平成27年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

経済学部では、本年度から「講義科目の充実」という目標を掲げ、講義科目の質の向上を目指す取り組みを行っている。初年度である平成27年度の調査結果の要点は以下の通りである。特筆すべきことは、よく社会科学系学部で指摘される「大規模講義で受け身の学び」という印象の講義は非常に少ないということである。

  1. 講義は比較的少人数で実施されている(実際の受講生数)
    1限に実施される講義科目は80名、2から4限目科目は135名、5限目科目に至っては53名という少人数で講義が行われていることがわかった。
  2. 受講生はアクティブに学んでいる
    受講生の大半は座っているだけでなく、講義終了後に関連事項を調べたり、別の観点から考えたり、図やグラフや計算に自分で取り組んだりと、主体的に学んでいる。このような取り組みを行ったと答えた受講生の割合は80%に達した。ただし、これは教員の講義設計の成果でもあり、強制された結果なのかもしれない。
  3. 事前・事後学習は機能しており、講義の理解に役立っている
    1コマあたりの事前・事後学習が30分未満という受講生が40%いるものの、30分から60分程度とする受講生が最も多く、90分以上学ぶ受講生も16%存在する。「事前・事後学習が講義の理解に役立つ」と感じた受講生は55%であった。
  4. 「講師の熱意」「主体的な学び」「知的刺激や成長実感」が満足度に直結する
    学生が何から講師の熱意を感じるのかははっきりしないが、講義を受講して満足を得るポイントは、「講師の熱意」を感じる面白い講義を受け、自ら「主体的な学び」を行い、その結果として「知的刺激や成長実感」を感じられることのようである。

今回は52の講義科目で調査を実施したが、科目による満足度のバラツキは大きい。次年度以降も、継続してバラツキを小さくし講義の質を上げる取り組みを実施したい。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告 

参加人数

  1. 「公開授業」:秋学期公開授業(11月17日5限)
    寺崎教授「都市経済論B」参加人数:7名(春学期との合計で23名)
  2. 「ワークショップ」:経済学部公開授業に関するワークショップ(12月1日3限)
    参加人数8名

ワークショップでの意見交換内容

春学期の公開授業「医療経済学A」および秋学期の公開授業「都市経済論B」について意見交換を実施。どちらの講義も、その特徴はアクティブ・ラーニングが、高いレベルで実践されていたことである。
医療経済学Aの授業は、講義中に、(1)前回講義内で受講生が取り組んだレポートのフィードバック、(2)新聞記事を読みながら行う、課題プリントの穴埋め作業、(3)その回の講義に関するレポート(400字程度)作成、といった受講生自身が手や頭を動かす時間が多く取られていた。都市経済論Bは、講義でありながら情報処理教室で実施され、データをふんだんに用いて講義内容を客観的に確認しながら進められていた。さらに、教員が示した都市の状況を、受講生が他の都市のデータを用いて分析してみるという作業を繰り返すことで、受講生は休むことなく主体的に学んでいた。
医療経済学Aについては、計算し尽くされた授業構成と熱意(毎回受講生のレポートに目を通しパワーポイントにして講評を行う、毎回最新の新聞記事を使った詳細な穴埋め教材を作成するなど)を賞賛する意見が多く寄せられた。教員は、授業の最初から最後まで受講生に内職する隙を与えないように授業を進めており、この点は大いに評価できるものの、次の段階(強制されなくても授業に集中し、要点をメモに取ることで講義内容を再構成し、理解を深めるなど)への移行の難しさが問題とされた。都市経済論Bに関しては、15回の授業内容について何回分かまとめてレポートに書かせるのではなく、グラフを作成したり分析したりといった作業の結果明らかになった点を、その都度しっかりまとめさせれば、授業内容の理解という点でより充実するのではないかという意見が寄せられた。
どちらの講義も、受講生が主体的に学ぶ講義として大変優れた見本となる講義であり、受講生の満足度が高いことが頷ける講義であった。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

経済学部の講義科目が、決して大人数・受け身で実施されているものではない、また、事前・事後の学習をしなくても理解できるものではなく、多くの私立大学の社会科学系 学部の講義に対する印象とは一線を画しているということは強調しておきたい長所である。

(2)1と2において確認された改善すべき点

上記(1)の長所は確認できたものの、経済学部の授業・カリキュラムに関して2つの問題点が指摘できる。まず、講義科目の選択の自由度について点検が必要である。ある科目を選択した受講生の6割前後が「時間割の都合」など興味や関心の有無ではない理由で受講しており、このことは講義に取り組む姿勢に影響を与えうる。また、5限科目の稼働率の低さが問題である。せっかくの人気科目(受講満足度が高く、主体的に学べると評価が高い)が5限に集中しており、受講生数が極端に少ない。5限科目を5限に固定するのではなく、ローテーションで2-4限に移動させることにより、より多くの受講生が受講できる体制を作る必要がある。

4.次年度に向けての取り組み

次年度の取組みたい点は2つである。1点目は、受講生の講義科目の選択の自由度についての点検を行い、「興味関心のある講義科目を選択し、意欲を持って学べる環境」を整えたい。2点目は、少人数(受講生数50名程度)で満足度が85%以上の講義と、大人数講義(受講生数200名程度)であっても80%という高い満足度を得ている講義を見学し、中規模から大人数講義で参考になる「主体的な学び」「知的刺激や成長実感」に関するヒントを得たい。この2つの取り組みから、受講生の受講姿勢と講義の質の両方を高め、経済学部をより充実した学びの場としたい。
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