令和4年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

文化学部では各年次演習科目(ゼミ)における少人数かつ段階的な学びを重視していることから、学習成果実感調査は演習科目を中心に実施している。秋学期結果において、調査対象93の演習科目中、秋学期の回答者数は364名、回答率は44.9%だった。
設問1(授業参加の程度)において、15回の授業回数のうち、12回以上出席した学生の割合は約90%であった。設問2(履修にあたってシラバスを確認したか)において、確認したと答えた学生は96%と、例年、高い割合で推移しており、演習科目に対する意識の高さと前向きな取り組み姿勢がうかがえる。設問2-2(シラバスに記載された準備学習等の指示を参考に学習を進めた)では「そう思う」(47%)「どちらかといえばそう思う」(32%)で、8割の学生が日頃から授業外学習に取り組んでいることがわかる。また、設問3「1回の授業あたりの事前・事後学習に費やした時間」について、2時間以上と答えた学生の割合は約30%と高い割合である。学部の学びの根幹である演習科目において、学生の自覚を促し、学部教育の総合的な達成度にもつながることが期待される。設問5(協働学習の意義)では、84%の学生が協働学習の意義を実感できたと好意的に回答し、設問6(調査研究の面白さの実感)では、88%の学生が調査学習の面白さを実感したと回答した。これらの結果においても、学部の学びの根幹である演習科目の特色であるグループワーク・調査研究・フィールドワークの意義を実感したことがうかがえる。設問7(文化に関する興味・関心が深まった)に関して、「強くそう思う」・「そう思う」との回答は95%にのぼり、学生にとっても演習科目の意義を高く実感していることが見て取れる。設問8(文献を読むことの大切さ)に関して、90%の学生が大切だと感じており、設問9で文献を読む習慣が身についたと回答した学生は68%であった。読書習慣の向上は他の設問と比して高いとは言えないかもしれないが、昨年度の同設問結果が57%であったことを見ると、2022年度より導入した読書アプリの奏功を見ることができる。さらに今後も引き続き、読書習慣などを促す必要性がある。設問10(総合的に見てこの科目に満足しているか)では、95%の学生が「強くそう思う(61%)」「そう思う(34%)」と答えた。このことからも、学生は演習科目での学びを好意的に捉えていることがわかる。
以上の調査結果から、文化学部の学びの特徴である演習科目を4年間通して受講できるカリキュラムは、今後も柱に据えて実行していきたい。
なお、冒頭記載のとおり回答数が若干低い。回答していない学生の中には、演習科目学修をしっかりと受講できていない可能性が否定できず、学生主体の演習科目充実について、学部内でさらに議論・検討していきたい。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

(1)公開授業とワークショップ

  1. 公開授業
    • 科目:「国際文化演習ⅠB」
    • 担当教員:藤高和輝助教(2023年度より准教授)
    • 実施日時/場所:10月13日(木)3時限目/11号館教室
    • 参加人数: 17名(学生12名を含む)
  2. ワークショップ:
    • 実施日時/場所:10月13日(木)4時限目/11号館教室
      ※公開授業と日時/場所が異なる場合のみ記載してください
    • 参加人数: 4名
    • ワークショップでの意見交換内容
      当該演習では、ジェンダーやセクシュアリティをテーマにグループワーク中心に展開されている。性に関する「当たり前」を批判的に読み解くために、基礎的な文献を読むことも重視しており、公開授業では、「結婚」や「恋愛」をテーマとした文献を取り扱い、グループワーク形式で議論が行われた。この公開授業を受けて、ワークショップでは、演習科目における学生主体による課題・テーマの掘り起こし・抽出とアクティブラーニングの重要性について意見交換を行った。また、文化学部カリキュラムにおける文献研究・調査方法会得の重要性、延いては演習科目の重要性について議論を行った。

(2)その他研修会等

  • テーマ:①「大学の授業の設計」、②「8つの資質・能力」(前編)、③「8つの資質・能力」(後編)
  • 概要:オンデマンド講義。カリキュラムや授業の設計において、学習成果を明確にし、適切な到達目標を設定すること、高等教育に求められる内部質保証の意義と必要性を説明することの必要性について、理解を深めた。
  • 実施日:①5月18日(水)、②10月26日(水)、③11月16日(水)
  • 参加人数:①35名(職員4名を含む)、②31名(職員2名を含む)、③32名(職員2名を含む)

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

文化学部では演習科目は最大でも15名程度となっており、きめ細やかな少人数教育を実現している。学部の授業・カリキュラムの長所は少人数の授業での担当教員やクラスメートとの対話を通して、学生が自ら選んだテーマを深く掘り下げられる学びができることである。特にコロナ禍を経て、グループワークの対面実施が本格的に復活した2022年度において、教員やクラスメートとの対面での議論を通して、研究テーマに関する学びへの手応えと刺激を受けたと思われる。学習成果実感調査からも、演習科目に関してはより高い水準で学生は満足して取り組んでいることが明らかになっている。また、公開授業における演習科目の取り組みに関しては、学生が取り組むテーマや研究内容に違いはあっても、学生同士がグループワークや議論に取り組むことでお互いの研究成果に相乗効果があることも見受けられた。文化学部の少人数教育の特性を生かし、教員と学生また学生同士が密なコミュニケーションをとり、フィードバックの機会を増やすことで、学生が学修成果を実感しやすい環境を提供することができると考えられる。

(2)1と2において確認された改善すべき点

2021年度より京都文化学科に「観光文化コース」がスタートし、定員も増えた。それを受けて京都文化学科では、コースの垣根を越えて演習を履修できるカリキュラムとした。また、異文化コミュニケーション演習では、京都文化学科と国際文化学科の学生が共に同じ演習で学んでおり、コースや学科を超えた学びの共有がカリキュラムとして機能している。加えて、国際文化学科の新カリキュラムで、「英語プログラム」「国際貢献プログラム」「文化政策プログラム」が始まって4年が経過し、「英語プログラム」ではプログラム修了者も輩出した。卒業後の自分の理想的な自己を見つめるためにも、学部全体として科目の再確認や体系化をさらに進めるためにも、今後もさらにカリキュラム充実や科目内容充実に向けた見直しが必要になってくるだろう。

4. 次年度に向けての取り組み

文化学部では、これまで初年次ゼミ(京都文化学科は「京都文化フィールド演習」、国際文化学科は「入門セミナー」)、2年次ゼミ(基礎演習)、3年次ゼミ(文化演習Ⅰ)、4年次ゼミ(文化演習Ⅱ)を対象に学習成果実感調査を行ってきた。次年度からは、原則、全科目を対象に実施する予定である。カリキュラムの中核と位置付けている各ゼミ科目における検証を中心としつつ、各科目における学生主体の授業計画の在り方についても検証をはじめたい。
加えて、文化学部では、本を読むことの重要性の意識を高めることを重視している。学部独自の事業である「むすびわざブックマラソン」において、読書アプリ「BOOKMARRY」を2022年度より導入した。これを受けてより高次の読書体験と読書を通じた学生間のコミュニケーションが期待できる。しかしながら、学生によるBOOKMARRY利活用がまだまだ浸透していないことから、次年度はゼミを中心に授業活動に取り入れるなど、文化学部の学びと連動した読書習慣の醸成を推進したい。
学部カリキュラムとしては、国際文化学科ではコース再編(総合文化コース・地域文化コース)後4年となり、完成年度を迎えた。また、京都文化学科では2021年度開設の観光文化コースが次年度2023年度には3年目を迎え、卒業研究に向けたゼミ活動が本格化する。今後一層、両学科における協力体制を検討し、文化学部の学びと将来像の明確化を目指すとともに、今後のカリキュラム充実とより魅力ある学部教育の将来構想につなげたい。
PAGE TOP