令和3年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

外国語学部は2020年度から「教員のICTスキルの向上」を旗印とするカリキュラムをスタートさせた。これがどのような教育的効果を生み出すのかを継続的に検証し、必要に応じて迅速に対処することを目的として、本学部では昨年度と同様に、全ての開講科目で学習成果実感調査を実施した。
秋学期は、対象となる511科目のうち451科目で実施し(実施率88.26%)、履修者延べ9,950人のうち4545人が回答した(回答率45.68%)。春学期の実施率約90%、回答率約48%からは若干低下しているが、そもそも回答率が低いという点に関しては来年度実施方法が変わることで改善が期待されている。秋学期は新型ウイルスの感染拡大を受け、はじめの3週はオンライン授業であったが、その後対面になる授業が大幅に増え、最終的には80%が対面、16%がリアルタイム配信、15.5%が録画配信であった(その他1.2%)。
対面授業が増えたことによる授業の満足度や理解度が明確に向上している。特に満足度は昨年度(2020年度)平均が4.2ポイント→2021年度春学期が4.27ポイント→対面授業が8割になった2021年度秋学期が4.38ポイントになっている。各専攻の教員からの指摘にもあったが、対面授業になり教員と学生、学生間の関係がより親密になることで、多くのフィードバックが受けられたこと(質問に対するその場での返答など)や学生同士の対面でのやりとりなどが原因だと思われる。その他、理解度4.32ポイント、習得度4.34ポイントとどれも高いレベルになっていることもその証左といえよう。
オンデマンド以外のリアルタイム配信や対面授業でも録画配信があった方がいいか、という設問に関して、授業全体では44%(3.21ポイント)が「あった方がいい」と答えたが(全学平均3.55ポイント)、対面授業の場合では必要ないと答える割合が多いクラスが散見された。外国語学部の場合、アクティブラーニングや演習形式の授業が多く、録画配信しても再度視聴する学生がほとんどいないという事情もあると思われる。それと同時に、復習用には授業の録画配信よりもパワーポイントなどの授業資料を共有できた方が良いという意見も何件か見られた。
今回のアンケードから推察できるのは、やはり対面授業こそが本来の授業形態であるという点である。外国語学部が標榜している「ICTの有効活用」の面やそれに伴うオンライン授業の重要性はこれまでと変わらず推進していく必要はあるが、やはり「オンライン授業だから学習意欲が高まった」という春学期のアンケートは相対する対面授業が少ない中でのアンケートであり、それなりの高ポイントであったとしてもそれは各教員個々の尽力に起因している時限的結果である。来年度は平常の形態に戻り、オンライン授業で培った技能や方法を駆使しながらも、本来の大学での学びをとりもどすことが期待されている。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)公開授業とワークショップ
①公開授業:感染拡大防止と適当な授業がなかったことにより中止
②ワークショップ:同上

(2)その他研修会等

  1. Moodleを使った小テストの作成とひな形の共有
    ・概要:
    今年度の重点テーマである「ICTの有効活用」をより実効性の高いものにするために、外国語学部内で共有できるMoodleの活用術についてのFDを行った。具体的には小テスト作成方法やそのひな形の共有など。
    ・実施日:2022年2月10日
    ・参加人数:43名
  2. COIL型授業の実践例-ロシア語専攻、日本語・コミュニケーション専攻、平野ゼミ(英語)の場合-
    ・概要:
    COIL型授業とは、オンライン教育手法の進化を国際的な大学間交流に応用した、国際的、双方的な新しい教育実践の方法。コロナ禍で留学ができない学生がロシア、タイ、台湾の学生とオンラインでの双方向授業を実践。授業では、お互いの言語や文化を教え合うことで異文化理解や語学力の向上などにつなげた。
    ・実施日:2022年3月2日
    ・参加人数:46名

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

Moodleを活用した小テストの作成とひな型の共有においては、平塚教授がMoodleとFormsの違い、Moodleでの小テストの形式別、難易度別の操作方法などを提示。それぞれの小テストのひな形を作成し、操作に不慣れな教員でもひな形を使って簡単にテストが作成できるように指導した。ICTの有効活用を謳った本学部のFD研修として非常に有益な内容であった。

もう一点のFD活動、「COIL型授業の実践例」について4つの事例報告があった。
ロシア語専攻では北上教授による協定校のロシア民族友好大学日本語学科と交流授業の報告があった。1回目はロシア語のみの交流、2回目では日本語のみの交流を行い、初習言語同士の交流の可能性が示された。
日本語・コミュニケーション専攻では、タイのパヤップ大学の学生さんが日本に留学し、自分たちと一緒に1日を過ごすことをイメージしたもので、日本に来ることができないでいるパヤップ大学の学生さんに留学生活を体験してもらった。日本語コミュニケーション専攻の学生にとっても日本語を教授する機会を得ることができた。日本語・コミュニケーション専攻ではこの他にも日本国内の日本語学科の留学生とのグループチャットによる交流や日本語教育実習の一環としてタイのスアンスナンタ・ラチャパット大学(SSRU)との交流なども行った。
平野ゼミでは「アジア学生交流環境フォーラム(ASEP)」に参加。高雄科技大学と英語を使って交流をし、みごと金賞を受賞。ヨーロッパ言語学科の学生が英語で交流する可能性を示すことができた。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

平塚教授によるMoodleの活用法については、今後の教員の実践例が期待される。

COIL型授業の実践例については様々な課題が提示された。どの報告にも共通した一番大きな課題は、外国語学部の学生と海外の人との接点をどうやって作るのか、という点である。具体的には、教員間の交流、時間調整(時差や授業の日程など)、テーマの共有、正式科目としての認定(単位認定など)方法などの課題がある。上記の4つの報告では、各教員が長期にわたり交流授業の準備をし、多大なる労力をかけて実現できた事例であることが示されている。COIL型授業を展開していくためには教員間の交流だけでなく、大学間の共通のプラットフォーム作りも必要とされる。

4. 次年度に向けての取り組み

年度末に行った研修会での実践例共有も踏まえて、COIL型教育の基盤を整えていく。具体的には、授業内外での海外との交流、留学中の学生の授業参加、海外で活躍する卒業生との交流などの活動を比較的容易なものから段階的に実現していく。
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