京都産業大学キャンパスマガジン サギタリウス 2013 Oct. vol.61
Voice of Sagittarius 京都産業大学の先生を徹底解剖!経営学部 大室 悦賀准教授 ソーシャル・マネジメント学科所属。研究テーマは、ソーシャル・ビジネスに伴うソーシャル・イノベーションのプロセス解明。担当講義は、公共経営学概論、CSRなど。
Voice1 安い服の向こうに、インドの綿花農園を想像してみる。
多くの人にとって、商品を購入する時、「安い」ということは魅力に感じられるでしょう。しかし、その商品の背景を見れば、必ずしも良いことばかりではないのです。例えば衣服の場合、原料の綿花の生産国であるインド 1では、多量の農薬に触れた生産者が深刻な健康被害を受けている現実があります。価格競争や効率重視の企業経営に伴うこのような弊害が世界各地で発生する今、企業経営のあり方が問い直されているのです。自社の利益だけを追求するのではなく、社会全体の利益を視野に入れた経営が求められています。行政やNPO、市民など、さまざまな関係者や団体と関わりながら、どう社会に貢献するのかという今後の企業経営のあり方を考えるのが、私の研究対象としているソーシャル・マネジメントです。
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解説:2012年には輸出量世界2位にもなった綿花の一大生産国。
Voice2 これからの企業と、これからの消費者のあり方とは?
社会貢献というと、企業の利益と相反するイメージがあるかもしれません。先程の衣服の例で言えば、無農薬栽培の方が生産コストが高くなるのは事実です。しかし、アメリカのパタゴニア 2など、社会的課題の解決に取り組みながら持続的に売り上げを確保している企業は多く存在しています。ビジネスを通じて社会に貢献するこのソーシャル・ビジネスの動きは、欧米をはじめ世界的に広がり、日本でもその取り組みが活発化しています。ですが、歴史を振り返れば、実は江戸時代から戦後の頃までの日本で、このソーシャル・ビジネスと類似する経営スタイルが実践されていたのです。世界全体が「責任ある社会」を目指すなかで、社会との共生を重視していた日本企業の精神は、今後の企業のあり方を探るうえで大きな鍵となると私は考えています。研究では、理論的なアプローチに加えて、行政やNPOと協力しながら、社会課題の解決を目指した実践も行っています。現在は、「社会に貢献する企業を選んで消費する」という意識を持った消費者を増やすことを目的に、京都市や京都の大学、高校などと協力した消費者向けのイベントを構想中です。このイベントは「オール京都」で行うことにこだわりましたが、百年企業が日本で二番目に多く集まる京都の力に、私は大きな期待感を抱いています。今も残る「三方良し 3」の精神。人と人の信頼関係を通じて、物事をどんどん動かしていくスピード感など、百年続く力の源が垣間見える企業力。さらに、町衆など住民自治の伝統を受け継ぐ地域の力。日本中で、これほど課題解決に向けた力を持つ地域はないと思えるほど、さまざまな要素が重なり合うこの京都で、歴史のつなぎ手として、未来のための取り組みを行う意義の大きさを実感しています。
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解説:農薬による土壌汚染などへの対策として、オーガニックコットン100%にこだわる姿勢が世界的に評価されている。
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解説:売り手、買い手、世間、の三者全てが満足するように商売を行う、という近江商人にルーツを持つ企業精神のこと。
Voice3 「未来へ続く力」の集まる京都で、学ぶということ。
学生には、「この京都で4年間に何を学ぶのか」を、強く意識してほしい。消費者としても、企業人としても、これからの若い世代にこそ、未来に何をつないでいくのかという視点が必要です。そのため授業では、まず映像から社会の現状と課題を知ることから始め、背景にある理論を学び、自ら問題提起することを目指します。学びを通じて、未来のために今何をすべきか、どう生きるべきかという自分なりの哲学を持ち、社会的課題の解決に貢献できる人へと成長してほしいですね。

大室先生のハマりもの!ギャラリーで、絵画を見るのが好きです。

絵画を見ていると、頭の中が整理される気分になりますね。世界をどう切り取るか、という視点は、研究で社会を見る時と通じるものがあると感じています。
今は時間がとれずあまり行けませんが、京都の画廊にもよく足を運びました。
特に好きなのは、西洋画と日本画が融合したような、明治から昭和頃の作品です。
つまり絵画にイノベーションが起こった時代です。

大室先生のハマりもの!ギャラリーで、絵画を見るのが好きです。

→先生の研究室に飾られているコレクションの一つ。ドアを開けるとすぐ、この絵に迎えられます!

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