令和5年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」
1.「学習成果実感調査」についての分析結果
1)回答率について
理学部における春学期・学習成果実感調査の実施科目は112科目(対象科目数124科目の90.3%)であった。延べ履修者数3,688名に対して回答者数は1,810名(回答率49.1%)である。ほとんどの授業が対面形式で行われているため、授業時間を利用した調査協力依頼がされていることもあって、前年度(回答率37.4%)および一昨年度(回答率32.2%)に比べて、回答率は大幅に改善傾向にある。秋学期には、実施科目数は130科目(対象科目数153科目の85.0%)である。春学期に比べて少ないのは履修者の少ない特別研究などの科目数が多いためである。延べ履修者数3,107名に対して回答者数は1,214名(回答率39.1%)と、春学期よりも低下している。一方、過去の秋学期での実施率が、昨年度29.7%、一昨年度が22.3%であったことからすると、伸びている状況にある(春学期との違いは、新入生の反応の違いである可能性が高い)。改善の兆しがあるとはいえ、やはり回答率は低く、これは授業に熱心な層が回答している可能性が高いことでもある。そのため、結果データにバイアスがかかっていることに注意が必要である。さらなる回答率の増加が課題である。
2)全体的な傾向
設問2(事前事後学習の時間を問う設問)では合計1.5時間以上と答えた学生が全体の30~40%であり、やや少ない印象である。令和4年度の文科省からの大学設置基準等に関する改訂においても、1単位の授業時間数を45時間(授業時間外を含む)とした基本方針が変わらない以上、1回の授業あたり3時間(すなわち事前・事後学習で合計1.5時間)が必要となる。こうした状況について、事前・事後学習の必要性を学生に周知するとともに、適度な課題や簡易小テストを課すなど、工夫の拡大について必要性を教員全体で共有する必要があろう。
また、設問3,4,5について、肯定的な回答が70%以上となっており、総合的な満足度(設問5)については80%である。この傾向は、回答率が低かった過去の年度でも同様に見られる。先に述べたようにデータに偏りが存在していることに注意すれば、おそらく、学生全体の傾向を知るというよりも、授業の参加度が高い層の学生がどのような傾向にあるかを読み取るために用いるのが適切な使用法であると思える。また、自由記述が少なかったことは、懸念点である。学習成果実感調査がすべての授業で行われるとなると、それに要する時間は学生にとってみればかなりのものである。現在、質問を簡易化したことで比較的、こうした負担は減りつつあるが、自由記述も含めて、学生にとってのメリットは何か?が見えにくい点を改善すべきであろう。
3)講義科目、演習科目、実験科目、特別研究における結果の相違について
講義、演習、実験といった授業の実施方法の違いによる顕著な結果は見られない。全体として、設問5の満足度は肯定的な意見が80%程度となっている。特別研究については、設問5において肯定的な回答は90%にも及ぶ。やはり少人数で集中的に行なうという特徴のため、事前・事後学習の時間についても、1回の授業あたり1時間半以上と回答した学生が90%になった。すべての授業でこうした学びの満足度、事前・事後学習の時間が確保できるように、今後も教員全体での意識共有が必要であろう。
4)終わりに:
冒頭の繰り返しになるが、出席率の高い学生でのデータであるから、学習に課題のある学生の声が拾えていない可能性も捨てきれない。引き続き学生に声をかけることで、回答率の上昇を目指すとともに、主体的な学びを促して参りたい。
なお、授業の中で必ず回答をしなくてはならないような仕組みを全学として作ってゆくことも必要かもしれない(授業の最終回までに回答しておかないと、試験が受けられないような仕組みを作る、など)。ある程度の強制力をもたせないと、回答率の向上が難しいように感じる。
2. 学部独自のFD活動についての報告
(1)公開授業とワークショップ
- 公開授業:
- 科目:「地球惑星科学概論」
- 担当教員:佐川 英夫 教授
- 実施日時/場所:天地館3階T303教室
- 参加人数:15名(教職員13名、事務職員2名)
- ワークショップ:
- 参加人数:約30名(教職員13名、事務職員2名、学生は出入りあり)
- ワークショップでの意見交換内容:
2023(令和5)年10月20日2時限目、理学部のFD活動の一環として、理学部 宇宙物理・気象学科所属の佐川 英夫 教授による「地球惑星科学概論」の公開授業を実施した。授業は、Teamsでも配信するハイブリッド授業で行い、会場・オンラインで合計15名(うち対面11名)の教職員が参加した。 授業では、最初に前回の復習(地震波の伝播とデータの最小自乗フィッティングについて)が軽く行なわれた。その後は、地球大気の鉛直構造について、とくに大気圧の静水圧平衡をテーマとして、気圧と地表高度の関係をあらわす微分方程式にいたる過程を丁寧に解説していた。とくに、授業途中に各自のスマートホンを活用して気圧を学生自身に測定させるなど、参加型の授業をおこなっており、学生たちの興味を高める講義内容であった。 授業終了後、昼休みの時間を利用して、授業についてのワークショップを行った。理学部の公開授業では、学生もワークショップに参加できる。参加学生からは「授業が丁寧でわかりやすい」、「面白い内容で眠くなったりしない」といった意見が出された。また、着任後年数の浅い教員からも様々な感想やコメントがあり、教員のFD活動として授業改善にも役立つことが期待される。京都産業大学理学部では、今後もFD活動を通して、学生と一体となって授業改善に取り組んでいく。
(2)その他研修会等
入学前教育プログラム報告会
(講師:SATT株式会社 川邉 忍 氏)
- 概要:例年実施している本学部の入学前教育プログラムに関して、講演者から結果についての概要と傾向について報告をいただいた。サンプル数が少ないため、各種入試制度による根本的な違いがあるのかどうか明確な答えは出ないが、引き続き注視してゆく必要があると状況の共有ができた。
- 実施日:6月21日(水)
- 参加人数:34名(理学部教員32名、理学部事務室職員2名)
アントレプレナーシップに関する研修会
(講師:有限会社パザパコーポレーション代表取締役 河野 周啓 氏)
- 概要:アントレプレナーシップについて、社会を取り巻く状況や本学の学生の様子について、講演者の経験をもとにご紹介いただいた。理学部学生についても、今後、アントレプレナー教育が重要になることを鑑み、社会の状況を共有した。
- 実施日:9月20日(水)
- 参加人数:33名(理学部教員31名、理学部事務室職員2名)
3. 総括
(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所
やはり少人数教育という理学部の特徴が活かされており、授業に対する満足度が高いことが長所である。とくに卒業研究に相当する授業科目「特別研究」に対する満足度の高さは特筆すべきものがある。教員も多くの時間を4年次生の「特別研究」にかけていることもあり、学生の満足度は、教員が学生にかけた時間にしたがって増えている可能性が高い。
(2)1と2において確認された改善すべき点
おそらく、授業に参加する姿勢・意欲が低い学生が学習成果実感調査や公開授業後のワークショップには参加していない可能性があり、そうした学生の状況や意見を反映できるような仕組みづくりが課題であると考える。