【文化学部】美術品梱包を実践する — 学芸員への道
2022.07.22
京都産業大学では、博物館などで専門的職員として働く学芸員の資格を取得するための「学芸員課程」を開設し、全ての学部生に門戸を開いています。
その必修科目の一つである「博物館実習Ⅰ」では、知識と技術の習得を目的として講義や実習が行われています。今回授業を担当するのは、文化学部の山本 雅和教授。山本教授自身も学芸員として活躍されており、ご自身の経験を踏まえながら授業が行われています。今回は実践的な学びとして、美術品の搬送を取り扱う専門業者をゲストにお招きし、美術品の梱包実習が行われました。
(学生ライター 外国語学部4年次 瀬戸 うた)

はじめに、ゲストの方から美術品梱包における心構えや注意点について説明されました。
身だしなみにおいては、指輪や時計などのアクセサリー類は一切着用禁止で、胸ポケットには何も入れてはいけないことが説明されました。爪の長さなど細かい部分にも気を付けており、これらはすべて、作品を傷つけないようにするために守られていることです。また、美術品には常に愛情を持って接しているとの思いを語られました。
その他にも、カッターを使う際には、作品に刃先を向けずに使用したり、箱を運ぶ際の軍手を常備したりするなど、丁寧に作業することやその準備を徹底していることが紹介されました。

次に、実際に梱包作業に使われる薄葉紙(うすようし)という特別な紙について説明を受けながら、実践的に学びました。
薄葉紙は中性紙のため、作品に触れても安心な成分で作られています。縦に引っ張ると破れますが、横に引っ張るとなかなか破れない丈夫な素材でできており、細く裂いてしごくとひもに変化します。
この薄葉紙を使って綿布団を作っていきます。綿布団とは美術品を守るためのクッションのようなもので、綿を薄葉紙で包んで作ります。


次に、完成した綿布団を使って梱包作業を実践しました。学生は、自身の腕を美術品に見立て、腕を伸ばした状態と曲げた状態の時に、どのように綿布団やひもを使えばよいのかを話し合いながら梱包していきます。



続いて、実際に美術品の梱包に挑戦しました。美術品の梱包作業では、作品の表裏を見ながら作業を行うため、2人以上で作業を行います。
今回の実習でも、本番と同じように複数名で取り組みました。用意された美術品は急須や壺など大きさや形がばらばらで、思うように梱包できず苦戦するグループも見られました。しかし、いくつも梱包をしていくうちに、ゲストの方から「完璧!」との声も聞かれ、学生は安堵している様子でした。また、梱包し終わった美術品を箱に詰める作業にも挑戦し、四隅に隙間ができないような綿布団の詰め方や、ひもの結び方を学びました。
実習の最後には、ゲストの方による仏像梱包の実演が行われ、丁寧で手際のよいプロの姿に、学生は見入っていました。実習を通して学生は、「仏像梱包の際、担架形の木枠を使うのが印象的で、まるで人間を扱っているようで驚いた」「1つの美術品を梱包するために多くの資材が使われていることを知り、どれだけ大切にされているかが分かった」などと話し、収穫の多い実習になったようでした。
取材を通して特に印象的だったのは、学生が積極的に質問したり互いに意見を出し合ったり、意欲的に取り組んでいたことです。実際に美術品の梱包作業を行う方から話を聞き、直接指導を受けられる機会は貴重で、このように、講義だけでなく実践的に学べることはこの科目の魅力だと思いました。