【文化学部】自分ばかりを責めてない?—発達障害の視点から—

2023.03.10

文化学部2年次生の必修科目「文化学部の学びとキャリアB」は、実社会を生き抜くうえで基本となるものの見方・考え方を育むことを目的とした授業で、「セルフ・カルティベーション」、「ファシリテーション」、「現代社会と倫理観」などをテーマとした授業内容を主体的に学ぶことを通して、働くことの意味や目的、働くことと幸福・自己実現の関係について考えます。今回はオンライン形式で、本学保健管理センターの精神科医 新宮 一成 先生をお招きして、「発達障害」について講義が行われました。

(学生ライター 文化学部1年次 大林 真夕)

藤高 和輝 助教と本学 保健管理センターの精神科医 新宮 一成 先生

1.藤高 和輝 助教より障害学の知見を紹介

授業の冒頭、藤高助教から「『できる/できない』とは?—発達障害を考えながら—」というテーマについて、体験談などを交えて分かりやすく説明がありました。重要なこととして、障害の問題を生み出しているのは個人ではなく社会であり、社会の当たり前が障害を生み出しているのではないかと話されました。
現代社会の当たり前の概念を変えたもの(実例:バリアフルレストラン)
自分自身、社会の当たり前が正しいと思い込んでいたのだと気づかされたと同時に、もっと自分の思考や価値観の視野を広げていくべきだと感じました。また、説明の中で、「大学生活は弱点を克服する場所ではなく、自分の特性を理解する場だ」という言葉が非常に印象的でした。

2.新宮先生による発達障害の講義

次に新宮先生から、「成人の発達障害(ADHD・ASD)への見立てと対処」をテーマに講義されました。

発達障害の特徴と課題

主な発達障害である「ADHD(注意欠陥/多動症)」と「ASD(自閉スペクトラム症)」について説明されました
  症状
ADHD 落とし物、忘れ物、聞き漏らし、着席を維持できない、順番を待てない
ASD コミュニケ—ションの困難、同一習慣への過度のこだわり、感覚刺激への過敏・鈍感さ
このような症状により生じる仕事やコミュニケーション上での課題としては、以下のようなものが見られるそうです。
【1】スライドより
【2】スライドより

これらの課題から、誰かにとっての当たり前が一方の人にとっては難しいことがあると理解すること、そして他者を尊重することが大事だと感じました。表には「苦手」「できない」などという言葉が多くみられますが、これは現場で援助する人が気をつけてあげたいところという意味でこうなっています。これを読んで当てはまることがあっても、決して自分を否定的に見たり周りを怖れたりせず、対話を通して、次のように自分の特性を知る参考にできればと思います。

自分の特性を知ろう!

発達障害の症状は、周りの人から協調性がない、態度が悪い、妨害だと誤解されてしまうことがあります。さらに、自分でADHDやASDであるという認識がないと、自己嫌悪に陥る原因にもなってしまうようです。そうならないようにするには、自分の特性を知っておく必要があります。
ADHDの可能性は、いくつかの自己チェックシートがインターネットでも公開されています。製薬会社などが出していて、受診しようと思ったときはその結果を持参するのも良いそうです。たとえば次のような自己チェックの仕方がネットで紹介されています。
ADHD自己チェック表
当てはまっていたという方も、この6項目の他に困り事や悩みがあるという方も、ぜひ診断に行ってほしいとのことです。

ADHDとASDはどんな診断をするのか

病気の診断と聞くと少し不安があるかもしれませんが、ADHDやASDの診断は、同意があれば、心理検査を行うそうです。そして、どのような事が深刻な「困り感」を生んでいるのかということを問答で浮かび上がらせること、そしてそれが心理検査の結果にどのように対応しているのかを吟味することが大切だと説明されました。このように自分と向き合って素直な気持ちを先生に伝え、一緒に問題を解決していけば良いのだと分かれば、診断へ行くハードルも少し下がるのではないでしょうか。

3.学生の皆さんへメッセージ

  • 藤高助教 ADHDやASDについて少しでも心配があれば、ぜひこの機会に診断してほしいと思っています。なぜなら、社会人になって一から自分で病院を探すのは大変だからです。また、攻撃を受けることが多い社会であるため、自分では抱えきれずに自己否定になってしまうことがあると思います。それを対処するためにも、本学の精神科医である新宮先生や学生相談室、私でもいいので相談できる人がいるこの環境をきちんと活用してほしいです。
  • 新宮先生 学校での問題は現在、障害者支援という大きな理念を生かして、特殊学校(級)という呼び名から特別支援学校(級)へと変わり、先生方の意識も徐々に高くなってきています。それに対し、就職してから初めて気づかれる場合の問題はまだ大きく、発達障害の方にとって環境に適応することがかなり難しくなり、心無い言葉を受けることもあるかと思います。そのような時に、自己否定に入らず対処できる練習を早いうちにしておくことが非常に大切になってきます。これらは発達障害の方に限らず、定型発達の方にとっても必要な事です。
先生方のメッセージは、学生に寄り添う優しい思いが強く伝わってきました。今回の授業は、学生にとって自分を責めなくて良いのだと安心させてくれる心強いものになったのではないでしょうか。
今回は発達障害についての授業を取材させていただき、「当たり前」の基準は人それぞれであり、現在の社会の在り方を、そして私たち自身の考え方を変えていくことが必要だと感じました。また、発達障害の特性を理解することで、自分にも他者にも思いやりを持つことができるのではないかと思いました。これから社会に出ていく私たちにとって、自分の特性を理解することは非常に重要だと感じたので、今回の授業での学びを実践し、社会に適応できる力をつけていきたいと思います!
PAGE TOP