令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

新学科への移行2年目であり、昨年度から、初年次配当科目の導入科目とそれ以外の科目に分けて、調査を実施している。今年度春・秋学期の講義科目はオンライン授業ということもあり、いくつかの項目で昨年度との違いがみられる。

導入科目以外の結果(プログラム平均)については、昨年度と比較して、「シラバスを読んだ(確認した)」(設問2-1)のスコアが大幅に上がっている(春:4.07→4.75; 秋:3.91→4.77)。 これは、シラバスの中身を変更した科目が多く、履修者が内容をきちんと確認している様子を表している。「準備学習の平均時間」(設問3)も、同様に大幅なスコアの上昇が見られる(春:2.13→2.64; 秋:2.20→2.81)。また、「履修に満足している」(設問7or9)、「身に付く力が付いたと思う」(設問8or10)については、いずれも高まる傾向にある中(春:3.96→4.01、3.75→3.76; 秋4.02→4.10、3.77→3.87)、特に秋学期のスコアが顕著にアップしている。引き続き、各科目で履修満足度を高め、どんな力が身に付くのかを学生に意識させることを継続させていきたい。

導入科目の結果(プログラム平均)についても、「シラバスを読んだ(確認した)」(設問2-1)のスコアが大幅に上がっている(春:3.77→4.60; 秋:3.96→4.78)。1年生はシラバスを読んで履修登録することに慣れていないが、今年度はシラバス改訂が多かったためだと思われる。同様に、「準備学習の平均時間」(設問3)も、大幅なスコア上昇があった(春:2.02→3.02; 秋:2.13→2.83)。秋学期に少しスコアを落としていることは気になるが、初年次から「準備学習の必要性」(設問5or7)を感じているようである(春:3.52→3.76; 秋:3.69→3.89)。「履修に満足している」(設問7or9)、「身に付く力が付いたと思う」(設問9or11)のスコアについては、春学期はそれほど変わっていないが、秋学期にそれぞれ0.1ポイントの上昇が見られる(春:3.98→3.97、3.71→3.70; 秋:3.96→4.06、3.70→3.80)。これについては、導入科目以外を含めて、各科目を担当する教員が秋学期に相当工夫した様子が伺える。「リーディング・ドメインの選択に役立ったと思う」(設問8・10)については、春・秋ともにアップしている(春:3.82→3.95; 秋:3.89→3.97)。導入科目やベーシック・セミナーなどで、リーディング・ドメインの考え方や選択方法についての周知に取り組んだ結果と考えられる。
 

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

「公開授業」、「ワークショップ」ともに、今年度は実施していないが、学部独自の教育FDを4回実施した。

第1回 教育FD(令和2年6月24日 13:00~14:30、Zoom使用)
 オンライン授業の運営に関するアンケート結果の共有と教員間情報交換

第2回 教育FD(令和2年7月29日 13:30~14:30、Zoom使用)
 秋学期の授業に関する意見交換と学生アンケートの実施について

第3回 教育FD(令和2年9月9日 15:30~17:00、Zoom使用)
 春学期の授業を終えての教員間情報交換

第4回 教育FD(令和3年3月2日 14:30~16:00、Zoom使用)
 オンライン授業等に関するアンケート結果の共有と教員間情報交換

特徴的なことは、下記の通りである。
  • オンライン授業の満足度については、年次別に3>4>2>1となっている。他学部に比べて、「とても満足している」「やや満足している」と回答し学生の割合が低く、特に1年次生の満足度が低い。授業の理解度にも同様の傾向が見られる。
  • 授業の実施形態について、「資料・課題の掲示のみ」だけでなく、「ライブ授業のみ」の満足度や理解度が低めに出ている。他学部に比べて、オンライン授業での理解度が高いと回答する学生が多い。講義科目全般に、オンライン形式に適しているとの回答が他学部より多い。
  • 意見交換では、オンラインで実施する課題やテストの公平性を保つアイディア、オンライン授業の良さ(簿記等の会計の科目に向いている、熱心な学生にとっての予習・復習のチャンス)、学生との双方向のコミュニケーションの工夫などが共有・議論された。

3.総括

(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

オンライン授業への対応という新たな課題に対して、教員も学生も不慣れな中で、なんとか乗り切ったと言える結果となった。特に、春学期に発生した問題を、個々の教員が解決したり、学部全体でやり方や工夫を共有して(授業運営に関するアンケートの実施、教育FDでの報告・議論)、秋学期に活かしたことが、履修満足度や身に付く力のスコア上昇に表れている。数値からはわかりにくいが、学部事務室の協力や対応および教員との連携が、こうした結果に大きく寄与していることを、ここに記しておく。個別の授業・カリキュラムということではなく、こうした学部全体での運営・改善への取り組みができることが、本学部の長所と言える。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

「改善」ということではないが、「維持・継続」という意味で、履修前にシラバスを読むことであったり、事前・事後学習をしっかり行うことなど、これまで徹底させる必要があると考えてきたことが、こうした状況の中で、意図しないかたちで学生に浸透しつつある。オンラインを取り入れた授業が2年目に入るため、“慣れ”によって元の状態に戻らないようにすることが課題となる。特に、1年次生の準備学習時間が春から秋にかけて減っている点を見ても、大学生活に慣れる中で、要領をつかんでいくのはよいとしても、せっかく身に付いた学習の習慣をキープできるように、こちら側から働きかけていく必要がある。初年次は経営学に興味をもち、基本的な知識を身に付けてもらいつつ、リーディング・ドメインの選択につなげていく大事な時期なので、秋学期もしっかり学んでもらえるようにしていく必要がある。

4. 次年度に向けての取り組み

本学部では例年、「公開授業」および「ワークショップ」を春学期と秋学期に実施してきたが、今年度はそれらを行わず、学部独自の教育FDを充実させた。次年度についても、大人数の講義科目ではオンライン授業になり、全教員が授業運営で試行錯誤することが必要になることから、引き続き、教育FDを通じて、教員間での情報共有や議論を行い、各自の授業改善につなげていく予定である。
また、昨年度に引き続き、大学教育における研究能力の重要性に鑑み、また、学部教員間相互の研究活動を認識するために、教授会前のお昼休みに研究FD(パワーランチ)を実施した。春学期は各教員が授業運営への対応に専念するためお休みしていたが、秋学期から再開した。来年度も継続予定であり、研究活動のさらなる活性化を図る。

第22回 2020年9月30日
報告者:具 承桓
テーマ:EV市場をめぐるエコシステムの再編とイノベーション・ダイナミクス

第23回 2020年10月28日
報告者:上野 継義
テーマ:「安全第一」の経営史

第24回   2021年1月20日
報告者:伊藤  正隆
テーマ:公認会計士への道のりとその業務 ~自身の経験談をまじえて~

第25回   2021年2月24日
報告者:佐々木  利廣
テーマ:異種組織マネジメントの実践に向けて

第26回   2021年3月18日
報告者:具 滋承
テーマ:最近の研究成果と海外学術誌に関する断想

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