【国際関係学部】学部の学びを超えて活躍する4年次 板坂 梨央さんを取材しました!

2022.12.01

学部の授業以外にも活躍の場を求めて積極的に取り組む学生を紹介する本企画。

今回は、「観光資源と人々から探る多文化共生の現状調査」をテーマにマレーシアのペナン島を訪問し研究を続けている、国際関係学部4年次の板坂 梨央さんにお話を聞きました。

国際関係学部4年次生の板坂 梨央さん

「国際関係」に興味を持ったきっかけを教えてください

13歳の時に人生で初めてオーストラリアに語学留学に行ったことが大元のきっかけです。当時は全くと言っていいほど、英語を話せませんでしたが、そんな自分でも受け入れてもらえた経験が漠然と"世界"や"国際"への興味に繋がりました。その約2年後、ロシアに渡航しInternational Children's Forum 2016 (ICF2016)に参加しました。日本、ロシア、中国、韓国、モンゴルの5カ国から高校生が集まり、「私たちから見た地球の安全」というテーマでディスカッションをし、それぞれの国の文化や伝統を語り合いました。またその中で、国家間でタブーとされているような問題などについても少し話すことができました。この経験から、その国が持つ背景や現状によって異なる意見や立場を取ることに改めて面白さを感じ、"国際関係"への興味が確立していきました。

今、注力している取り組みは何ですか?

マレーシアのペナン島における多文化共生に関する研究です。一般社団法人一枝会の「行ってみ!チャレンジ」に応募して研究を採択していただき、「観光資源と人々から探る多文化共生の現状調査」というテーマで約3週間の現地調査を行いました。現地の方々に聞き取り調査を行なったり、ジョージタウン世界遺産事務所や長年ペナン島でアートに関わる研究をされている研究者の方にインタビューをさせていただきました。

ジョージタウン世界遺産事務所(George Town World Heritage Incorporated)でインタビュー調査した時の写真
ペナン島で長年アートの研究に携わられているIsmail Gareth Richards先生と撮った写真

その取り組みに参加(応募)したきっかけ・動機を教えてください。

きっかけは二度のマレーシア留学です。(海外FR、国際キャリア開発リサーチ)
海外FRでは1Dayトリップとしてペナン島を訪れました。当時はペナン島がどういう場所なのかほとんど知識がなく、美しい街並みを見て、さまざまな文化が混在する景色になんとなく惹かれていました。

その約1年後、コロナ禍で留学を諦めてしまっていたときに、国際キャリア開発リサーチ(国際関係学部開講科目)がオンラインで開講されていることを知りました。その時は、一度訪れたことがあるペナン島でオンラインフィールドワークを行うという新たな形態の留学にワクワクし参加を決めました。

国際キャリア開発リサーチでは、マレーシアの特にペナン島でさまざまな文化、宗教を持つ人々が共生しているということや、貿易港として栄えた歴史から多文化共生が進んでいるということについて初めて深く学びました。一度訪れたことがあるペナン島の知らなかった一面を知り、大きな衝撃を受けました。

また、私は国際関係学部で学びを深めていく中で、「地球市民全員が共生できる社会構築を行いたい」という夢ができていました。これらのことから、この夢の実現のためのヒントがペナン島の多文化共生社会にあるのではないかと思い、そのヒントや共生が実現できている理由を、実際に現地に足を運び、現地の方への聞き取り調査や公的機関でのインタビュー調査などを通して探りたいと感じました。また、国際キャリア開発リサーチを通して、ペナン島に関する知識をある程度得ることができたので、その知識を持った状態で再度渡航し現地で生活することで、新たなことが見えたり、より多くの気づきや学びが得られるのではないかと感じ、今回「行ってみ!チャレンジ」に挑戦することを決めました。

参加して、ご自身にとってプラス(成長)につながったこと、気づきは?

たくさんありますが、特に2つのことにおいて、自分が成長したと感じます。

1. 何事も恐れない気持ち、積極性

現地調査中は、公的な機関にインタビューを行いましたが、何よりもペナンで実際に生活している現地の方々のリアルな声を聞きたくて、多くの現地の方に話しかけていました。自分から積極的に話しかけることで、仲良くなったムスリムの方が、モスクを案内してくれたりと素敵な出会いがたくさんありました。自分から恐れないで話しかけることで、現地の方々、コミュニティーに受け入れていただくことができ、貴重な経験ができたと感じています。

ムスリムのお友達と一緒に行ったカピタンクリンモスク

2. 行動力

今回が初めての単身での海外渡航で、不安や心配事が多く、実は応募しようか少し迷っていました。しかし、今回このペナン島現地調査に挑戦して、日本で座学で学んでいるだけでは知ることができなかったペナンの多文化共生の現状を見ることができ、頭で考えるだけではなく実際に行動に移すことの大切さを痛感しました。

気づきもたくさんありますが、ペナン島の共生のヒントや理由に関する気づきは4つあります。

①ペナン島の歴史と継承方法
ペナン島は地理的要因から自由貿易の貿易港として栄え、さまざまな人々が訪れた歴史や、イギリスの植民地支配下で、労働力として中国やインドといった国々からの移民や外貨が増加した歴史を持ちます。それらの歴史において、ペナン島の人々は移民を排除するのではなく共に生きる「共生」の道を選んできました。その当時の歴史を風化させず後世に伝えていくために、それらの歴史や文化を知ることができる博物館などを作り、多言語で解説ツアーを行なったりと、積極的に多文化共生を継承する姿勢が見えました。

プラナカン(東西貿易によりペナン島に移住した中華系移民の男性とマレー人の女性が結婚して生まれたミックスの子孫のこと)文化を知ることができる博物館

②ある程度の住み分けと共有
ショッピングモールや公共交通機関を利用してみて、複数の民族の方が共に利用し共生していると感じました。しかし、現地で生活する中で、ある程度民族によって住んでいる地域が分かれていることに気づきました。現地に渡航する前は、民族によって居住地域を分けることは差別につながるのではないかと考えていましたが、絶妙なバランスで、ある程度住み分けと共有を重ねていることがペナン島の多文化共生のヒントなのではないかと考えるようになりました。

インド系の方が多く住むLittle Indiaと呼ばれる地区

③観光資源(ストリートアート、宗教施設)
ペナン島は、街中のストリートアートが過去の文化や歴史を表現しており、日常的にそれらを目にすることができます。また、それぞれの民族の暮らしを表しているアートも多く、ストリートアートは自己表現、他者理解、歴史や文化の風化防止と理解促進の役割を担っていると感じました。それらが可視化されているという点でもストリートアートが持つ役割や意味、秘める力は大きいと感じます。

ストリートアート(ワイヤーアート)
ストリートアート(ウォールアート)
ストリートアート(ウォールアート)
また、たくさんの宗教施設も訪れましたが、その民族にとって歴史的にも価値があり、とても大切な施設の作りに外国の要素が取り入れられている建物がありました。その施設が建設された当時のペナン島の多様性あふれる社会を建築様式にも取り入れていたことを知り、こういったところにも、多文化共生には欠かせない他者理解や相互に尊敬しあっている様子が表れていると感じました。
屋根やフェンスに外国の要素が取り入れられた邸公司(Khoo Kongsi)

④多様性や変化に寛容的な街という性質
ペナン島の特にジョージタウンはストリートアートという、街並みや景観を簡単に変えてしまう性質を持つものの存在を認め、街中にストリートアートを描くことを推奨しています。また、ジョージタウンは街全体が世界遺産に認定されている場所です。世界遺産に認定されている場所や建物は、その建物や地域の景観を変えずに維持していく立場をとることが多いと思いますが、ペナン島は逆の立場をとっており、劣化もするし、簡単に描き換えも可能で、景観の維持や保存には適していないストリートアートを認めています。このことから、物理的に建物を保存し、維持し続けることよりも、このような景観の変化やそれらを認める多様性という性質を維持することの方がペナン島にとっては重要で、それがペナン島の多文化共生のヒントだと感じました。

ペナン島(ジョージタウン)の街並み

国際問題を考えるうえで、普段から心がけていることはなんですか?

少しでも気になったことは追加で調べたり、先生方に質問して、疑問はすぐに解消させるように心がけています。

国際問題はさまざまな要因が直接的にも間接的にも複雑に絡み合って起こっていることが多いので、より理解を深めるためにはより多くの事柄に関する知識を持っていることが大事だと思います。特に、近くに豊富な知識を持っている先生方がいらっしゃる環境下にいる在学中は貴重なので、貪欲に質問しています。

今の活動をとおして、今後の抱負、また将来に繋がること・繋げたいことは?

春からは新聞記者として働くことが決まっており、国際関連の報道に携わりたいと考えています。私は国際関係学部で学ぶ中で、初めてペナン島という多文化共生が進んでいる場所があることを知り、今回このような研究を行いました。

地球市民全員が共生できる社会を実現するには、まずは現状を知り、その上でいろいろな視点からのアプローチが必要不可欠だと思います。そのために、まずは私が報道やメディアの力で多くの人に共生の現状などを伝え、世界を変えたいと思っています。

国際関係を学ぶ学生(興味を持っている高校生)の皆さんへ一言

京都産業大学の国際関係学部は本当に夢のような環境です。幅広い分野の授業が開講されていて、とても親身な先生方、意欲的で常に良い刺激をくれる仲間たちがいます。そして、こんな環境で学べるのは人生でたったの4年間だけです。この時間を大切に、1つでも多くのことを吸収できるように、そして、楽しむことを忘れずに多くのことにチャレンジしてください!特に、どんな挑戦も応援してくれる先生方、最高の友達に囲まれて行う挑戦は格別です!
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