【国際関係学部】「安全保障論Ⅱ」にて陸上自衛隊から国際任務を経験されたゲストを招いた授業が行われました。

2024.02.02

12月7日(木)「安全保障論Ⅱ」(担当:河原地 英武 教授)において、陸上自衛隊より林田 賢明 氏(陸上自衛隊 第3施設大隊長 2等陸佐)をゲストスピーカーとしてお招きした授業が行われました。
林田氏は紛争が絶えない中東地域での国際任務を2回務められました。大変貴重な国際任務での経験談をお話しいただきました。

(学生ライター 法学部2年次 町原 捷月)

ゴラン高原派遣輸送隊とMFO、2度の国際任務

皆さんはゴラン高原の場所を知っていますか?ゴラン高原は、イスラエル、レバノン、ヨルダン及びシリアの国境が接する高原です。林田氏は平成22年2月にゴラン高原派遣輸送隊の分遣班長として任務に就かれました。

分遣班の主な任務はパトロール道路の維持・管理、宿営地等の除雪、宿営地内の簡易的な工事、燃料給油所の運営、車両の緊急回収などです。紛争の絶えない地域での任務は、知識のない私が聞いてもその過酷さが想像できます。経験談のなかでもシリアで事故をおこした国連車両の緊急回収任務にて現地住民に取り囲まれた話や、イスラエルの国境で若者から銃口を向けられた経験談は印象に残りました。怖かったが訓練を受けていたので何とかなると思われたそうです。いざという時は言語が異なる相手にも気持ちを込めれば日本語でも通じるとおっしゃっていました。

続いてMFO(Multinational Force and Observers)での勤務について語られました。MFOとは、「エジプト・イスラエル両国のシナイ半島における信頼構築、透明性保持及び永続的平和の支援のため、和平条約及び協定に対する潜在的な違反行為を監視・検証・報告するとともに、エジプト・イスラエル両軍の対話を促進する、多国籍部隊・監視団」のことです。

スライドよりゴラン高原周辺地図
スライドよりMFO組織図

MFOはシナイ半島の東側、イスラエルの国境に近い場所にカメラ監視哨、基地があります。大きく北キャンプと南キャンプに基地が分かれており、林田氏は南キャンプにて連絡調整部の任務に就かれました。

2回目の国際任務は前回の経験を得て、林田氏が陸上自衛隊で培った、「自分が動くだけでなく人を動かす指揮の力や組織内での仕事の仕方、射撃や格闘だけでなく救命方法や自身の状況判断能力」に加え、自己研鑽を続けておられる「英語、アラビア語やヘブライ語などの語学学習、派遣先の国や地域の文化や風習だけでなく外交的な歴史の理解、派遣前や派遣中の人間関係の維持」などの努力が生きて任務を完遂できたそうです。

講義を担当された陸上自衛隊の林田氏
質疑応答では多くの手が挙がりました。その中で「今現在、日本は国際支援において後方支援に限られているが、今後、自衛隊員は積極的に参加していくべきなのか」という問いに対して、個人としては、「どんどん出て行くべきだ。井の中の蛙ではないが日本だけで活動しても能力が伸びないし知識も広がらない。物の見方も変わらないだろうと思う。」だが、「そのためには隊員個々の力をつけなければならない」と2回国際任務に就かれた林田氏の経験から答えられました。
「MFOの任務で女性隊員はシナイ半島に派遣されているのか」という問いに対しては、日本の陸上自衛隊からは派遣人数自体が少ないため男性のみ参加しているそうですが、他国軍の女性の割合は4割くらいで、先進国と呼ばれる国が特に女性隊員の割合が高かったそうです。
陸上自衛隊、それも国際派遣に赴いた林田氏の話は非常に貴重なものでした。2、3カ国語を操るだけでも凄いことですが、さらに情勢が不安定な地で過酷な任務をこなした林田氏は私には想像できないくらいの努力をされてこられたのだろうと思いました。
イスラエルとハマスの争いは残念ながら今現在も継続しています。
日本においては、周辺国であるロシアや中国などの動きが軍事的に危うく、緊張状態にあるといえるそうです。
今回の取材で多国籍軍による人道支援が紛争地帯に伸びていること、その実態を改めて知りました。
この記事で、国際平和活動に興味を持ってもらえると嬉しいです。
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