京都産業大学 キャンパスマガジン サギタリウス VOL.52
Voice of Sagittarius
3次元空間を自由に動くインターフェイス「スパイダー」。 画像
3次元空間を自由に動くインターフェイス「スパイダー」。
実用化されたばかりのころのコンピュータは、タイプライターのようなキーボードしか付いていませんでした。そこから、最初に発展したのは視覚技術です。モニターが付くことで「見る」ことが可能になり、次の段階では音を作るシンセサイザーやスピーカーが組み込まれ、音を「聴く」こともできるようになりました。しかし触覚については長い間おざなりにされており、その「ものに触れる」感覚をコンピュータの中で再現しようとするのが私の研究テーマです。具体的には、スパイダーという技術を用いて研究を実施。これは8本の糸で吊られた球状のインターフェイスで、マウスに相当するボールを上下左右に自在に動かすことができるほか、ひねることも可能です。平面上を動くだけのマウスとは違い、3次元空間で実世界に近い操作感覚を実現できるのが、スパイダーの大きな特徴となっています。
※スパイダー(SPIDAR: Space Interface Device for Artificial Reality)。
東京工業大学 精密工学研究所 佐藤 誠教授のヒューマンインターフェイス研究室が開発したインターフェイス。
コンピュータの中にしかないものを実際に触わってみる!? 画像
コンピュータの中にしかないものを実際に触わってみる!?
コンピュータのモニターにはスパイダーのボールに相当するものが表示されていて、手元のボールを動かせば、モニターの中のボールも動きます。モニターの中のボールが壁にぶつかれば、その当たった感触を感じ取ることができ、手元のボールもそれ以上先には動きません。また壁沿いにボールを擦りつければ、手元で摩擦を感じます。つまり、コンピュータの中にしかない物体に触れることが可能になるわけです。この技術は体感型家庭用ゲーム機などにも応用されていますが、スパイダーに用いられている可触化の技術を利用すれば、より現実と変わらない感覚を再現することができるようになるでしょう。そのほかスパイダーを仮想の「手」のように使う研究も進めており、画面上のブロックを持ち上げると「重み」を感じるといった技術も開発。これに着目すると、「情報の重み」を「現実の重み」に対応させることもできるので、クレジットカード情報を送信するときにクリックが重くなるなどの仕組みを作ることもできます。
子どもらしい発想を忘れず、研究に取り組んでほしい。
一つのソフトウエアを開発するために、プログラマーは膨大な時間と労力をかけてプログラムを構築していきます。しかし、その「技術」を見たり触れたりすることはできません。例えば精緻を尽くした伝統工芸品などであれば、一目見て職人技のすごさを体感できますが、「プログラム」は目で見えません。この見えず、聞こえず、触れることができないプログラムを可視化・可聴化・可触化したいと思ったことが、今の研究を始めるきっかけでした。将来的にはさまざまなプログラムを見たり、触れたりできるようにし、「プログラムの博物館」を作るというのが私の大きな夢です。学生の皆さんには、「どうしてこうなるの?」という不思議に感じる気持ちや、「こんなものがあったらいいな」という子どもらしい発想を常に持ち続けてほしいですね。その上で、本当に自分がやりたいことを実現するためにサイエンスがどう役立っていくのかを考えながら、研究に取り組んでもらえればと思います。
先生のもうひとつの顔
先生のもうひとつの顔
子どものころからマンガ、アニメが大好き。今もアニメはよく見ていますが、現在放映中のものでは『NARUTO-ナルト-疾風伝』がお気に入りです。子どもたちに夢を与えるのがアニメの世界ですが、ソフトウエアもコンピュータ上に「おとぎの国をつくって、それを現実の国と思わせる」もの。その意味ではアニメ的な発想が、研究にも大いに生かされています。
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