世界問題研究所・上海社会科学院/国際ワークショップ 「AIと社会」
開催場所 | 京都産業大学 上賀茂総合研究館 1階会議室 |
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開催日時 | 2024年11月2日(土)13:00~17:30 |
研究会概要
世界問題研究所では、11月2日(土)に、中国の上海社会科学院から研究者団をお迎えし、研究交流を兼ねた国際研究会を実施した。本学と上海社会科学院は2012年に交流協定を締結しており、それ以来、世界問題研究所は研究交流を続けてきた。今回の研究会はそうした交流の一環として実施された。
今回の研究会は、「AIと社会」を統一テーマとして掲げ、進展著しいAIの技術的発展に伴う社会的課題について、多様な専門領域から多角的な検討を行うことを目的とした。
研究会では、まず京都産業大学世界問題研究所 志賀 浄邦 教授の司会の下、京都産業大学世界問題研究所 岩本 誠吾 所長の「開会挨拶」と上海社会科学院国際問題研究所 劉 阿明 副所長の「挨拶と上海社会科学院近況の紹介」が行われた。その後、引き続いて各報告が行われた。


第1報告の「AI時代の若者社会:「80後」と「90後」の価値観対立と相互理解」(上海社会科学院社会学所 包 蕾萍 副所長)では、Y世代と呼ばれる中堅世代の価値観の変容を中心に、グローバル化とデジタル化の渦中にある現代中国の社会動向について興味深い分析が紹介された。
第2報告の「AIと法理論」(京都産業大学世界問題研究所 耳野 健二 教授)では、ドイツの近代的法理論において、人間と人間以外の存在者が理論的に区別されたことに注目しつつ(法人概念の確立)、AIの発展著しい現代社会におけるその意義が示唆された。
第3報告の「AI時代におけるスマート社会の構築」(上海社会科学院デジタル情報研究所 丁 波濤 副所長)では、AIの技術的発展がスマート社会の構築に向けて多大な利点をもたらすことを強調しつつ、同時にそれが安全保障、知的財産、ガバナンス等、多様な社会課題をもたらすことが論じられた。
第4報告の「都市コミュニティ・ガバナンスにおけるデジタル技術とイノベーション」(上海社会科学院政治と公共管理研究所 薛 澤林 副研究員)では、とくに上海市の事例を取り上げ、現代中国の都市における地域コミュニティ(都市居委会)のガバナンスにデジタル技術が与える影響について、詳細な分析が提供された。
第5報告の「AI・自律・法」(京都産業大学世界問題研究所 久保 秀雄 教授)では、AIの発展に伴う社会変動をタルコット・パーソンズの社会理論を踏まえて解釈しつつ、AIの発展が、一般に心配されるのとは異なり、個人の自律をむしろ促進することが強調された。
第6報告の「AI時代の新しい技術が東アジアの海洋パターンに与える影響」(上海社会科学院国際問題研究所 劉 阿明 副所長)では、東アジアの海洋に関する国際政治学的現状とその地政学的重要性が分析されたのち、これらに対するデジタル技術の発展の影響が論じられた。
第7報告の「AIと意思決定」(京都産業大学世界問題研究所 中谷 真憲 教授)では、意思決定を支援するための、AI等を活用したデジタルツールの紹介と分析が論じられ、これらを活用することが組織的意思決定における民主的公共性の確保につながることが強調された。
これらの各報告の後には、上海社会科学院国際問題研究所東アジア研究室主任 呉 澤林 副研究員によるコメントが提供された。丁寧なコメントをいただいたおかげで、各報告に対するより深い理解が可能となった。また、最後のパネルディスカッションでは、京都産業大学情報理工学部 荻野 晃大 教授も参加され、貴重なコメントを提供してくださった。

研究会では、終始にわたり、真摯でありながらも暖かく協力的な雰囲気を失うことなく、熱心に討論が行われ、充実した研究活動を実施することができた。参加してくださった全ての参加者に心からの御礼を申し上げる。
また、京都産業大学世界問題研究所 岑 智偉 教授には、本研究会の企画・調整から当日の通訳まで、多大なお力添えをいただいた。ここに記して深謝申し上げる。さらに、京都産業大学研究機構事務室の皆様ならびに世界問題研究所事務局の藤本興子氏には、当日までの準備を始めとして、様々に周到なサポートを提供していただいた。あわせて感謝申し上げる。
