令和5年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

文化学部では各年次演習科目(ゼミ)における少人数かつ段階的な学びを重視していることから、1年〜4年生の演習科目を分析対象としている。秋学期の調査において、調査対象106の演習科目中、実施科目数は90(84.9%)、履修者数977名の内、回答者数は441名(45.1%)だった(昨年度の秋学期は44.9%)。
共通設問について、設問1(受講理由)について、349名(79.1%)が「カリキュラム上履修が必要である」と回答している。設問2(事前事後学習)について、1時間から1時間30分という回答が最も多く(22%)、次に30分から1時間(20%)、その次が3時間以上(18%)と、かなりばらつきがある。設問3(到達目標の達成)について、99%の学生が「到達できた」「概ね到達できた」と回答し、「到達できた」と回答した学生は66%であった。設問4(学びへの意欲)について、95%の学生が「強くそう思う」「そう思う」と回答し、「強くそう思う」と回答した学生は54%であった。設問5(授業に対する満足度)について、96%の学生が「強く思う」「そう思う」と回答し、「強く思う」と回答した学生は63%であった。多くの学生が授業の到達目標を達成し、学びの意欲を高めていると実感していること、演習科目に対する満足度が高いことがわかる。
学部独自設問について、設問1の学科について、京都文化学科と国際文化学科の回答率はほぼ半々であった。設問2の学年について、1年から4年まで回答率はあまり変わらないが、学年があがるにつれ回答率がやや下がっている。設問3(事前事後学習の重要性)について、87%の学生が「強く思う」「そう思う」と回答している。文化学部では学部独自の取り組みである「むすびわざブックマラソン」プロジェクトと連携し、読むことへの習慣づけを推進しているが、設問4(演習と読書の関連)について、41%が1~2冊、24%が3~4冊、12%が5~9冊と回答し、10冊以上と回答した学生は11%であった。引き続き読書の習慣づけを推進する必要がある。設問5(グループワークの意義の実感)では、71%の学生が、設問6(調査研究やフィールドワーク学習の面白さの実感)では77%の学生が「強くそう思う」「そう思う」と回答した。昨年度に比べると低下しているものの、学生がアクティブラーニング型の学びの意義を実感していることがわかる(昨年度:設問5は84%, 設問6は88%)。設問7(文化への興味や理解の深まり)について、91%の学生が「強くそう思う」「そう思う」と回答した(昨年度:95%)。こちらもやや低下しているが、大半の学生が演習科目に前向きに関わっていることがわかる。以上の調査結果から、演習科目を4年間通して受講できる文化学部のカリキュラムにおいて、今後も演習科目を学部の学びの柱に据えて実行していきたい。ただ事前事後学習および読書については、質・量ともに改善の余地がある。なお学部独自設問の回答率について、春学期の回答者数は377名であったが、秋学期の回答者数は174名と大幅に減った。これは全学の共通設問と学部独自設問の2種類のアンケートに回答するという煩雑さが原因と考えられ、次年度は共通設問との一本化を検討する必要がある。

2. 学部独自のFD活動についての報告

(1)公開授業とワークショップ

  1. 公開授業
    • 科目:国際文化演習ⅠB
    • 担当教員:大平睦美 教授
    • 実施日時/場所:11月9日(木)3限/5403教室
    • 参加人数:22名(職員1名、学生16名を含む)
  2. ワークショップ:
    • 実施日時/場所:11月9日(木)4限/5403教室
    • 参加人数: 7 名(日本事務器株式会社の2名を含む)
    • ワークショップでの意見交換内容
      公開授業では、事前に数回にわけて授業中に読んだ文献について、そのレビューを文献レビュー共有アプリ「BOOKMARRY」にアップさせ、学生同士でディスカッションが行なわせていた。ワークショップには、「BOOKMARRY」を開発された日本事務器株式会社から2名が参加し、学生にどのような文献を読ませるか、また読ませる際の指導方法や「BOOKMARRY」の活用法について意見交換が行なわれた。

(2)その他研修会等

  1. テーマ:文献レビュー共有アプリ「BOOKMARRY」に関する研修会
    • 概要:「BOOKMARRY」を開発した日本事務器株式会社から渡辺哲成氏をゲストスピーカーに迎え、文化学部におけるアプリの利用状況ならびに他大学での活用事例に関する報告が行なわれた。「BOOKMARRY」は一昨年の秋学期から本格導入され、レビュー数を着実に伸ばしている。またアプリの普及とともに、文化学部の取り組は先進的事例として他大学に紹介されており、本学のよき宣伝となっている。
    • 実施日:1月10日
    • 参加人数:20名(日本事務器株式会社の2名を含む)
  2. テーマ:グループワークに関する研修会(理念編)
    • 概要:毎年多数の学生ファシリテータを養成しているF工房から大島和美氏を講師に迎え、F工房・学ファシについて、学ファシ養成の研修プログラムについて、取り入れている工夫、意識していることなど、F工房が大切にしているマインドやノウハウについての話を聞き、最後に質疑応答を行なった。
    • 実施日:2月9日
    • 参加人数:27名(職員2名を含む)
  3. テーマ:グループワークに関する研修会(実践編)
    • 概要:学生ファシリテータのファシリテートのもと、教員・学生それぞれの立場からグループワークに関する意見交換を行ない、最後にポスターセッション形式で全体共有を行なった。学生・教員の両者にとって相手の立場を理解する有意義な時間となった。
    • 実施日:2月22日
    • 参加人数:31名(職員2名、学生ファシリテータ10名を含む)

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

文化学部では演習科目は最大でも15名程度となっており、きめ細やかな少人数教育を実現している。学部の授業・カリキュラムの長所は少人数の授業での担当教員やクラスメートとの対話を通して、学生が自ら選んだテーマを深く掘り下げられる学びができることである。学習成果実感調査からは、演習科目に対する学生の満足度は高いことが明らかになっている。また、公開授業およびワークショップからは、演習科目の取り組みに関して、学生のテーマや研究内容に違いはあっても、学生同士がグループワークなどを通じてお互いの学びに相乗効果がもたらしていることが確認できた。文化学部の少人数教育の特性を生かし、教員と学生また学生同士が密なコミュニケーションをとり、フィードバックの機会を増やすことで、学生が学習成果を実感しやすい環境を提供することができていると考えられる。

(2)1と2において確認された改善すべき点

演習科目について、すでに高水準の満足度が得られているが、文献を読むことと、ディスカッションをすること、この2点において、今後、さらなる充実を図る必要がある。現在、文化学部では4年間に100冊以上の本を読むことを目指す「むすびわざブックマラソン」を通じて、学生に読書習慣を身に付ける取り組をおこなっている。「BOOKMARRY」は読書記録といての機能だけでなく、読書という個人的な体験(インプット)を共有(アウトプット)することで他者とつながる体験を実現している。今後の課題としては、レビュー数を増やすだけでなく、他大学における活用事例を参考にしつつ、教員もレビュー投稿をおこなうなどして、演習科目においてもアプリを活用していく必要があり、このことによって、学生のゼミにおける学びがより深まることが期待される。またグループワークのあり方に関しては、今年度のFD研修を通じて、学生の目線を取り入れつつ、教員間で有意義な意見交換を行なうことができた。今後の課題としては、導入レベルのグループワークに留まらず、専門的学びにつながる、より高度なグループワークを実現する必要がある。
以上、読書の習慣化およびグループワークの活性化が文化学部の演習科目をますます充実したものにすることは間違いない。文化学部では今後さらなる教育力の質の向上に努めていきたい。

4. 次年度に向けての取り組み

文化学部では、次年度も今年度と同様に全科目を対象に学習成果実感調査を行なうが、引き続き初年次ゼミ(京都文化学科は「京都文化フィールド演習」、国際文化学科は「入門セミナー」)、2年次ゼミ(基礎演習)、3年次ゼミ(文化演習Ⅰ)、4年次ゼミ(文化演習Ⅱ)に関する独自設問を設けたい。特に人文系の学部である文化学部では、文献を読み解くことが重要であり、そのことを学生に意識させるためにも、独自設問において、ゼミ活動とも密接に関わる、読書習慣に関する設問を設ける予定である。また「BOOKMARRY」の導入により、より高次の読書体験と読書を通じた学生間のコミュニケーションが期待できる。なおこのように演習科目を文化学部のカリキュラムの中核に位置付けつつ、今後はその他の科目の在り方についても検証を行ない、今後のカリキュラムのさらなる充実とより魅力ある学部教育の将来構想につなげたい。そして学部全体の実態を掴むためにも来年度はより多くの学生からアンケートの回答を回収できるよう努めたい。特に学部独自設問に関しては、次年度は共通設問に盛り込むなど、調査方法の変更を検討したい。
PAGE TOP