令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

外国語学部では、新型コロナウイルス感染症よるオンライン授業の実施にあたりICTスキルの向上を重点テーマとして、春学期から引き続き全開講科目で学習成果実感調査を実施した。
教員のICTスキル向上は、オンライン授業のみを目的としているのではなく、教育の質のより広範な改善を目指すものである。オンライン授業のスキルは、通常授業における事前事後学習の促進、反転授業の事前教材の作成、欠席者への指導などにも役立つ。更に、オンライン授業用の動画教材作成の経験は、学生を引き付け引き込む授業展開を構成するうえで有益である。また、来年度から始まるBYOD化に対応するためにも、教員のICTスキル向上は不可欠である。
秋学期は対象科目522科目のうち459科目(実施率87.93%)で実施し、履修者数9699人のうち4061人(回答率41.87%)が回答した。残念ながら春学期の回答率50.63%から大きく回答率が下がってしまった。来年度は実施方法について何らかの改善を行う必要があるだろう。
授業方法については、秋学期は対面授業が21%、リアルタイム配信55%、録画動画配信11%、テキストのみ8%、その他6%であった。
インターネット環境を問う設問(設問7、8、4-1)では、ほぼ9割受講者が良好であり操作もうまく出来たと回答していた。春学期は8割程度だったので、インターネット環境は操作方法も含め秋学期はかなり好転したようだ。
授業内容に関する設問(設問9、10、11、12)では、授業への積極的な取り組み、理解度、スキルの習得、授業内容の満足度で春学期に引き続き高ポイントの回答が多かった(春学期平均4.2ポイント、秋学期平均4.25ポイント)。春学期がすべてオンライン授業だったことを考慮に入れてもほぼ遜色のない良好な結果となった。
対面授業の良い点についてのコメントとして、対面授業の方が難しい課題(技術的な問題や抽象的な問題)に対処しやすい、緊張感を持って授業を受けられる、集中できる、授業での指示が明確であるなどの点が挙げられた。オンライン授業の良い点については、オンライン授業の動画配信は対面であっても復習ができて助かる、通学時間の無駄がないなどがあった。改善すべき点としては、「対面授業になったのにオンラインでもできるような授業だったので、対面だからこそできる授業をしてほしかった」などの意見があった。従来の対面授業のあり方を見直し、対面での参加を活かした授業を工夫して教育効果を上げることが必要である。また、オンライン授業で培ったノウハウなどを対面授業で効果的に活用することも求められている。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)参加人数

今年度の重点テーマである「ICTを有効活用できる教員の育成」に関して、遠隔授業とその後の授業展開の観点から様々な知見を得ることを期待して、2020年10月28日(水)Zoom(オンラインにて)ラボレット准教授によるWorld Englishesの授業からPidgins and creoles: Hawaiian Creole Englishの公開授業を実施した。参加人数は35名であった。
本授業はオンデマンド型の授業形式で、学生は一週間以内であればいつでもアクセス可能で、オンライン上で課題や宿題をこなすことができる。はじめにハワイにおけるピジン語とクレオール語についての説明が動画で視聴でき、その後、その内容が理解できているかどうかを様々なクイズ形式で確認できる内容となっている。質問はMoodleで受け付け、学生へのきめ細かい対応が可能になっている。オンデマンド形式の授業としては理想的な授業展開を行っており、春学期の学習成果実感調査でもほぼすべての設問で高評価を得ていた。

(2)ワークショップでの意見交換内容

ワークショップではZoomのブレイクアウトルームを使って、6グループに分けて授業の利点と問題点、自分の授業ではどのような授業を行ったか、コロナ渦が終わった後の授業のデジタル化などについて話し合った。ICTを使い新たなチャレンジを行った教員がいる一方で、使用に不慣れで十分な対応ができなかった教員もいたようだ。
意見としては、「動画の編集は非常に時間がかかるが、作ってしまえば何度でも使用できる。」「教員同士のコミュニケーションが取れなくて大変だった。」「対面になっても作成した動画は有効活用できる。」「対面、オンラインともに学生とのコミュニケーションが大切。」「ITの技術がなく、新たなチャレンジができなかった。」「ハイブリッド型の講義は非常に難しい。」「語学の授業では映像、音声のある動画は有効だが、講義型の授業ではどうか。」「1回の動画が短いのがよかった。」「動画の編集ソフトは何を使っているのか。」「オンライン授業での満足度が高い傾向にあるらしい。」など、様々な意見が共有された。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

外国語教育とICT利用は比較的親和性が高く、IT機器やアプリケーションの使用に長けた教員が多く所属していることがわかった。来年度はBYOD化が進みPCの授業での使用が増えるので、公開授業はこういった知識を多くの教員間で共有できる良い機会となった。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

来年度は原則すべての授業が対面授業となるため、今年度に培ったICTの技術やコンテンツをどのように授業で活用できるかが課題となる。春学期と秋学期の授業で明確になったのは、対面、オンラインどちらの場合でも学生への丁寧な説明やフィードバックが高評価につながっている点である。MoodleやTeamsなどの学習プラットフォームを充実させ、学生がより授業に参加しやすい環境を構築していく必要がある。

4. 次年度に向けての取り組み

1年次生にBYODが導入され、来年度はICTの必要性がさらに増すことになる。これまでは遠隔授業におけるICTの活用であったが、来年度は対面授業におけるPCやアプリケーションの活用をどのようにしていくかが大きな課題になり、これまでの対面授業の良い点と遠隔授業で培ったスキルをうまく融合させより効果的な授業運営することが求められる。来年度はICTの活用だけでなく「対面授業におけるICTの活用」の具体的な事例やそれに関連したFD活動を通じて授業運営のスキル向上を目指したい。
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