令和5年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」
1.「学習成果実感調査」についての分析結果
経営学部では、学習成果実感調査の分析を、学部全体レベル、科目区分(導入、導入以外、演習)レベルで春学期と秋学期の2回行っている。すべての調査に共通している4つの調査項目を中心にみると、経営学部は春・秋学期とも「1回の授業あたりの準備学習等(事前・事後学習)にかけた時間」が全学平均より5分程度短い2時間ほどであったものの、その他の3項目(「教員から伝えられた「授業の到達目標」にどの程度到達できたと思うか?」「科目の学習を通じて、大学で学ぶ意欲が高まったか。」「総合的にみてこの科目に満足しているか。」)については、全学平均と同等の結果であった。
また科目区分ごとの集計結果からは、春・秋学期とも4つの調査項目について、総じて導入、導入以外、演習の順に良好な結果を示していた。導入→導入以外→演習という順はおおよそ年次進行と重なることから、学生は年次が進むにつれて、より事前事後学習の重要性を認識し、到達目標に達することができるようになっており、しっかりと学修を進めていると考えられる。これが学ぶ意欲、履修満足度の向上につながっており、学修の好循環を作り出していると推察される。とくに演習については、すべての調査項目について、他の区分(導入、導入以外)の科目よりも顕著に高い水準にあり、演習の教育効果が非常に大きいことが窺われる。
また科目区分ごとの集計結果からは、春・秋学期とも4つの調査項目について、総じて導入、導入以外、演習の順に良好な結果を示していた。導入→導入以外→演習という順はおおよそ年次進行と重なることから、学生は年次が進むにつれて、より事前事後学習の重要性を認識し、到達目標に達することができるようになっており、しっかりと学修を進めていると考えられる。これが学ぶ意欲、履修満足度の向上につながっており、学修の好循環を作り出していると推察される。とくに演習については、すべての調査項目について、他の区分(導入、導入以外)の科目よりも顕著に高い水準にあり、演習の教育効果が非常に大きいことが窺われる。
2. 学部独自のFD活動についての報告
(1)公開授業とワークショップ
- 春学期公開授業:
- 科目:「マーケティング入門」
- 担当教員:上元 亘
- 実施日時/場所:5月29日(月)13:15-14:45 6301教室
- 参加人数 6名(うち職員1名)
- 春学期ワークショップ:
- 実施日時/場所:5月29日(月)14:55-15:20 5号館2階ミーティングルーム2
- 参加人数 5名
- 〈ワークショップでの意見交換内容〉:
・1回生向けの入門科目ということで、ゆっくり丁寧に話をされているのが印象的であった。
・レジュメの穴埋めや動画視聴に加え、ムードルを使ったリアルタイムコメントシステムも導入するなど、履修者を飽きさせない工夫が随所に見られた。加えて、場合によってはグーグルのFormsを活用することもあるとのことだった。
・コロナ禍後の対面形式大規模講義の復活にともない、大教室での私語対策が再び必要になっている。履修者が多数にわたる大教室講義については、遠隔方式でもいいのではないかと感じる。
・講義内で紹介する具体的な事例の選択について、参加者全員が興味を持つような事例を選ぶのは難しい。講義を機にいろんな事例を知って勉強してほしい、というスタンスを取るしかない。
・リアルタイムコメント機能でコメントを出した学生に加点するといった措置も考えられるが、「作業に手間がかかる」「とりあえずコメントだけを出すような行為を防げない」といった壁があり難しい。
- 秋学期公開授業:
- 科目:経営戦略データ分析
- 担当教員:北原 敬之
- 実施日時/場所:11月8日(水)10:45-12:15 T402教室
- 参加人数 6名(うち職員1名)
- 秋学期ワークショップ:
- 実施日時/場所:11月8日(水)12:20-12:50 5229演習室
- 参加人数 6名(うち職員1名)
- 〈ワークショップでの意見交換内容〉:
・データ分析の手法を学ぶのではなく、経営について考えるツールとしてのデータを学ぶ、という趣旨の講義である。
・レジュメには最新の情報がたくさん盛り込まれており、その解説を基本とした講義スタイルを採用している。一方、教員と学生、あるいは学生同士のコミュニケーションについては、ムードルのフォーラム機能を活用している。その方がレベルの高いやり取りができるからである。
・成績評価について、かつては学期末試験を課していたが、これだと学生が全体的な理解をできているかが評価しにくいことから、今は小テストとレポートによる評価に切り替えている。具体的には、講義内容のサマリーおよび講義内容に対する意見を2000字以上で書けというものである。
(2)その他研修会等
- 教育の質の保証についての理解促進
- 内容:公益社団法人私立大学情報教育協会では、教育方法、教材開発、大学改革の戦略、教育支援などについてのコンテンツをオンデマンド配信している。多種多様なコンテンツが用意されているが、教員によって直面する問題は異なるため、各自の目的にあった講義を視聴し意見交換を行う。
- 実施期間:5月から7月の間で視聴し、コメントを提出し共有
- 参加人数:25名
- 学部教育FD研修会
- テーマ:就活の早期化とゼミ運営の両立について
- 概要:進路・就職支援センターの豊田氏から以下の事項について説明があった。
・就活のスケジュール(選考の早期化が進んでいる)
・就活の開始時期と内定数などの関係(就活開始時期が早いほど内定者数が多い、など)
・インターンシップの定義や内容(インターン情報が採用に活用されることで、その重要性が高まっている)
・インターンシップ参加までの流れ(夏のインターンに参加する場合、春から準備が必要)
また、質疑応答として以下のようなものがあった。
・スライド資料の内定率について、学外企業と学内の間でなぜデータに差があるのか。
・就職エージェントの内容(実情)について学生に伝えてほしい。
・インターンと授業についての関係について、学生にどのように伝えているのか。 - 実施日:7月19日(水)12:20〜13:00
- 参加人数:26名
- 大学院教育FD研修会
- テーマ:ChatGPTとレポート採点・論文指導について
- 概要:教育支援研究開発センターが実施していた「ChatGPTと大学教育を考える」という研修シリーズの動画を視聴し、意見交換(以下内容)を行った。
・個々の教員による対応だけでなく、組織的な対応も必要だと感じる。例えばベーシックセミナーで生成AIに関するレクチャーを導入するなど。
・「生成AIをこう使ってはいけない」を教えることも大事だが、「生成AIはこうすれば上手く使える」も併せて教えるべきである。例えば、生成AIはES作成に役立つ可能性があり、生成AIを使いこなせる程度の最低限の能力が就職活動に求められる可能性もある。
・便利なツールの適切な使い方を教えると同時に、授業における課題を遂行する意味と、自身の学びにどうつなげるかを今一度強調して伝える重要性をひしひしと感じた。 - 実施日:2023年12月20日(水)12:20〜13:00
- 参加人数:18名
- 〈ワークショップでの意見交換内容〉:
・学部教育FDでの卒業研究(卒業論文)に関する話題提供とその後の意見交換を基に、修士論文の指導について意見交換が行われた。具体的には、各教員から次のような意見が挙がった。
・修士論文では、卒業論文とは異なり、より厳重に引用に注意しなければならない。そのため、コピー&ペーストの文章が含まれないようなチェッカーを導入してもよいのではないか。
・修士論文の指導を、卒業論文の指導と同じように多くの学生に対して実施することはできない。
・修士論文で利用予定の調査方法を扱った先行研究を修士課程の大学院講義で読み解く、という授業を設計している。
- パワーランチ
- 第43回 パワーランチ
講 師:近藤隆史
テーマ:ケースライティング、シミュレーション、ディープラーニング
実施日:4月19日(水) 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:24名 - 第44回 パワーランチ
講 師:岡部曜子
テーマ:経営と言語コスト
実施日:5月17日(水) 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:20名 - 第45回 パワーランチ
講 師:上元亘 先生
テーマ:サービス消費におけるカスタマー・トランスフォーメーション研究に関する展望と課題
実施日:6月21日(水) 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:22名 - 第46回 パワーランチ
学部教育FDとして開催 - 第47回 パワーランチ
講 師:新田隆司 先生
テーマ:組織と組織とをつなぐ個人の役割─信頼関係の構築とイノベーション─
日 時:9月20日 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:15名 - 第48回 パワーランチ
講 師:宮永健太郎
テーマ:新書執筆こぼれ話
日 時:10月25日 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:13名 - 第49回 パワーランチ
学部・大学院教育FDとして開催 - 第50回 パワーランチ
講 師:中野幹久(共同研究者:佐々木利廣)
テーマ:ふろしきメーカー 山田繊維の事例研究(現在進行中)
日 時:3月15日 12:00 〜 13:00 Zoom meeting
参加者:11名
- 第43回 パワーランチ
3.総括
(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所
現在のカリキュラムは、1年次に経営学の考え方の基礎を学び、2年次以降はそれぞれの関心のある領域を専門科目や演習を中心により深く学ぶことができるような設計となっており、学習成果実感調査の結果からもカリキュラムがおおよそ設計の意図どおりに機能しているといえる。
またカリキュラムの重要な要素である授業については、経営学部では年2回の公開授業(ワークショップも同時開催)、年1回の教育の質の保証についての理解促進の動画視聴および意見交換、月1回の教員の研究内容・関心事を発表するパワーランチ開催などを通して質の担保を図っている。参加者からは、これまでに気づかなかった新たな視点を得た、講義に役立つ知見が得られたという声があり、教員の授業に対するモチベーションアップという点からも教育の質の向上につながっている。
またカリキュラムの重要な要素である授業については、経営学部では年2回の公開授業(ワークショップも同時開催)、年1回の教育の質の保証についての理解促進の動画視聴および意見交換、月1回の教員の研究内容・関心事を発表するパワーランチ開催などを通して質の担保を図っている。参加者からは、これまでに気づかなかった新たな視点を得た、講義に役立つ知見が得られたという声があり、教員の授業に対するモチベーションアップという点からも教育の質の向上につながっている。
(2)1.と2.において確認された改善すべき点
経営学部の授業・カリキュラムは、卒業時の学生の能力を入学時に比べて高いものへと引き上げることをねらって設計されている。卒業時の学びのレベルをより高いものにするためには、各科目の内容のさらなる充実が必須であり、とくに初年次配当である導入科目をベースにその後の学習が積み上げられていくことを考えると、引き続き導入科目の充実に注力していくことが重要となる。
加えて教育効果が高かった演習科目においても、学生が自身の希望する分野の学びをより深めることができるような環境を整備していくことが求められる。
加えて教育効果が高かった演習科目においても、学生が自身の希望する分野の学びをより深めることができるような環境を整備していくことが求められる。
4. 次年度に向けての取り組み
経営学部では、学部授業・カリキュラム改善を目的として、公開授業及びワークショップ、質保証に向けた研修会、学部FD研修会、大学院FD研修会、パワーランチを開催している。これらが教育の質を担保するうえで有用であることは、前述のとおりである。これに加えて、学生の学びの様子を確認する学習成果実感調査の結果を併せて検討することによって、より効果的な学部授業・カリキュラムの改善を進めることが可能となる。
今年度も効果が認められた公開授業及びワークショップ、質保証に向けた研修会、学部FD研修会、大学院FD研修会、パワーランチを軸に、学部としてFD活動に取り組んでいくことを考えている。FDの各イベントで取り上げる内容は、FD委員および教職員からの提案にもとづき、社会的に要請されるトピックはもちろん、学部の現状に沿ったものを選定していく予定である。先の改善すべき点で指摘した導入科目や演習科目の充実は優先度の高いトピックである。また従来、教育活動におけるIT活用の推進が主要なトピックの1つとして取り上げられてきたが、なかでも学部・大学院教育FDでも指摘された生成系AI(ChatGPTなど)の教育でどのように活用していくのかが重要なテーマの1つとなると考えられる。これ以外にも情報技術の進展に伴って様々な問題が出てくることが考えられるが、随時、学部FD活動において対応を検討し、よりよい授業、カリキュラムとなるように努めていきたい。
今年度も効果が認められた公開授業及びワークショップ、質保証に向けた研修会、学部FD研修会、大学院FD研修会、パワーランチを軸に、学部としてFD活動に取り組んでいくことを考えている。FDの各イベントで取り上げる内容は、FD委員および教職員からの提案にもとづき、社会的に要請されるトピックはもちろん、学部の現状に沿ったものを選定していく予定である。先の改善すべき点で指摘した導入科目や演習科目の充実は優先度の高いトピックである。また従来、教育活動におけるIT活用の推進が主要なトピックの1つとして取り上げられてきたが、なかでも学部・大学院教育FDでも指摘された生成系AI(ChatGPTなど)の教育でどのように活用していくのかが重要なテーマの1つとなると考えられる。これ以外にも情報技術の進展に伴って様々な問題が出てくることが考えられるが、随時、学部FD活動において対応を検討し、よりよい授業、カリキュラムとなるように努めていきたい。