理学研究科修了生の宮内隆治さんと岸本真教授が活動銀河核についての論文を出版

2020.12.05

成果

理学研究科物理学専攻修了生の宮内隆治さんと理学部宇宙物理・気象学科の岸本真教授が、新しい論文をThe Astrophysical Journalから出版しました。

掲載論文

題目:Velocity-inverted Three-dimensional Distribution of the Gas Clouds in the Type 2 AGN NGC 1068
著者:宮内隆治, 岸本真
掲載誌:The Astrophysical Journal, 904, 149 (2020年11月30日出版)

また、以下からプレプリント版のダウンロードが可能です。

背景

我々の住む太陽系は天の川銀河と呼ばれる銀河系の中にあることはよく知られています。天の川銀河の外側にはさらに別の銀河系が膨大な数あり、それぞれの銀河の中心に太陽の100万倍以上もの重さを持つ超巨大ブラックホールが存在していることがわかっています。こうした超巨大ブラックホールの中で、非常に明るく輝いているものが知られており、これらを活動銀河核と呼んでいます。活動銀河核は歴史的にはその観測的特徴からいくつかの分類がなされていましたが、物理的な統一模型の構築が理論的に進んでいました。そこに、近年の観測技術の大きな進歩が相まって、理解が急速に深まっている真っ最中です。

研究概要

この論文で宮内さんと岸本教授は、ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 1068銀河中心にある超巨大ブラックホールの観測データを詳細に解析しました。特に、波長方向に分解したデータ(スペクトルデータ)からブラックホール近傍におけるガス流の幾何学的分布を3次元的に再構成することに成功しました。さらに、赤外干渉計によるブラックホール超近傍の高空間分解能観測の結果も用いて、数百光年のスケールで示唆されていたガス流の構造が数光年の超近傍スケールまで続いている兆候を発見しました。この結果は、ガス流の加速がブラックホール遠方で起こっているわけではなく、ブラックホール近傍で引き起こされていることを示唆しています。岸本教授らは今後、近赤外線の干渉技術を用いて、ブラックホールのさらに近傍の物理に迫るプロジェクトを進めており、今後の論文で報告予定です。

本論文は理学研究科の大学院教育から生まれた論文です。理学研究科では、新しい科学的成果を生み出す研究教育を進めています。

参考

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