令和元年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

「年間計画書」には「(1)公開授業&ワークショップへの参加者数の向上、(2)学生の学びへの意欲向上のための授業改善、(3)学生自身の自己評価の具体化と深化」を目標に掲げた。上記3つの目標に関して、実施報告を行う。(1)は「『学習成果実感調査』についての分析結果」にそぐわないので、(2),(3)について報告する。なお、今年度の学習成果実感調査から、講義、演習、実験のカテゴリーに分けて調査を行なった。数理科学科には実験がないため3つのカテゴリーの母集団は異なるものの、回答の数値分布に顕著な差が現れた。主にこの点に基づき、以下のように分析した。

  1. 春学期同様、秋学期の結果においても3つのカテゴリーで顕著な差があることより、学生たちはしっかりと考えて自己評価を実施していると見受けられる。
  2. 講義と演習で比較した場合、設問3(授業1回あたりの事前事後学習の時間を問う設問)に顕著な差がある。秋学期の結果をみると、事前事後学習の時間を30分未満としている学生の割合が、演習では19%であるのに対して、講義では30%となっている。1時間未満だと演習では43%であるのに対して、講義では57%である。演習科目の方が発表などを求められる分、事前事後学習の時間が多くなる傾向は自然ではあるが、聞きっぱなしの授業ではなく、適宜強制力を伴う課題(宿題)を出す必要性があるように感じられる。また、春学期の実感調査の時は、事前事後学習の時間を30分未満としている学生の割合は、演習では16%であるのに対して、講義では27%であった。また、1時間未満だと演習では38%であるのに対して、講義では52%であった。この結果から、事前事後学習をしない方向に学生がシフトしているように見られる。
  3. 設問5は「この授業が目的とする内容を理解できた」という設問である。講義の方は「あまりそうは思わない」と「思わない」の合計が19%であるのに対し、演習では9%になっている。これは春学期と同様の傾向である。演習科目で、学びの効果が現れていると判断できる。このような演習科目の効果に鑑み、講義科目についても、学生が手を動かすシーンを取り入れることでさらに授業改善が見込まれると考えられる。
  4.  
  5. 設問7は「この科目で学びの面白さを感じたか」という設問であるが、これは圧倒的に実験科目で評価が高い。ただ、実験科目では設問6の「この科目を受講するにあたり予備知識は十分であった」では、「あまりそうは思わない」と「思わない」の合計が31%あり、演習科目での17%や講義科目の22%に比べて大きい。これは春学期も同様の結果であった。予備知識がなくても、実験を通して学び、そこで面白さが感じられているものと肯定的に評価したい。
  6. 設問11の「TA・補助員は授業の役に立っている」という質問に関し、「強くそう思う」と「そう思う」の合計を見ると、実験科目が69%、演習科目が56%であり、その価値が認められる結果となっている。ただ、春学期の実験科目では94%が「強くそう思う」と「そう思う」を選んでいた。今学期は「実験」のカテゴリーに属する科目が少ないので、1科目の影響が大きく出たと考えられる。しかし、それにしても春学期と比較して大きな差がある点については、注視したい。
  7. 記述の回答も充実してきている。記述回答を読んでいると、自分で手を動かしたり、話し合ったりする授業を志向している学生が一定数いるように思われる。優れた授業であっても、それを高く評価する学生がいる一方で、「ただ黒板をうつすだけ」としか見ない学生もいる。体系化された知識・技能の習得を図るには、専門家による十分に練られて整理された講義が欠かせない。学生が手を動かす授業づくりも大切であるが、丁寧な授業を心がけることで、学生の学問への興味・関心・意欲を高めたい。また、「数学は計算がメインな学問だと思っていた部分が強かった。しかし、数学を学ぶ上で論理的に考えられるようになるには、理屈、土台となる論理・集合を学ぶことも大切だとこの授業を通して学ぶことができた。」といったような極めて優れた意見が見られたことは、年間計画書の目標に合致するものである。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:10月21日(月)微分積分学Ⅱ-1・2(栁下 浩紀 教授)2限、参加教員5名、職員1名
  2. 「ワークショップ」:10月21日(月)昼休み、参加教員7名、職員1名

(2)ワークショップでの意見交換内容

令和元年10月21日(月)2時間目に数理科学科の柳下教授が授業を担当する「微分積分学Ⅱ-1・2」において、公開授業を実施した。必修科目に設定されている基礎的な科目であるという理由で、この科目が選ばれた。公開授業後、ワークショップを行った。公開授業を行った柳下教授によると、証明を少なめにして、計算を通して概念に慣れていくように授業を組み立てているとのことであった。
学生も5名が残って、意見を述べた。学生からは、「授業が早いので、写真に撮る時もあるが、その場合は家でノートに起こすようにしている」などといった、授業への取り組み方を聞くことができた。また、今年度着任した教員からは、「問題を解いて身につけるという授業スタイルが新鮮であった。」や「前任校では理論を中心にやっていたので、本学で今後学生の指導にあたる上で得るところがあった。」などといった感想が得られた。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

基礎的な科目については、TAがついた演習があることで、学生の学びの目的が明確化されている。
真剣に授業に取り組んでいる姿勢が見られるため、学生に支持されている授業が多い。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

公開授業への参加者が少ない。
実感調査の記述によると、学生の中には、ちょっとした教員の言葉や振る舞いに敏感である者もいるようである。言葉遣いや接し方には、より一層注意を払うように喚起したい。
「TA・補助員は授業の役に立っている」に対しての肯定的意見が実験科目で下がったことを受けて、調査・改善する必要があろう。
春学期から秋学期に向けて、勉学の時間が減っているようである。

4. 次年度に向けての取り組み

公開授業への参加者が少ないので、公開授業をビデオで撮影して、教授会の前後に見せて、意見交換を行うなどの方策が必要であるかもしれない。
1の6)に引用したような優れた見方があっても、授業中に共有できない。学生の記述にあった「数学を学ぶ上で論理的に考えられるようになるには、理屈、土台となる論理・集合を学ぶことも大切だとこの授業を通して学ぶことができた。」という視点は誠に適切であり、このように捉えられていない学生も多いと思われる。学生の口から出てきた優れた見方を学生に共有させることができない現状が大変残念である。他の学生による「評価」を聞いて、成長する学生もいると思われる。何か方法がないか考えたい。
記述欄に全く記載のない教員が散見される。何か書くことは自己省察につながるので、学生に記述させるよう、教員へさらに依頼していきたい。
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