【文化学部】“Do you know anything about TIMOR-LESTE ?” 「おもてなし文化論」で東ティモール大使 イリディオ氏が登壇

2022.11.28

学生に挨拶するイリディオ氏

文化学部専門教育科目「おもてなし文化論(担当:平竹耕三教授)」では、京都における「おもてなし」の具体例、施策、精神について、さまざまなゲスト講師から学ぶことができます。このたび、駐日東ティモール1)大使2)のイリディオ・シメネス・ダ・コスタ氏をゲスト講師としてお招きし、東ティモールの歴史やおもてなし文化について伺いました。

(学生ライター 外国語学部4年次 福崎 真子)

ゲストスピーカー紹介

「講師として招いてくれたことに感謝する」と謝辞を述べるイリディオ氏
イリディオ シメネス ダ コスタ氏 プロフィール
1968年 生まれ
1997~1998年 スアイ水供給・衛生プロジェクトのコミュニティマネジメントコーディネーター
2005~2007年 選挙支援とローカルガバナンスプログラムシニアプログラムオフィサー
2011~2012年 男女平等促進担当長官顧問
2012~2017年 職業訓練・雇用促進担当長官
2019~2020年 経済問題調整閣僚顧問
2020年~ 特命全権駐日大使

(参考:世界環境サミット公式HP worldenvironmentsummit.com | イリディオ・シメネス・ダ・コスタ 氏

講義内容ピックアップ

東ティモールについて、さまざまな視点から幅広く話題を取り上げて下さったイリディオ氏。その講義内容から、2つ厳選してご紹介します。

東ティモールの自治権回復を支えた「メディアの力」

東ティモールは、過去にポルトガルの統治下にあった状態から、2002年に自治権を回復させました。イリディオ氏はその歴史について、地図等を用いながら解説されました。

16世紀にポルトガルが、19世紀にオランダがそれぞれ、良質なビャクダンの木3)を求めてティモール島にやってきます。島を二つに分け、西側(現:インドネシア)をオランダが、東側(現:東ティモール)をポルトガルが治めるようになりました。

第二次世界大戦後、西側がインドネシアとして独立宣言したのに続き、東側も独立宣言をしました。しかし、直後にインドネシアの軍事侵攻と併合宣言(東ティモールをインドネシアの領土とするため)が行われてしまいます。当時西側勢力であった日本やアメリカなどの国は、反共産主義のインドネシアとの関係を重視し、併合を事実上黙認しました。それから東ティモールが2002年に再度自治権を回復させるまで、東ティモールの人口の10%が紛争や虐殺によって命を落としたといわれています。
(参考:東ティモールの観光情報サイトLOROSAE.NET|東ティモールの歴史を知ろう!植民地時代から平和までの道のりを徹底解説

イリディオ氏は「ときには、皆さんの年齢くらいの若者が、残虐な方法で命を奪われることもありました」と、当時の様子を受講生に語られました。

当時、東ティモールの人々は、国外に現状を知らせる手段が何もありませんでした。しかしその後、日本のジャーナリストが携帯できる無線やビデオカメラを持って東ティモールを訪れ情報拡散に貢献し、それが自治権回復を後押しする大きな力となったそうです。

イリディオ氏は「ウクライナでの戦争や、アメリカの銃撃事件など、世界各地の大きな出来事も今や10分もすれば世界中に知られることになりますね」と、誰もが簡単に情報発信し合う現在におけるSNSやメディアの持つ強力な力について述べられました。一方、写真や動画には、撮影し、拡散する人の意図が必ず裏に隠れており、その目的は何かを慎重に見極めることの必要性を強調されました。

東ティモールの「おもてなし」

東ティモールの人々は、基本的に大家族で暮らしており、人懐こくフレンドリーな性格であると言われているそう。イリディオ氏は「国民一人と知り合っただけで、そこからあっという間に知り合いの数が増えていきます。例え観光客であっても、人を歓迎したり受け入れたりする気持ちが強いのです。観光客にとってはそれが心地良いのか『また行きたい』と言ってくださる方がたくさんいます」と補足されました。

また、イリディオ氏が日本のおもてなし文化の一つでもある「着物」に言及し、東ティモールの伝統衣装「タイス」と比較しながら解説されました。

タイスについて説明が書かれたスライド

タイスは着物と同じように、長い布を身体に巻き付けるようにして着用します。織り方や施される柄が、生産地域によって異なっている点が特徴です。イリディオ氏は「ときには友好の印として、マフラーのように観光客の首にかけられることもあります」と、東ティモールの人々の「おもてなし」について解説されました。
受講生は、教室のスクリーンに映ったタイスの写真を、興味深く見つめていました。

その他、現地でとれる食べ物、有名な観光資源である海とサンゴ礁、伝統的な祭り等の多彩な文化について、動画や画像をたっぷり用いながらお話くださいました。
また、終盤には質疑応答の時間も設けられ、イリディオ氏が受講生からの質問に回答される場面もありました。
最後は、受講生全員の大拍手に包まれ、イリディオ氏の講義は終了しました。

お辞儀するイリディオ氏を拍手で称える受講生たちの様子

学生の感想

聴講する学生の様子
イリディオ氏のお話だけでなく、東ティモールの美しい観光資源の写真と動画に目を輝かせた受講生。講義後、アンケートに答えてもらいました。

本日の授業の感想や、一番心に残ったことを教えてください。

  • 植民地時代の失われた400年と言われていたが、東ティモールという国が独立を達成するまでの凄惨な歴史を初めて知り、それが最も印象に残った。
  • わたしが英語で「なぜあなたは大使になったのですか?」とイリディオ氏に聞いたところ「他の人をインスパイアして、東ティモールに来てもらうようにするため。自分の道を自分で決めるのが大切」と答えてくださったのが印象的だった。大使にお会いできる機会はめったにないので、貴重な機会だった。
  • 東ティモールが自然豊かで美しい町であることや人懐っこい国民性ということが分かり、実際に訪れてみたいと思った。

「おもてなし文化論」を履修していて良かったと思うことがあれば、教えてください。

  • ゲスト講師に来ていただき、「おもてなし」に携わる人々の話が聞けること。
  • この授業で華道の家元(桑原慶専流の副家元、桑原櫻子先生)からお話を伺いましたが、華道の授業をご担当の池坊の師範代の資格を持つ先生がお話しされる内容との違いを比べながら授業を受けることができて勉強になった。
  • 実際に観光に携わっている方々の生の声を聞くことができ、さまざまな観点による「おもてなし」の違いや似ている点が学べること。

受講生にとって、今回の講義は普段の講義と違い、(京都ではなく)他国の視点から「おもてなし」について考えられる良い機会になったのではないでしょうか。本やインターネットで情報収集するのとは違い、イリディオ氏の話は、一つひとつが真っすぐ聞き手の心の中へ入り込み、興味を持つ心を掴んで離しませんでした。“現地の方から直に話を聞くこと”の意義はそこにあるような気がします。

用語解説

1)首都をディリに置く、東南アジア諸国の一つ。正式名称は東ティモール民主共和国。インドネシア列島のうち、ティモール島の東側、オーストラリアの北西部に位置する。大きさは、日本で言う岩手県くらい(14874キロ平米)。

引用元 白地図専門店 https://www.freemap.jp/indexAMP.html
引用元 世界地図 https://www.abysse.co.jp/maps/

2)「特命全権大使」の略称。国の代表として他国に派遣され、国家関係における交渉を行う機関「外交使節団」のうち、他国に常に留まりながら活動する役職の最高責任者のこと。
(参考:TRENJOYCE|大使と公使、領事と総領事の違いは? 外交官・参事官との違いも解説!

3)インドを原産とする常緑樹。精油や薬、線香の製造などに用いられる。

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