令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

文化学部ではカリキュラムの各年次に演習科目を置いて少人数かつ段階的な学びを重視しており、学習成果実感調査も演習授業を対象に行っている。春学期の結果についてはすでに中間報告において報告しており、ここでは秋学期の結果について分析する。春学期はオンライン授業となったことによる影響がみられたが、秋学期にはゼミを中心に段階的に対面授業が実施された。そこで、今回は春学期との比較結果を中心に報告する。まず春学期では、設問1(授業参加の程度)、設問2(履修にあたってシラバスを確認したか)において、授業に積極的に参加し、シラバスを確認する学生の割合が昨年より高い結果が出たことを報告した。秋学期でも設問1(15回中12回以上参加)が93%、設問2(シラバスを確認)が88%となり、春学期とほぼ同じ数値であった。設問2-2(シラバスに記載された準備学習等の指示を参考に学習を進めた)で「そう思う」「どちらかといえばそう思う」の割合は71%という結果で、活用の方法を検討する余地はあるものの、春学期64%(昨年度58%)からの伸長がみられた。一方、前年と比べ、春学期に大きく落ち込んだ設問6(グループワークの意義の実感)と設問7(フィールド学習や調査研究の面白さの実感)においては、「強くそう思う」「そう思う」と回答した学生の割合が、設問6で75%(春学期64%)、設問7で83%(春学期64%)と大きく改善し、ほぼ前年度の数値に戻った。また設問9(本・文献を読むことの大切さの実感)と設問10(本・文献を読む習慣が身に付いたかどうか)でも、「強くそう思う」「そう思う」と回答した学生の割合が、設問9で96%(春学期82%)と改善し、前年度の92%も上回った。さらに設問10では66%(春学期51%)と前年度の74%までは回復しなかったものの春学期からは大きく改善した。今年度からWebアンケートに移行したことで、全学的に概ね回答率は下がっており単純な数値の比較はできないが、オンラインやハイブリッド授業では対面だけの授業よりも授業参加の割合が高く、またシラバスを確認する学生の割合も高まる傾向があるようだ。また、対面によるグループワークやフィールド学習の重要性、図書館へのアクセスや対面指導による文献紹介の重要性などが浮き彫りとなったといえる。加えて、今年度独自の設問5(授業で使用した通信機器や接続方法で学習意欲に変化があったか)では「高まった」「どちらかといえば高まった」と回答した学生は春学期、秋学期とも40%前後となっており、対面授業が始まった秋学期においても、オンライン授業で用いるツールの利便性を評価する学生の割合は少なくない。今後も対面授業を中心にハイブリッドやオンデマンド授業も併用されることから、次年度に向けて、アンケートの結果を生かした取り組みを検討する必要があるだろう。また前年度に引き続き文化学部独自の「むすびわざブックマラソン」プロジェクトと連携しながら、文献を読むことの動機づけ、意識づけ、習慣づけをさらに推進していくことが望まれるであろう。

2.「公開授業&ワークショップ」についての成果報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    10月23日(金)歴史文化演習IB(梶原洋一助教)3限、参加教員3名、学生10名
  2. 「ワークショップ」:
    10月23日 (金) 15:00-16:00 参加教員3名
  3. 「FDセミナー」:
    4月23日(木)10:00-11:00 (Teams 導入)(竹内茂夫教授)参加教員約20名
    4月23日(木)11:10-11:40 (moodle 入門)(久米裕子教授)参加教員約15名
    4月28日(火)10:00-11:00 (Teams 導入)(竹内茂夫教授)参加教員約35名
    4月28日(火)11:10-11:40 (moodle 入門)(久米裕子教授)参加教員約35名
    4月28日
    (火)15:00-16:00 (Teams 初級) (ペレッキアディエゴ准教授)参加教員約25名
           ※28日の講習は非常勤講師の方にも公開した。
  4.  

(2)ワークショップでの意見交換内容

秋学期10月23日の段階では対面で実施される授業は限定的であり、その影響もあって参加教員数は少なかったものの、ゼミ(特に3年次ゼミ)における文献に基づく発表と議論というテーマを中心に、授業の進め方、授業内容、授業改善方法について有意義な意見交換が行われた。特に今回のゼミはオンラインで参加する学生もあり、ハイブリッド形式で行う際の問題点や工夫についての情報共有も成された。主な内容は以下の通りである。

  • 教科書として指定された書籍の第2章〜第4章を担当学生が発表するという形式ですすめられたが、学生は手ごたえのある分量・内容の資料を読み込み、PPTなどのツールに頼らず、テキストによるレジュメを丁寧に作成していた。
  • 時間配分などが偏るケースも見られたが、内容だけでなく、レジュメの作成法や多くの情報から何を選び出すかといった点も互いに学びあう工夫がなされていた。
  • 発表担当だけでなく、質問担当も事前に決めることで発表者以外も資料を読み込む必要があるように工夫されていた。
  • 今回は内容の把握が中心であったが、テキストそのものへの批判的な読みの可能性についての質問が出された。
  • ハイブリッド授業のため、Teamsによる画面共有を利用し、教室内での発表や質問の声がオンラインの学生に十分に届いているかの確認を行い、随時、声をかけたり、意見を求めたりするなどの工夫がなされていた。
  • 春学期のオンライン授業期間に醸成された、ゼミメンバー間の信頼関係、テーマ(百年戦争)への共通理解、プレゼン準備と発表方法、質疑応答のマナー等、半年間の成果が見て取れた。オンライン授業、ハイブリッド授業、対面授業、という各形式への対応(教員・学生)について、今後の課題を共有した。

(3)FDセミナーでの意見交換内容

春学期は全面的にオンライン授業となり、遠隔授業システムとしてmoodleとMicrosoft Teamsの利用が推奨された。はじめてのTeams 利用となり、またmoodleとの連携も必須となることから、遠隔授業の準備を支援するために、文化学部FDセミナーとして「moodle &Teamsオンライン講習会~Teamsで会いましょう~」を開催した。講習は、Teamsを使った授業や会議のイメージを共有できるようにTeamsのビデオ会議システムを使用した。文化学部で設置された「遠隔授業検討小委員会」のメンバーを中心に、事前に会議への入り方の案内やmoodleの使用状況などのアンケートを行い、当日は担当者がTeamsの使い方(Stream、Forms、OneNoteを含む)やセキュリティについて、またmoodleの使い方やTeamsとの連携などについて画面を使って説明した。各回とも多数の教員が参加し、活発な質疑応答が行われた。また後日、講習会動画と資料をTeamsで閲覧可能とし、スムーズな遠隔授業の開始と運営に向けてのサポートを行った。

3.総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

文化学部の学生数は、京都文化学科と国際文化学科を合わせて一学年270名であるが、他学部と比較してもきめ細かな少人数制教育が実現可能な条件下にあると言える。学部の授業・カリキュラムの長所もこの点に集約されるであろう。具体的には、教員と学生との距離が近いこと、教員と学生また学生同士が密なコミュニケーションをとることができること、教員及び学生の間にフィードバックの機会も数多くあることなどを挙げることができる。総じて、学生が学修成果を実感しやすい環境が整っているとも言える。また、演習系の科目と講義系科目のリンク・連関も概ねしっかり意識されている。

(2)1と2において確認された改善すべき点

二学科間、また各学科のコースの間に履修制限等が存在し、学生の「履修のしやすさ」という観点からすれば、まだ障壁が存在する。次年度より京都文化学科に「観光文化コース」がスタートし、定員も増える。今後科目間の関連性の再確認や体系化をさらに進め、学部全体として一貫性・相関性のあるカリキュラム構築を目指したい。所属するコースごとの履修可能な科目を見直した上で、カリキュラムのさらなる改善を図りたい。

4.次年度に向けての取り組み

文化学部では、両学科のカリキュラムの各年次に演習科目を置き、少人数かつ段階的な学びを重視してきたが、来年度も昨年度に引き続き、初年次ゼミ(京都文化学科は「京都文化フィールド演習」、国際文化学科は「入門セミナー」)、2年次ゼミ(基礎演習)、3年次ゼミ(文化演習Ⅰ)、4年次ゼミ(文化演習Ⅱ)を対象にアンケート・公開授業・ワークショップを行い、学生の学びに対する姿勢、本を読むことの重要性の認識、授業・学びに対するモチベーション、満足度などを調査する予定である。また、調査結果について意見交換することを通して、授業及びカリキュラムの改善につなげていきたい。また、コース再編(総合文化コース、地域文化コース)が行われた国際文化学科では、令和元年度より新カリキュラムが始動し、来年度からは3年次開講の「国際文化演習Ⅰ」も開始される。今後も、従来のカリキュラムを見直すとともに、ゼミを中心とした学びを促すためのカリキュラムの構築及び充実を目指す。また、本学部独自の事業である「むすびわざブックマラソン」プロジェクトとの協働により、本を読むこと(広く言えば学部における読書文化の醸成)とゼミでの学びを連動させる試みにも引き続き取り組んでいきたい。
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