茶の湯に学ぶ「おもてなし」とは?古儀茶道 藪内流宗家十四代家元が講義

2019.11.29

2019年10月17日、文化学部の授業「おもてなし文化論」において、古儀茶道 藪内流宗家十四代家元の藪内紹智氏の講義が行われました。この授業は、旅館や料理屋、生け花など京都で活躍する方を講師として招き、日本人の「おもてなし」の心を学ぶ授業です。
この日講演された藪内家は、茶道の表千家や裏千家、および武者小路千家らとともに京都茶家四家のひとつに数えられています。藪内家は歴代「紹智」という名前を承継しており、十四代藪内紹智三は2015年6月に襲名されました。茶の特徴も流派によって違い、藪内家は泡を多くたてることが良いとされており、動きや袱紗(ふくさ)が他の流派より大きいと言われています。なお、400年も続く藪内家の家元が、本学に来られて授業で講義をされるのは初めてのことです。
授業の冒頭では、茶道に欠かせない、茶についての説明や日本における茶の歴史を始めにお話しされました。茶は中国やインドが原産地とされており、今や世界中で愛されています。愛されたがゆえに、世界ではボストン茶会事件やアヘン戦争が起こり、争いの火種にもなりました。しかし、日本では生活文化として発展を遂げ、茶の湯として現代に伝わります。

では、茶の湯を現代の人が学ぶ目的とはなにがあるのでしょうか?「それは、おもてなしの心です」(家元)。茶事には、主催する亭主と呼ばれる人と招かれる客がおり、それぞれに役割があります。一番のメイン客を「正客」、二番目を「次客」、最後の客を務めることを「お詰」といい、亭主が客の喜ぶ顔が見たいという動機の元、準備を行います。そして、客は亭主が考えた想いをくみ取ってあげなければいけません。

例として、空想で茶会を開くこととしましょう。テーマは「秋の実り・彩り」。このテーマに沿って道具を選んでいきます。掛け軸には「秋菊有佳色」と書かれているものを選びました。この言葉の意味は「秋の菊が色美しく咲いている」。重陽の節句とされる9月9日は菊の花が咲くと言われています。このような秋の訪れを示す節句と、天皇即位の礼が近づく授業日、国の花としても有名である菊をあしらった掛け軸がぴったりということです。この掛け軸に伴って、生ける花も菊にします。さらにお香を入れる香合には、福良雀(ふくらすずめ)というものを選びます。福良雀は田んぼの米を食べすぎて丸くふっくらしている雀のことです。それを黄色の袱紗の上に乗せることで、雀が黄金色の収穫を迎える田んぼにいる、という実りの秋を表現しているのです。このようにテーマに沿って茶の湯の道具を亭主が決め、茶事を完成させます。客は考えられたテーマをひとつずつ道具を見てくみ取り、楽しむのです。
 
茶の湯には「客は亭主となり、亭主は客となる」という言葉があります。亭主は客が喜ぶことを自分の喜びにすることで、客からもてなされます。逆に客は、もてなされたことを理解することで亭主をもてなします。「どちらか一方が受け手になるのではなく、互いに思いやり厚意に感謝するのが茶の湯の”おもてなしの心”である」と学生に伝え、さらに「茶の湯を学ぶことで日本文化を学ぶことにもつながる」と語りました。例えば、茶の湯はいろんな道具を組み合わせています。掛け軸を読み取ろうとすれば、崩し字を読む能力や和歌を知っておかなければなりません。掛け軸だけでなく、茶碗や花、菓子についてなど茶の湯に出てくるものを勉強することで自然と日本文化を知ることにつながります。

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今回は茶の湯についての授業をレポートしました。テーマに沿って細かく道具が決められていたり、亭主と客の関係が奥深いなと感じました。「秋の実り・彩り」についてテーマを設定し、道具を決めていきましたがこれは四季がある日本ならではの感性であり、秋の情景を頭の中に思い浮かべることができる日本人ならではだなと感じました。また、「おもてなしの心」については、東京オリンピック2020の招致の際に流行語にもなりましたよね。日本が世界の方を「おもてなし」するというのは来年に迫っています。今一度、日本らしい「おもてなし」とはなにか、茶の湯のように客に「おもてなし」をくみ取ってもらうにはどうすればよいのか考える必要があるのかもしれません。

(学生ライター 経営学部3年次 千石里絵)

藪ノ内流宗家家元 14代藪内紹智さん
文化学部の多くの学生が聞き入っていました
薮内流の袱紗は通常より1.5倍ほど大きいそう
講義の最後には学生からの質問も挙がりました
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