令和元年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

新学科への移行にともない、従来のイントロダクトリー科目とそれ以外から、導入科目とそれ以外に変更して、調査を実施した。
導入科目以外の結果(プログラム平均)については、昨年度と比較して、「シラバスを読んだ」(設問2-1)、「シラバスを参考にした」(設問2-2)のスコアが下がっている(春:4.12→4.07; 秋:4.07→3.91、春4.10→4.02; 秋:4.15→4.02)。学部教員間で共有し、履修登録にあたってシラバスを読むことを2年次以上の学生に徹底させる必要がある。
導入科目の結果(プログラム平均)を昨年度のイントロダクトリー科目のそれと比較すると、いくつか変化が見られる。まず、「シラバスを読んだ」(設問2-1)のスコアについて、春学期は上がったが(3.60→3.77)、秋学期は下がっている(4.20→3.96)。1年生はシラバスを読んで履修登録することに慣れていないが、ガイダンスなどを通じてより一層促していきたい。「身に付く力が付いたと思う」(設問9)のスコアについては、春学期は上がり(3.52→3.71)、秋学期は維持できている(3.69→3.70)。しかし、「リーディング・ドメインの選択に役立ったと思う」(設問8)については、昨年度の「学科選択に役立ったと思う」よりもダウンしている(春:3.94→3.82; 秋:3.97→3.89)。学科選択と比べると、リーディング・ドメインの選択はわかりにくいのかもしれない。少人数の必修科目である基盤科目の授業を通じて、リーディング・ドメインの考え方や選択方法について、周知を図っていく必要がある。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1) 参加人数

  1. 「公開授業」:
    春学期は、新任教員が専門性を踏まえて選定した下記の2科目について、公開授業を行った。
    「財務諸表分析」担当者:石光 裕 教授(参観者:松下 真也 准教授)
    5月9日(木)3限
    「流通史」担当者:吉田 裕之 教授(参観者:松本 和明 教授)
    5月14日(火)1限
    秋学期は、初年次生向けの下記の導入科目について、公開授業を行った。
    「経営管理論」担当:篠原 健一 教授
    10月28日(月)2限、参加教員4名
  2. 「ワークショップ」:
    上記の公開授業後、下記の日時・場所・参加人数でワークショップを開催した。
    6月5日(水)10:45~12:15 参加教員7名
    11月6日(水)10:45~12:15 参加教員4名

(2) ワークショップでの意見交換内容

春学期のワークショップでは、次のような意見交換があった。
「財務諸表分析」については、松下先生から、「大きく捉えて、細かく見る分析のコツ」「①前回の振り返り、②その日の授業内容、③授業内容を踏まえたワークの三部構成における飽きない時間配分」「ユナイテッドアローズやZOZOといった、学生に身近な企業を取り上げていること」といった気づきの共有があった。
「流通史」については、松本先生から、「パワポやビデオを活用する授業が増えている中で、板書を中心とした授業である。このように、講義には多様性があってよいのではないか」「遅刻や私語が少なく、規律が確保されている」「学生には難しい(歴史のことなので、学生にはなじみが薄い)内容だが、レベルを下げずに授業しており、学生もそれについてきている」といったコメントがあった。
上記の気づきやコメントをもとに、参加者でさらに意見交換が行われた。

秋学期のワークショップでは、次のような意見交換があった。
担当の篠原先生から、「登録者数が400人を超える授業なので、ほっておくと私語が増える。最初の頃に厳しく叱るようにしている」「授業はパワポを使わず、オーソドックスなスタイル。授業の冒頭で黒板にキーワードを書き、それをノートに書きとらせて、説明しながら理解が定着するようにしている」「(出席率が高いのは)授業内容を踏まえたレポートを課しているから。考えて書かせる機会を意識的につくっている」「ゲストスピーカーを読んで、最近のトレンディーな話を盛り込むようにしている」といった工夫の話があった。
上記のコメントをもとに、参加者でさらに意見交換が行われた。

3.総括

(1)1.と2.において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

これまで通り、初年次に経営学への興味を引き起こしつつ、基本諸概念を学ばせる導入科目を設置して、2年次以降の体系的な授業履修を提示している点。また、各授業では受講生が当該科目に対して興味を持つよう、身近な話題から導入し、かつ具体的な例を出すなど、教員サイドから積極的なアプローチが見られることが長所であると思われる。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

学習成果実感調査の結果から、シラバスを読んで履修させることを徹底させる必要があること、初年次生には、リーディング・ドメインの選択を念頭に入れて、導入科目を履修させる必要があることがわかった。また、公開授業&ワークショップでは、各教員が授業改善のために興味深い工夫をしているにもかかわらず、参加者数が少ないため、学部内で十分に共有・活用されていない。今後は、秋学期のワークショップを教授会の前に行っている教育FD内で実施することを検討したい。

4. 次年度に向けての取り組み

本学部では毎年、「年間計画書」に掲げた上記の「公開授業」、「ワークショップ」のほか、次のような教育FDを実施し、授業改善につなげている。

第3回教育FD研究会

日時 2019年7月17日(水)12:15~13:15
報告者 福冨 言・涌田 龍治
テーマ 大教室における講義等の工夫

第4回教育FD研究会

日時 2019年12月18日(水)12:15~13:15
報告者 福冨 言・涌田 龍治
テーマ 成績優秀者へのインタビュー結果

また、昨年度に引き続き、大学教育における研究能力の重要性に鑑み、また、学部教員間相互の研究活動を認識するために、教授会前のお昼休みに研究FD(パワーランチ)を実施した。

第16回 2019年4月17日
報告者:石光 裕
テーマ:テキスト分析と会計研究

第17回 2019年5月15日
報告者:赤岡 広周
テーマ:カーナビゲーションと自動運転の特許出願状況について

第18回 2019年6月19日
報告者:久保 亮一・沈 政郁
テーマ:日本企業の分社化行動の実証分析

第19回 2019年10月23日
報告者:李 為
テーマ:茶を喫して器を思う

第20回 2019年11月20日
報告者:松本 和明
テーマ:外山脩造の足跡と活動-渋沢栄一との関わりに着目して-

第21回 2019年12月4日
報告者:宮永 健太郎
テーマ:環境ガバナンス論の世界

このような現状を踏まえて、本学部では、次年度においても、①春学期と秋学期の公開授業&ワークショップを継続し、授業改善について、学部教員が広く共有し、議論できるようにする、②学部オリジナルの教育FDや研究FDを継続し、学部での教育および研究活動のさらなる活性化を図る。

PAGE TOP