【国際関係学部】国際経営論ⅡにてJETROの板谷幸歩氏が分断リスクに向き合う国際ビジネスについて講演
2024.01.16
12月21日(木)5時限目、「国際経営論Ⅱ」(担当:植原行洋教授)に、日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部国際経済課の板谷幸歩氏と京都事務所の庄秀輝所長をお招きし、分断しつつある国際情勢のリスクにどのように向き合うかについて、講演をしていただきました。
(学生ライター 国際関係学部4年次 中野 莉子)
まず、1つ目の世界と日本の経済・貿易について、世界経済・貿易の面において国際機関などのデータから2022年の経済成長率は世界的に鈍化傾向であるとのことでした。ウクライナ侵攻による物価高やインフレ抑制のための利上げが背景にあり、今後の予想では緩やかな成長率になるとの予測でした。物価についても、日本では毎日物価高が深刻になっているとの報道があり、今が物価は一番高いと感じていましたが、世界的に見ると2022年度がピークだったとのことで意外でした。そして、世界の貿易は、2022年の貿易額が過去最高額であったとのことでした。しかしながら、貿易量はあまり伸びていないとの事実から、貿易額と貿易量は常に同じ変化量ではないため、その変化の背景を見ることは重要であることを改めて学ぶことができました。そして、近年の国際情勢の不安定さから、主要国・地域間の貿易関係は政治・経済的な価値観を共有する同志国を優先する方向へ徐々にシフトが見られるとのことで、今後の国際経済の分断の背景としてとても重要なポイントを学ぶことができました。
2つ目のサプライチェーンの強靭化について、貿易関係は同志国を優先することによって今まで推し進められてきた自由で公平な貿易よりも、サプライチェーン強化や地政学リスクへの対応が重要視されるようになったとのことでした。一つの国に依存することのリスクに対して、多国間に分散させることでリスクも減らしていこうというサプライチェーンのあり方について、板谷氏は、企業は今までより広範的な課題に対して備えることが求められるようになったとの見解でした。
そして3つ目の持続可能なビシネスについて、多様な価値観や社会課題への消費者の関心が高まっていることを前提に、サステナビリティへの貢献の重要性が高まっていることや企業にとってその貢献が製品の付加価値となりメリットになっているとのことでした。サステナブルへの対応は今後いずれビジネスの「必須要件」になるとの意見も述べられ、社会の意識の変化をビジネスの観点から感じることができました。また、ジェトロではサステナブル消費について、海外の消費者たちの意識調査を座談会などを通じてレポート化しており、海外の新たな価値観を身近に感じられ、ビジネス戦略に活かすことができるため斬新でした。
そして最後には質疑応答の時間が設けられました。学生から日本経済の将来や紅海のバブ・エル・マンデブ海峡における武装組織による攻撃による貿易のリスクや経済への影響、世界の脱中国の動きに対する捉え方などさまざまな質問があり、板谷氏と庄氏の親身で分かりやすい回答により、疑問が解消されました。