3 『妙法蓮華経』口絵

年代不明。鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』の刊本の一種。口絵は序品・方便品に見える三場面「如来現瑞」「弥勒疑解請問文殊」「舎利弗三請如来説法」を一面に描く。このうち「如来現瑞(如来 瑞を現す)」は、仏陀が説法のおり六種の瑞祥を現したことを言うが、ここでは特に第六「放光瑞」、つまり眉間の白毫(びゃくごう)相から放たれた光が六道世界を遍く照らす場面を描く。展示品は、出版年代は不明だが、口絵に「程坊の余円良 刊を助く」とあり、巻一冒頭に「甌寧県慈恵里余墩坊の信善 余文忠、同室たる劉明の娘 抽資して彫刻す。」とあるように、在家信徒の喜捨浄財による民間出版の状況を伝える。

(佐々木 聡)

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