小松 采妙 (旧姓 鬼澤)さん

どこにいても、今できることを(ジョージア)

首都トビリシ
現在私は、JICA青年海外協力隊としてジョージアの小さな町に派遣され、現地NGO職員とともに学校外教育の機会を提供しています。サポートが行き届かない子どもたちに、柔軟な学びの場をつくることが私たちの役割です。

しかし、異国の地でゼロから活動をすることは決して簡単ではありません。言語や文化が違い、設備や環境も整っていない中で、思うようにいかないことばかりです。政治や社会の不安定さに加えて貧困や戦争、差別といった問題にも直面し、無力さを感じることもあります。

それでも、この国で出会った人々の温かさに救われ、ジョージアという国が大好きになりました。彼らの、誇りと情熱をもって自国を支える姿を見て、私もこの場所でできることを精一杯やろうと思いました。ボランティアだからこそ、立場や役職に縛られず、目の前の課題にまっすぐ向き合うことができます。

今の活動は小さなものかもしれません。しかし、教育には未来を変える力があります。ここでの出会いが、子どもたちの未来に繋がるかもしれません。そう信じて、私はこの土地で日本とジョージアを繋いでいます。世界のどこにいても、目の前の人たちのために「今できることをする」その想いを胸に、日々奮闘しています。 
自宅から見えるコーカサス山脈
新鮮な食材が並ぶ市場
ジョージアはウィンタースポーツの地としても有名
ジョージア名物シュクメルリ
Anti-violence campaignの活動
8000年の歴史を持つと言われるジョージアワイン
着付け体験イベント
お箸講座の様子

略歴

2016年   沖縄県立 名護高等学校 卒業
       京都産業大学 外国語学部ヨーロッパ言語学科
     フランス語専攻 入学 
2018年   1年休学 オーストラリア現地小学校
               日本語教員アシスタントボランティア
2021年 京都産業大学 外国語学部ヨーロッパ言語学科
               フランス語専攻 卒業
2021年 横浜市職員中学校教諭 3年間勤務
2024年 JICA青年海外協力隊 ジョージア派遣

言語を通して広がる世界と人との出会い

 京都産業大学ではフランス語を専攻しました。外国語を学ぶことで新しい価値観に触れ、多様な文化と出会うことができると思ったからです。

フランス語専攻では、フランス語だけでなく、言語学、文学、芸術など幅広い知識を学びました。英語や教職課程の勉強と並行しながら、多様な分野にも積極的に挑戦しました。両立は大変でしたが、外国語学部の先生、友人たちの心強い存在があり、乗り越えることができました。

学びを重ねる中で、言語は単なるコミュニケーションの手段ではなく、それを通じて世界が広がり、人と繋がる力になると実感しました。そして、言語学習を通して、異なる文化や価値観を知ることは自らの文化や価値観を見つめ直すことに繋がることを学びました。

多様性と教育の可能性に気づいたオーストラリアでの経験

自分のお気に入りについて説明する授業
大学3年次に、オーストラリアの学校で教員アシスタントとして働くプログラムに参加しました。生きた英語を学び、教職課程で学んだことがどれほど通用するのか試したいと思い、1年間の休学を決意しました。

オーストラリアは多文化・多民族国家であり、教育現場にはさまざまな背景を持つ子どもたちがいました。彼らは互いの違いを受け入れ、尊重しながら学び、それを支える先生たちの努力がありました。個々のアイデンティティを大切にしながら、全員が学びやすい環境をつくる工夫が随所に見られました。その姿勢に触れ、「教育が未来をつくる」ということを実感しました。

子どもたちは、学ぶことの楽しさを自然に感じていました。それは、知識を詰め込むのではなく、個々の興味や個性を尊重しながら学ぶ環境が整っていたからだと思います。この経験を通じて、「学ぶことの楽しさを伝えられる教師になりたい」と強く思い、日本の教育現場で働くことを決めました。
華道の授業
真夏のクリスマス
Worid Book Day(好きな本のキャラクターになりきって登校し本の紹介をし合う)

日本の教育現場での葛藤

卒業式
帰国し復学後、教員免許(英語、フランス語)を取得し、公立中学校の英語教員として3年間勤務しました。初任で担任を任され、3年間同じ学年の生徒たちと共に成長する機会を得ました。しかし、日本の学校教育の現実は想像以上に厳しいものでした。

教員の仕事は、単に授業をするだけではありません。生徒たちの心のケアが最も重要な仕事のひとつでした。彼らの悩みや葛藤に寄り添い、信頼関係を築くことで、ようやく心を開いてくれます。しかし、教師1人が担当する生徒数に対して、向き合える時間は圧倒的に足りません。全員に十分な時間をかけて寄り添いたいのに、それが叶わないもどかしさに苦しみました。

それでも、私が伝えたかったのは「言語の先に広がる世界」でした。英語を学ぶことは、テストのためだけではなく、世界と繋がるための手段です。私の授業や言葉を通じて、「もっと世界を知りたい!」と生徒たちが思ってくれた時は、心から嬉しかったです。教育の成果はすぐに目に見えるものではありませんが、いつか彼らが世界に羽ばたくとき、私との時間が何かのきっかけになっていたら、それほど嬉しいことはありません。 
教室から見える桜
ALTと企画したハロウィン行事

在学生の皆様へ

今振り返ると、フランス語専攻で学んだ日々、出会った人たちは人生でとても大きな存在になっています。ゼミで自分の好きなことについて、同じ志を持った友人、先輩後輩たちと共に学んだ時間は本当に貴重でした。

外国語習得までの道のりは長く、多くの努力が必要ですが、1番大切なのは言語を使って「何を受け取り、伝えるか」です。特に海外生活では、予想外の気付きが多くあります。そんな新たな発見を深く多角的に吸収できるのも言語の力だと思います。この世界には数え切れないほどの国、民族、言語、文化が存在し、人生はいつどこで誰と何に出会うかわかりません。点と点だった今までの経験が、突然線となり繋がることもたくさんあります。
貴重な学生生活、ぜひ自分の心が躍ることにたくさん時間とエネルギーを使い、挑戦してください。
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