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- 2016 Jul. Vol.73
映画は、映像・音楽・ストーリー(脚本)と、あらゆる表現が結集し、ひとつの作品になります。何かを表現したいと思った時に、その最高峰を目指すのは、私にとっては自然の流れでした。もちろん、不安もありました、というか不安だらけでしたよ。なぜなら、映画といえば有名なハリウッド映画を観る程度で、小さい頃からの夢でしたとか、映画を制作したいから勉強しました、というわけではなかったですからね。大学卒業後の進路を決める時、友人に「映画監督になりたい!」といったら猛反対されました。それでも、私の中では「表現したいこと」があったのです。それをカタチにする手段としての最高峰と考えた映画制作を選択したというだけで、それが初めての経験だとしても、挑戦することに躊躇はありませんでした。
何かを始める時は、みんな「ゼロ」なんです。
私は大学時代にフォークソング愛好会でアルトサックスを担当していましたが、それまで楽器を演奏したこともなかったですし、楽譜も読めませんでした。それでも、周りの仲間の協力と自分の強い意志があったからこそ、ライブを重ね、コンテストでいくつか賞をとるまでに上達できました。そのことを身をもって実感していたので、未知の世界であった映画監督を目指すことができたんだと思っています。
国内で映画監督デビューしたばかりですが、やはり目指すは「世界」ですね。でも、そのためには、まだまだ多くの壁があることも自分でわかっています。そして、「挑戦」というと大きな夢や目標に立ち向かっていくイメージがありますが、自分に足りないもの、できないことを一つひとつクリアしていき、その挑戦の積み重ねが大きな成功につながっていくのだと思っています。そしてもうひとつ。「挑戦すること」は自分一人の力で完結するように思いますが、実は、多くの人とのつながりや支えがあってこそ成し遂げられます。今回の映画はもちろん、大学時代の仲間、いろいろな出会いがあるからこそ、自分自身がさらなる目標に向かっていけることを忘れてはいけないと思っています。これからも失敗と成功を繰り返し、それでも前へ進んでいく。その先に、世界で通用する映画があると信じているので、今後も挑戦を続けていきたいですね。
「湯を沸かすほどの熱い愛」10月29日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
宮沢りえ、杉咲花/松坂桃李/オダギリジョー脚本・監督:中野量太
主題歌:きのこ帝国「愛のゆくえ」 配給:クロックワークス ©2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会