【文化学部】観光と宗教は混ぜるな危険!?~東福寺住職に学ぶ~

2024.07.02

文化学部専門教育科目「観光と宗教」(担当:近藤 剛 教授)では、宗教学や宗教社会学の学びを手がかりに、観光行動と宗教現象の関係性について考えています。

より実践的な学びに近づけるため、宗教者をゲストスピーカーとして招聘しており、6月27日には臨済宗大本山東福寺総務主事・東福寺塔頭天得院住職の明石 碧洲氏をお招きし、「観光と宗教-東福寺のこと-」と題して講義を行っていただきました。

授業風景 観光と宗教の関係性について説明を受けた

冒頭から、明石氏は「観光と宗教は混ざり合わない、混ぜるな危険」と注意喚起されました。つまり、寺院は宗教施設であって、レジャー施設や美術館ではないということです。しかし、拝観者へ正しい認識を促しつつ、布教の機会を創り出す意味を込めて、「なんとか混ぜていこうではないか」と言われ、発想を転換されたことが説明されました。

摂政関白・九條道家の造営による日本最古最大の禅宗大伽藍、聖一国師を開山とする東福寺には、京都屈指の紅葉の名所として知られる通天橋、昭和の作庭家である重森三玲による方丈庭園、本堂などの伽藍の他、春の涅槃会に公開される明兆の大涅槃図など、仏像、絵画、経典といった数々の宝物があります。

これらは文化財であり、観光資源となるものですが、僧侶や信者にとっては「法の源」であり「仏そのもの」であって、歴史文化的価値、観光資源的価値という概念を超越した「尊くかけがえのない聖域、存在」であることを理解しておかなければなりません。禅の教えを伝えるという意識のもとで、世界中から訪れる拝観者への適切なアプローチを考えていく必要があります。

多くの文化財を護持し、継承していくことは寺院の責務でもあり、「文化財所有者」、「観光資源管理者」という立場を認識しつつ、関連する「行政」、「観光産業」、「地域住民」との連携強化を図りながら、東福寺の歴史と文化を後世に継承したいと述べられて、講義は締め括られました。

明石氏の巧みな問題提起を受けて、学びはさらに深化、発展していきます。講義後も質問のために列ができました。このように、文化学部では理論的な話と実践的な話を融合させながら、現実的な課題を見出し、その解決に向かって挑戦していくよう促しています。

授業風景 熱心に講義を聞く学生たち
講師を担当した東福寺住職 明石氏と近藤教授
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