平成27年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

本年度は、「学習成果実感調査」の設問を変更した。経年変化を見ていくためには同じ設問を継続した方が良いが、一部の授業に合致しない設問、問いたい内容が絞りきれていない設問、他にも尋ねるべき設問が出てきたからである。ただし、授業に関するアンケート調査で一般的に最も重視されている満足度に関する設問については、同じ文言のまま残し、続けて経年変化を見ることができるようにした。
授業の内容面に関する設問について全体で平均を計算したところ、以下のようになった。

「授業への取り組み」(設問4)、「理解しやすさ」(設問5)、「習得度」(設問6)、「学びの面白さ」(設問7)、「満足度」(設問8)のいずれも、4前後の値となり、概ね肯定的に評価されている。
昨年度は、新規科目の「基礎演習」が比較的評価が低かったので、本年度は学生及び教員からの意見をもとに様々な改善を行った。その結果、評価の改善が見られた。満足度については、肯定的な回答である「5.強くそう思う」が増加した。


設問12の自由記述については、授業のよい点の記述において、「分かりやすかった」「理解しやすかった」など分かりやすさに関する表現の使用頻度が高かった。これらの表現を含む回答は、そうでない回答に比べて、「映像」「パワーポイント」「レジュメ」「資料」といった語の生起頻度が高かった。また、「グループワーク」や「ディスカッション」といったアクティブ・ラーニングに関連する用語も使用頻度が高かった。

2. 「公開授業&ワークショップ」についての報告 

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:11月12日(木)1限 教員6名 外語事務2名 学長室2名
    11月16日(月)1限 教員17名 外語事務2名 学長室2名
  2. 「ワークショップ」:教員29名、事務室2名、学長室4名

(2)ワークショップでの意見交換内容

今回の公開授業は、2016年4月から新たに使用することになるアクティブ・ラーニング仕様教室を有効活用するためのものであった。この教室は、グループ毎に使用できるモニターを8つないし6つ備えており、学生たちがスマートフォンやタブレットなどの自分のデバイスの画面を共有しながら、グループ活動を行えるようになっている。これと同じ環境ではないが、そのような教室でのアクティブ・ラーニングのモデルとなるような授業を公開授業とした。
ワークショップでの意見を幾つから記しておく。プレゼンテーションをした学生に個々にコメントするという細やかな指導や、全員が次々と違う学生とペアを組んで会話を行うという手法が評価された。2つの公開授業のうち一方のクラスの学生間の能力差が大きいことに話が及び、そのようなクラスをどのように運営すれば良いかという点についても共同学習による対処方法があることが示唆された。非英語外国語の教員からは、初習外国語の場合にどのようにしたら良いかを考えなければならないという問題提起もあった。
なお、3月28日(月)に大阪大学の岩居弘樹教授を招いて、FD研修会を行ったことも付記しておきたい。岩井先生は、タブレットのアプリを用いて学生たちに能動的にドイツ語を学ばせる授業を行っており、初習外国語を含めた語学授業でのアクティブ・ラーニング仕様教室の有効利用にとても参考になる研修になった。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

「学習成果実感調査」の調査結果からは、本学部の授業・カリキュラムは概ね肯定的に評価されていると言える。
特に、外国語学部のカリキュラムにおいて4年間の総まとめとして位置付けられる「演習A」及び「演習B」において、受講生が学習に積極的に取り組み、成果を上げて満足度も高いことが分かった。また、学部の全ての学生を対象とする科目である「特別英語」も、内容面に関する設問に対する評価が高い。
自由記述の分析からは、教員が授業において映像、パワーポイント、レジュメなどを効果的に利用して、受講生が理解しやすくなるように工夫していることが見て取れた。グループワークやディスカッションなどのアクティブ・ラーニング型の活動を取り入れた授業も、受講生から評価されている。その他にも、毎回の小テスト、「基礎演習」のプレゼンテーションやレポートの書き方、英語の多読が評価されている。
ワークショップにおいては、公開授業について、ある英語教員から、まさしく自分が目標としている授業であるという賞賛があった。英語学科には英語教育を専門とする先生方がいて、語学教育の最前線にいることを実感した。
なお、2(2)の最後で言及した3月28日(月)のFD研修会においては、講師の先生から、参加されている先生方が多く、また、明るいとのお褒めの言葉も頂いた。アクティブ・ラーニング仕様教室の有効利用に向けて前向きに取り組む本学部教員たちの姿に心強い思いを抱いたことも付け加えておく。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

外国語学部の全4学科に横断して設定できる共通の5つの科目群について、内容面に関する評価(設問4~設問8)を見たところ、春学期も、秋学期も、一貫して、以下のような順番になった。

基礎演習必修語学2年必修語学1年特別英語演習

1で見たとおり、「基礎演習」については、改善を行い、その結果、満足度の改善が見られた。しかし、相対的には評価が低い。
必修語学の評価も相対的には低く、しかも、1年より2年が低くなっている。専攻語の学習において苦労している学生がいることを反映していると思われる。
全ての科目にわたって、授業についてのアンケートで最も総合的な指標と見なされる満足度について問う設問8の結果とその他の設問の結果の相関係数を計算した。

春学期

秋学期

「満足度」(設問8)と最も相関が高いのは、「学びの面白さ」(設問7)で、「理解しやすさ」(設問5)や「習得度」(設問6)も相関が高い。「授業参加度」(設問1)、「シラバスの活用」(設問2)、「事前・事後学習時間」(設問3)は相関係数が低いが、標本数が大きいので、弱いとはいえ有意な相関はある。しかし、特別英語は必修語学よりも事前・事後学習時間が短いなど、授業の内容についての評価と逆転しているところもある。学習量が多ければ、習得度が向上し、それが学びの面白さにつながり、結果、満足度も高くなるというサイクルが回るのが理想である。しかし、上述の結果は、このようなサイクルが回っていないところがあることを示していると考えられる。

4. 次年度に向けての取り組み

自由記述の分析から、授業の良し悪しを左右する要因として分かりやすさが大きいことが分かった。より多くの授業をより分かりやすくすることが重要である。分かりやすさに関する表現が「映像」「パワーポイント」「レジュメ」「資料」といった語と共起する率が高いことから、授業を分かりやすくする要因が幾つか分かった。これも踏まえて、授業を分かりやすくするようにしていきたい。
また、「グループワーク」や「ディスカッション」といったアクティブ・ラーニング的な活動も評価されていることが分かった。これらの活動の導入を推進していくべきである。しかし、グループワークについては、うまく機能しない場合も見られる。ノウハウの蓄積や共有が必要であろう。次年度からは、サギタリウス館のアクティブ・ラーニング仕様教室の使用が開始される。本年度の公開授業・ワークショップ・FD研修会も踏まえ、有効活用を促進していきたい。
幾つかの科目群を対照した分析では、「演習」がうまく機能していることが分かった。しかし、従来の「演習」が選択科目だったのに対して、次年度からは選択必修科目の「研究演習」に変わっていく。これまでの効果を維持しながら、移行を進めていく必要がある。他方、専攻語の学習において苦労している学生を少なくするよう、必修語学についてもなお一層の工夫が必要である。また、

学習量が多い習得度が向上学びの面白さを感じる満足度が高くなる

というサイクルが回るようにしていかなければならない。

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