【理学部】物理科学科 大森 隆 教授が地球温暖化対策の方法を提案する論文を発表しました
2024.07.01
京都産業大学 理学部 大森 隆 教授が、気候工学による地球温暖化対策の方法を提案する論文を発表しました。成層圏のオゾンを増やすことにより、地表温度を低下できることを明らかにし、これによる地球温暖化対策方法の提案を行いました。
概要
鉛直一次元放射対流平衡温度計算を行い、成層圏(25km以上の上空)のオゾンの増量で地表温度を低下できることを明らかにしました。成層圏に直接オゾンを注入する増量方法について考察し、オゾン増量後の地表温度推移、オゾン濃度推移を検討しました。
論文情報
論文タイトル | A Proposal of Geoengineering Method as Global Warming Countermeasure : Stratospheric O3 Increase to Reduce Earth’s Surface Temperature (気候工学的方法による地球温暖化対策の提案:成層圏O3増量による地表温度低減) |
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掲載誌 | Journal of Earth and Environmental Sciences Research |
掲載日 | 2024年6月26日 (オンライン) |
著者 | 大森 隆 |
DOI | doi.org/10.47363/JEESR/2024(6)221 |
謝辞
本研究は、開始当初から、あらゆる面(基礎理論、コンピュータ計算、データ考察 等)で京都産業大学 理学部 宇宙物理・気象学科の 佐川 英夫 教授に御指導いただきました。深く感謝申し上げます。
背景
地球温暖化が極めて深刻な状況にあります。異常気象がすでに自然、人間に大きな悪影響・損失を及ぼしています。IPCCによれば、地球温暖化を1.5℃に抑えるには、2050年までに、CO2の正味排出量をゼロにする必要があります。再生可能エネルギーを促進することで達成したいのですが、これだけでは足りない状況になりつつあります。地球温暖化対策の方法として、再生可能エネルギーの促進以外では、気候工学(ジオエンジニアリング)の方法が検討されています。気候工学のなかでは、成層圏に硫酸エアロゾルを散布する方法が代表的なものとして研究されています。硫酸エアロゾル散布は確かに地球を冷却できますが、大気汚染、オゾン破壊の副作用があります。本論文では、硫酸エアロゾル散布のデメリットを免れる可能性がある方法を提案しました。
研究成果
鉛直一次元の放射対流平衡温度が計算され、成層圏のオゾンを増やすことで地表温度を低下できることが明らかになりました (図1、表1)。25km以上上空のオゾンを増やすことにより地表温度低下につながることがわかりました。
なお、今後は以下の4点について調査・検討し、研究を進めていきます。
- 成層圏の温度上昇に伴う気候への影響
- 注入したオゾンがどのように拡散・移動するかの予測
- 対流圏のオゾン増量が地表温度を上昇させることについての検討
- 本研究の計算の高度化

図1:高度—温度曲線 (観察平均、標準条件、全体2倍O3、成層圏2倍O3、全体10倍O3、成層圏10倍O3);
標準条件 | 2x O3 | 2x str.O3 | 10x O3 | 10x str.O3 | |
変化温度 (℃) | 15.3 ℃ | +0.87 | -0.56 | -0.84 | -4.24 |
表1:O3増量による地表温度変化
成層圏のオゾンを増量する方法として、直接オゾンを注入する方法を検討、考察されました。
オゾンを増量してから地表温度低下が見られるのは数ヶ月のオーダーでした。増量したオゾンは、光(化学)反応や拡散・移動によって、元の濃度にもどることになります。
オゾンを増量してから地表温度低下が見られるのは数ヶ月のオーダーでした。増量したオゾンは、光(化学)反応や拡散・移動によって、元の濃度にもどることになります。
用語説明
気候工学
人為的、能動的に気候の改変を行い、地表温度を低下させる方法。本研究のような太陽放射を制御する方法などがある。
放射対流平衡温度
太陽からの放射エネルギー、地球からの放射エネルギーを、6.5℃/kmの対流を考慮に入れて、平衡(温度)に達するまで計算をすすめた温度。
参考
- 京都産業大学 教員紹介ページ:大森 隆 教授