【文化学部】UNWTO(国連世界観光機関)駐日事務所からのメッセージ -持続可能な観光の在り方とは?
2022.06.22
文化学部専門教育科目「京都観光論」(担当 中野宏幸教授)は、世界や日本の観光政策・取組を含め、京都の観光文化を多様な視点から捉え、これからの観光の在り方を考えることを目的として開講されています。5月18日にはUNWTO(国連世界観光機関)駐日事務所の企画・渉外部長 和泉 宏明氏と国際部プロジェクトコーディネーター 吉田 順子氏をゲストにお招きし、「持続可能な観光の在り方」について海外での経験や事例も交えた貴重なお話を伺いました。
(学生ライター文化学部3年次 夏目真衣)

UNWTOは観光分野における世界最大規模の組織であり、持続可能な観光を促進する国連の専門機関です。講師のお二方がおられる駐日事務所は、アジア太平洋地域29か国2地域の持続可能な観光地域経営の普及を支援しています。

授業の前半では、和泉講師の海外勤務(中国・台湾・シンガポール・インド)での実体験やコロナ禍による観光客の行動変容、持続可能な観光と経済について解説されました。
和泉氏のJTB勤務の海外経験談では、日本の常識が通じない中国、それに対して同じ中華圏でも日本人に優しい台湾、また20年で街並みが見違えるほど発展したシンガポールなど、それぞれの国に特徴がありとても興味深かったです。
和泉氏のJTB勤務の海外経験談では、日本の常識が通じない中国、それに対して同じ中華圏でも日本人に優しい台湾、また20年で街並みが見違えるほど発展したシンガポールなど、それぞれの国に特徴がありとても興味深かったです。
コロナ禍における観光客の傾向としては、より「近い場所への国内旅行が増えていること」、「3密を避けた自然や地方への観光が人気となっていること」、「公衆衛生への対策が重視されていること」、「持続可能性や真正性がより重視されるようになったこと」の4つを挙げられました。
次にコロナ禍での観光政策についての説明がありました。その中でも、特にハワイのハナウマ湾での事例が印象的でした。ハワイでは新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって観光客が激減しましたが、一方でハナウマ湾の水の透明度が上がり、観光客が多すぎていたことに気付くきっかけとなったそうです。現在、観光客は回復しつつありますが、ハナウマ湾への入場者数を減らして予約制にし、入場前に環境保全に関するビデオの視聴が義務付けられました。観光客が減ったことによる収入減を賄うために入場料を値上げしましたが、この政策を支持する声も観光客から上がっているそうです。
このハワイの事例は京都の観光を考える上でも参考になると思いました。コロナ禍以前は京都も『オーバーツーリズム』といわれ、街に観光客が多すぎる状況でしたが、渡航制限の影響もあり、観光客が大幅に減少しました。それによる負の側面ばかりに目が行きがちですが、京都の観光に関してもハワイのようにプラスの面もあったのではないでしょうか。

授業の後半では吉田講師より、UNWTOが地域の持続可能な発展への貢献との面から重視している『ガストロノミーツーリズム』の説明がありました。ガストロノミーは「胃」、ツーリズムは「観光」。つまりガストロノミーツーリズムとは、観光客の体験・活動が食や食材に関連している観光のことです。
ガストロノミーツーリズムとはあまり聞きなれない言葉ですが、京都府でもその取り組みが行われています。そのひとつが北部にある与謝野町でのホップ栽培と産業振興、観光を組み合わせた地域づくりです。旅行先を考える時、食を重要視する方は多いのではないでしょうか。私も無意識にガストロミーツーリズムを実践していたのだと気が付きました。
持続可能な観光とは、UNWTOの定義によれば、「社会・文化的に好ましい」「経済的に成長できる」「環境的に適正である」の3要素を満たす観光を指します。コロナ禍を経験して、京都だけでなく世界中で観光の在り方が変わりつつある現在、これからの観光を考えるうえで、「持続可能性」は、より重みのあるキーワードになりそうです。
京都観光論で京都だけでなく世界中の観光事情や取組の考え方を知ったり、観光関係分野のプロフェッショナルの話を聞いたりすることは、学生にとってとても有意義であると取材を通して感じました。
ガストロノミーツーリズムとはあまり聞きなれない言葉ですが、京都府でもその取り組みが行われています。そのひとつが北部にある与謝野町でのホップ栽培と産業振興、観光を組み合わせた地域づくりです。旅行先を考える時、食を重要視する方は多いのではないでしょうか。私も無意識にガストロミーツーリズムを実践していたのだと気が付きました。
持続可能な観光とは、UNWTOの定義によれば、「社会・文化的に好ましい」「経済的に成長できる」「環境的に適正である」の3要素を満たす観光を指します。コロナ禍を経験して、京都だけでなく世界中で観光の在り方が変わりつつある現在、これからの観光を考えるうえで、「持続可能性」は、より重みのあるキーワードになりそうです。
京都観光論で京都だけでなく世界中の観光事情や取組の考え方を知ったり、観光関係分野のプロフェッショナルの話を聞いたりすることは、学生にとってとても有意義であると取材を通して感じました。