。これが今回の海外実習で得たものです。

また語学に関して、語学コースを通してドイツ語を聞いたり話したりすることは少し慣れたような気がします。クラスメイトも完璧にドイツ語が喋れるわけではありませんでしたし、そんな環境だったからこそ気楽にドイツ語を使うことが出来ました。ただ、欧米圏、特に北欧系の学習者は言語感覚的にも母国語と似ているため、ドイツ語の運用もスムーズに出来ていました。言語系統的にも全く異なる日本語を通してドイツ語を学習することの難しさを再確認しました。

またドイツ語以上に刺激を受けたのは英語でした。私は中級クラスに配属され、クラスメイトの半分は英語を母語とする学生で、残りの数人も英語を使うことが出来ました。そのため授業の解説は英語で行われることも多々ありました。幸いにも学習範囲が既に学んだことばかりであったため、解説が聞けずとも理解することは出来ました。ただ休憩時間になれば教室中に英語が飛び交っていました。ドイツ語であればある程度フェアなのですが、英語となると会話に飛び込む勇気はあまりありませんでした。ドイツなのだからドイツ語を喋って欲しいと思ったこともありましたが、これが世界のスタンダードなのだと実感しました。
実習期間も終わり、これからまた日本での生活に戻るわけですが、実習で感じたことを無駄にせず様々なことに挑戦していきたいです。まずは英語の学習に力を入れようかと考えています。英語が世界中をカバーしているわけではありませんが、やはり英語を習得することには大きな価値があると再認識しました。分かりやすい英語で話しかけてくれる優しいクラスメイトはたくさんいました。しかし私の話す英語には限界があり、どう頑張っても内容が浅かったり、平凡だったり、彼らにとって私は非常につまらない人物に見えていただろうと思います。自分の意見もまともに言えないようでは、本当にどうしようもないし、誰も救ってくれないのだと痛感しました。

また一人でいる時間や、ストレスのかかる環境は非常に苦しいものですが、やはりそれなりに価値のあるものだと気付けました。楽な道に逃げるのではなく、積極的に厳しい道を進み、価値のある選択をしていきたいです。本当の意味で、一人で生きていけるようになれば、それは成長したと言えるのではないでしょうか。この海外実習自体はあまり楽しい思い出にはなりませんでしたが、それでも良かったと思える時間でした。

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