平成28年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

平成28年度の経済学部の学部授業・カリキュラム改善に向けたテーマは、「多人数科目の主体的な学びの追及と、科目による満足度・受講生数のばらつきに関する調査」であった。調査対象の56講義を1限または5限の講義(23科目)と、2限から4限に実施されている講義(33科目)に分けて、講義の質(講師は熱意があるか、受講生は主体的に学べたか、知的刺激や成長実感が持てたか、総合的に満足できたか)という観点から比較を行ったが、全体としてみれば、講義の質の差はないという結果になった。ただし、1または5限科目の方が、2限から4限科目よりも講義の質の評価項目に対する回答の標準偏差が小さい傾向があり、平均値に違いがなくても評価のばらつきには違いがあり、この点について、注意を払っていく必要がある。
学生からの評価の高い科目(15科目程度)を見ると、例年同じ科目が並んでいる印象であったが、本年度は、新たな高評価科目が複数登場し、個々の教員の授業改善や新たな取り組みが評価された可能性がある。次年度の公開授業&ワークショップ等で、情報共有を図りたい。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告 

参加人数

  1. 「公開授業」:春学期6月16日(木)1限、沈政郁先生、企業経済論A(12502教室)
    秋学期11月24日(木)3限、藤野敦子先生、家計の経済学B(518教室)
  2. 「ワークショップ」:12月2日(金)15:30~16:30, 5号館コミュニケーションルーム1
    教職員 14名が参加 

ワークショップでの意見交換内容

  1. 大人数の講義における授業の工夫(多人数科目の主体的な学びなど)
  2. 最近の大人数講義における問題の共有
    大人数講義の技術的な困難・問題と、それに対する対策や工夫に関する活発な意見交換が行われた。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

過去2~3年に観察された1限や5限に実施される科目の受講生数の少なさ(30~50名程度)と偏った評価の問題は解消され、1限から5限までの科目の授業評価に偏りは見られなくなっている。講義の受講生数が多くても、授業の準備学習にある程度の時間を費やし、主体的な学びが達成されていることは、本学部のカリキュラムの長所である。準備学習の時間も増加傾向にあり、準備学習時間数が突出して多い科目が、非常に満足度が高いと評価されている例もある。事前・事後学習の与え方によって、授業の理解が進み、主体的な学びを進める助けとなっている可能性があり、準備学習と授業の連携の効果が出ているようである。

(2)1と2において確認された改善すべき点

受講生からの評価が芳しくない科目が固定化している。講師の熱意が高くない、受講生が主体的に学べていない、講義内容から知的刺激や成長の実感や、講義内容に興味が感じられない、と評価された科目の総合的な満足度が低くなっている。このような科目では、受講生の準備学習時間も少ない傾向が出ている。教員が熱意をもって講義の準備をしても、それが講義の中で受講生に伝わらなければ、受講生の積極的に学ぶ姿勢につながらない可能性がある。教員側が、受講生の主体的な学びを引き出すための働きかけを強めるなどの工夫が必要である。

4.次年度に向けての取り組み

経済学部では、平成29年度から入門セミナーの内容刷新(アカデミック・スキル)の試行期間に入り、平成30年度には本格実施を予定している。カリキュラムの確立という観点からは、読む・書く・話す・調べるなど広範な内容を含むアカデミック・スキルの中で、特に経済学部生に求められる内容を厳選し、高校教育から大学初年次教育、初年次教育から専門教育へのスムーズな移行を可能とするような初年次教育の内容を確立することが求められる。また、カリキュラム改善(授業の課題の洗い出しと改善)という観点では、入門セミナーは少人数で25クラスが開講される科目であるため、教員間での授業の課題および改善方法の共有は特に重要である。次年度からは、入門セミナーのカリキュラムの確立と改善について、学習成果実感調査を大いに活用して行きたい。
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