理学部の内田和之准教授が、ねじれた二層グラフェンについての理論研究の論文を出版

2021.06.21

成果

理学部物理科学科の内田和之准教授が、ねじれた二層グラフェンについての理論研究の成果を学術誌Journal of the Physical Society of Japanの論文として出版しました。

掲載論文

題 目:Energetics for Twisted Bilayer of Circular Graphene Flake
著 者:Kazuyuki Uchida
掲載誌:Journal of the Physical Society of Japan, 90, 044602(2021).
              https://journals.jps.jp/doi/10.7566/JPSJ.90.044602
   

背景

物と物が接触する面を、界面と言います。界面の性質を利用することで、例えば光電池など、我々の生活に役立つ装置が数多く作られています。界面の性質は、「どのような物質同士を、どのような方位で接合させるか」また「界面近傍のナノスケールでの原子構造が、どのようであるか」に強く依存します。これまでに、共有結合性の物質同士が接合する界面についてはかなり調べられていますが、共有結合型でない界面については、まだよく知られていないことが多く残っています。

研究概要

この研究は、グラフェンという物質同士がファンデルワールス力で接合する界面のエネルギーを、理論計算で調べたものです。2枚のグラフェン層を、層と垂直な軸の周りで互いに逆方向へとねじって重ねた系を考え(図1参照)、ねじれ角とエネルギーの相関について解析を行いました。その結果、「ねじれ積層系に特有のモアレ模様(図2参照)」と「円盤には端が存在する事」が原因となり、エネルギーが振動構造を示すことを発見しました。このような振動は、実際的な系には端が存在することを考慮しなかった先行研究において、気づかれていなかった新しい現象です。

図1.2枚のグラフェン層におけるねじれ角の定義
図2.ねじれた2枚のグラフェン層によるモアレ模様の例

用語解説

ファンデルワールス力・・・化学結合の「手」を持たない原子同士が、量子力学的な揺らぎの効果で弱く引き付け合う力。
モアレ模様・・・高校物理で登場した波の「うなり」の2次元版。周期構造を持つ2枚の面を、向きをずらして重ねたときに現れる特徴的な模様。
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