令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

「年間計画書」には「(1)公開授業&ワークショップへの参加者数の向上のための方策検討、(2)学生間の交流による学びの意義への気づきの促進、(3)学生の学びへのメタ認知の促進」を目標に掲げた。本来であれば、それらの点について記述するべきところであるが、今年度は春学期から新型コロナウイルス感染症の影響で授業形態に変化が見られ、学生と教員、そして学生間の接触も容易でなかったため、(2)(3)については限られた状態での実施となっている。

(1)については、結果的にオンライン同時開催となったためか、普段よりは参加者が多かった。今まで実施時限を変えてもほとんど変化がなかったが、今回は参加者が倍以上増加している。今後も公開授業&ワークショップはオンラインを併用するのが望ましいのではないかと考える。以下(2)と(3)、および関連する事柄について、今年度の学習成果実感調査の結果をもとに分析を行う。

まずは、秋学期での実感調査実施率と回答率の低さが目立った。実施率は75%で回答者数は470名で、これは履修者数1551名の30.30%である。本年度春学期は実施率90%で回答者数が771名(1901名中40.56%)であったが、これと比較しても低い値に止まった。ちなみに、昨年度の秋学期では、実施率94.74%で回答者数が1054名(1593名中66.16%)であった。昨年度よりも低い結果であることは予想できたが、完全にオンラインで授業を行った春学期よりも随分と落ち込んでしまった。これは春学期時点ではこれまでに経験したことのない授業形態への関心が高く、春学期が高い数値を示していたのだとも解釈できるが、理由ははっきりしない。
 

  1. 設問1(授業参加の度合いを問う設問)や設問2(受講にあたってのシラバス確認についての設問)での肯定的な回答が、昨年同学期に比べて本年度はいずれも大きく増加している。特に設問2に関しては、2019年度から2020年度にかけて、学部平均の数値が春学期で3.71から4.64に、秋学期で3.71から4.31へと大きく伸びている。本年度はデータが小さくなり、学びに前向きな学生を中心に調査が行われている可能性は捨てきれないものの、コロナ禍にあって、頼るものがシラバスであったことがうかがえる。シラバスの重要性を教員と共有したい。
  2. 今年度、顕著な結果が出ているのが、設問3(授業1回あたりの事前事後学習の時間を問う設問)の「講義」区分である。事前事後学習の時間を30分未満としている学生の割合が、出席率80%以上の学生を対象として秋学期で比較すると、2019年度では30%であったが、2020年度は12%となっている。オンラインで実施された講義科目で多くの課題が課せられたことに起因する結果であろう。その反面、多く時間をかけている比率はあまり変化ない。そうすると、全体的に負担を感じる学生が増えたというよりは、これまで事前事後学習に時間をかけなかった学生に勉学の習慣がついたとも考えられる。
  3. オンラインで難しい状況ではあるが、春学期も各教員の様々な努力によって、実験科目が行われ、学生からの一定の評価を得ていることがわかる。例えば、設問9(学びの面白さを感じたかを訪ねる設問)も「強くそう思う」が16%で、66%の学生が「そう思う」までを選んでいる。これは同時期の講義科目の「強くそう思う」が18%で、65%の学生が「そう思う」までを選んだ結果と遜色ない。秋学期になって対面授業が開始されると、設問9で「強くそう思う」が42%で、84%の学生が「そう思う」までを選ぶ結果となった。実験科目については母集団が小さいので、単純な比較はできないが、本年度で比較したところ、春学期から秋学期にかけて大きく躍進している。
  4. 演習科目についても教員は工夫して行った結果、春と秋ではそれほど顕著な違いは見られていない。とはいえ、「途中から対面授業になったのが嬉しかったです」といった演習での対面授業を肯定する意見や教員が工夫して演習の授業設計をしていることに気づいているものもあった。ただ、TAの存在を知らなかったという記述もあり、原因解明の必要性を感じた。
  5. 今回はコロナ禍における授業ということで、記述欄にもそれに関するものが多く見られた。そのような中で、目標の(3)に掲げた自己省察ができているものも見られた。例えば「オンラインで授業が行われることによって、大事な説明などをメモし自分なりのノートを授業内にPCで効率よく作ることができました。」といったものである。オンラインの良さとしては、「分からない点をリアルタイムで先生に聞くことが出来たので、不明な点を減らせた。」といった意見も見られた。そして、オンラインでの学習意欲について問うた設問で「下がった」「どちらかといえば下がった」を選択したものは、秋学期の講義科目で10%、演習科目で9%、実験科目で13%であった。オンラインの特徴を生かして学んでいる点が見える結果であるが、もちろん教員の工夫と努力がこれを支えていたことに間違いはなかろう。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    教員13名(授業教室4名、オンライン9名)、職員2名(授業教室1名、オンライン1名)の参加を得た。
  2. 「ワークショップ」:
    教員10名(授業教室5名、オンライン5名)、職員1名(オンライン)、学生2名、TA1名の参加を得た。
     

(2)ワークショップでの意見交換内容

令和2年11月20日(月)2時間目(10時45分〜12時15分)に宇宙物理・気象学科の小郷原准教授が授業を担当する「物理学演習4」において、公開授業を実施した。当日の公開授業は、12303教室およびMicrosoft Teamsでのオンライン配信という、これまでにない形で実施された。この授業の選定理由としては、今年度採用の新人教員であるからという点と、教室とオンラインを併用した演習授業を行っているという点にあった。
小郷原准教授と受講生の話によると、この授業は学生と一緒に作ったということであった。実際、ワークショップにオンラインで参加していた学生は、「初めは自分の書いたものを見せるだけだったが、授業をやっているうちに、だんだんとわかってきた。今ではオンラインの方がわかりやすい。」といっていた。教員からは、「Teamsの使い方を知れて、得るところがあった。」や「身近な例を取り入れているところが良いと思う」といった意見があり、「グループ分けの基準はどうしているのか」という質問に対しては、「初めはGPAで分けていたが、そうすると演習が進まなくなるから、成績で混ざるようにした。」という回答があった。

理学部で令和2年秋学期に行ったFD研修会についてはこちらから

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

真剣に授業に取り組んでいる姿勢が見られるため、学生に支持されている授業が多い。
オンラインの授業でも、多くの教員が工夫をしていて、学生の学びをサポートしている。また、学生もそれをわかり好意的に受け止めている。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

実感調査の記述によると、学生の中には、ちょっとした教員の話し方に敏感である者もいるようである。特に、今回はオンラインであったため、余計に感じられたかも知れない。言葉遣いや接し方には、より一層注意を払うように喚起したい。
TAの存在を知らなかったという記述もあり、原因解明の必要性を感じた。

4. 次年度に向けての取り組み

公開授業&ワークショップはオンラインを併用して行う。
次年度、本学部ではほとんどの授業が対面で行われる。一方、今年度オンライン授業を行い、その良さに学生の教員も気づいている。対面で行う以上、オンラインではできないことを授業にとり入れていく必要があるだろう。したがって次年度は、オンライン授業経験後の対面授業のあり方に取り組みたい。
PAGE TOP