理学部の佐川英夫准教授が火星ダストストームについての論文を出版

2020.03.03

成果

理学部宇宙物理・気象学科の佐川英夫准教授が、ベルギー王立宇宙科学研究所、大阪府立大学、東北大学の研究者らとの共同研究の成果を日本惑星科学会の機関紙「遊・星・人」に出版しました。

掲載論文

題目:全球ダストストーム中の火星地表面放射の観測
著者:佐川 英夫,青木 翔平,前澤 裕之,中川 広務,笠羽 康正
掲載誌:遊・星・人 第28巻 (2019) 4 号,277 (2020年2月にオンライン公開)
https://www.wakusei.jp/book/pp/2019/2019-4/2019-4-277.pdf

背景

地球に最も近い外惑星である火星には地球の1%以下の薄い大気があることが知られています。火星大気の最も顕著な特徴は、大気中に浮遊するダスト(砂塵)です。おおよそ10年に1回程度、このダストが急激に大気中に巻き上げられ火星全体を覆ってしまう「ダストストーム」という現象が起こります。ダストストームが起こると太陽光の吸収や反射の量が著しく変わり、大気や地表面の温度が大きく変化することがわかっています。ただし、ダストストーム中は光がダストによって阻まれ可視光で地表面を見通すことができなくなってしまい、可視光観測で地表面の情報を引き出すことは非常に困難です。

研究概要

この研究で佐川准教授らのグループは、チリにある世界最高感度の電波干渉計アルマ望遠鏡を用いて、波長がミリメートルの電波観測を行い、ダストストーム中の火星の詳細な観測を行いました。こうした波長はダストに散乱や吸収されることなく地表面や大気の状態を測ることが可能なことを活用した研究成果です。その結果、ダストストーム最盛期では収束期に比べ温度が約18%も低下していることを明らかにしました。今回の観測データは、分厚いダストストームに覆われた火星大気の変化を明らかにする貴重な手がかりとなるものです。
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