【情報理工学部】【PRECIOUS PLASTIC KYOTOイベントDay2】 プラスチックの再利用を探求するワークショップ

2023.02.03

PRECIOUS PLASTICワークショップ前編に続き、デジタルファブリケーションを活用し、型作りから射出成形までを参加者自身で行い、PRECIOUS PLASTICの可能性をみんなで探求しました。
ワークショップには、FabLabを設立するために本学のファブスペースを視察されていた、ブータン王立大学の教職員がワークショップへ参加されました。

(学生ライター  情報理工学部 3年次 徳山 倖我)


ワークショップ概要動画
オープンソースのDIY射出成形機とデジタルファブリケーションで身の回りのプラスチックゴミを生まれ変わらせよう! - 京都産業大学ファブスペース × PRECIOUS PLASTIC KYOTO

プラスチック射出成形型の製作

まずは型作りを学生たちが取り組みました。本来の射出成形には金属型を用いますが、今回はデジタルファブリケーションを活用した型の製作に挑戦しました。
一般的な金属型は、レーザーカットや切削によって作られます。レーザーカットは比較的安価で依頼できますが、平面的な加工しかできません。切削は金属を削り出すことで、立体的な加工が可能ですが、加工料金は高価になります。これらは耐久・耐熱性に優れるため、ほとんどの射出成形には金属型が使われています。
金属を切削して作った型。松本氏曰く、とても高かったそう。
今回のワークショップでは、本学での学びを生かし、デジタルファブリケーションを活用した型作りに挑戦。ファブスペースのレーザーカッターと光造形3Dプリンターを利用しました。レーザーカッターは平面加工のため型の想像がし易く、データ作成も比較的簡単に行えます。また、レーザー加工は出来上がりも数秒〜数分と、非常に早く製作可能です。材料はアクリル板を使いました。デメリットとしては、金属のレーザー加工型と同じく平面の物しか作れないことや、薄くない物を作る場合は用意するアクリル型が3枚必要になることが挙げられます。

レーザーカッターで作った型。彫刻深度を深くして、その隙間に射出成形します。

3Dプリンターで作る型は、3DCADで型のモデルを設計してから造形します。メリットは型の形状の自由度が高いという点です。レーザーや切削よりも複雑な型をつくることが可能です。また、こちらもデータを修正し、試作・改善が自分でできることもメリットになります。一方、デメリットは製作に時間がかかる事(金属加工を依頼するよりは早い)と、使用できる造形方式が限られることです。ファブスペースには熱溶解積層方式と光造形方式の2種類の3Dプリンターが置かれています。熱溶解積層方式は名前の通り、プラスチックを熱で溶かし、ソフトクリームの方に積層して造形するため、射出成形型の様な高熱を伴うものには向きません。一方で、光造形方式はレジンと呼ばれる樹脂を紫外線で硬化して造形します。レジンは紫外線や衝撃には弱いですが、熱では溶けないため、今回の射出成形型には適します。

3Dプリンター(光造形)で作った型。サポート材をとって使います。
既に型を用意していた学生もいたので、先に射出成形を試しましたが、空気穴の大きさや一部設計の強度が弱く、圧がかかったときに型が割れてしまうこともありました。しかし、その場ですぐに修正し、その日中に改善版を試して成功していました。特にレーザーカッターは製作が早いため、すぐに修正できました。「とにかく作って改善して試すことが出来る」デジタルファブリケーションの利点が生かされました。

学生たちの作品紹介

高木さん(先端情報学研究科 博士前期課程1年次)

循環型社会がテーマだったので、球や円柱のように一定の動きで転がる物を考えました。しかし、球や円柱だと面白くないので、球や円柱以外で一定の動きで転がりながら前に進む形の物を作ってみました。これをアクセサリーとして身に付けることで、常に循環型社会が意識できるという利用シーンを想定して作りました。後は、PRECIOUS PLASTICは色がキレイなので、レーザーでカットして、ジグソーパズルとかにすればオシャレかなと思い作ってみました。

水谷さん(情報理工学部2年次)

プラスチックがよく使われている製品として、玩具を思い浮かべました。玩具に飽きた後、捨ててしまうのではなく、PRECIOUS PLASTICで新しい玩具に生まれ変わらせられると面白いなと思い、今回はテトリスパズルを作りました。ちなみに、型はアクリル板をレーザー加工して作りました。

辻永さん(先端情報学研究科 博士前期課程1年次)

パドルを作りました。パドルと言っても、船に使うような大きいものではなく、手につけるものです。用途としては水泳トレーニングで、水をかぐ補助をしてくれるものになります。海ゴミを集めて、PRECIOUS PLASTICでパドルを作って泳ぐことができます(笑)

多喜さん(情報理工学部4年次)

キーホルダーを作りました。PRECIOUS PLASTICらしいきれいなマーブルがでて、良いデザインになりました。また、徳山くんと一緒にキーホルダーへの彫刻を試みました。

徳山さん(情報理工学部3年次)

PRECIOUS PLASTIC製キーホルダーへの彫刻を試みましたが、私が持っているハンディレーザーだと出力が弱く、上手く彫刻ができませんでした。ファブスペースにある大きいレーザーなら何とか彫刻することができました。考察としては、線が太く、シンプルなものじゃないと上手く彫刻はできないと思います。レーザーでプラスチックを溶かすので、細かいデザインだと潰れてしまいます。対策案として、製品にマスキングテープを貼ってからレーザー彫刻すると、部分的にマステがなくなります。その部分に塗料を塗って、乾いてからマステを剥がせば、きれいな仕上がりになると思います。

宮崎さん(情報理工学部4年次)

私が作ったのはギターピックです。ギターをやっていることも理由ですが、PRECIOUS PLASTICのようにキレイなものであればキーホルダーにもなるかなと思っています。厚みによって音や弾きやすさが変わるので、2mm、1mm、0.8mm、0.6mmの4種類を作りました。実際に弾いてみると、音が全然違います。

古川さん(情報理工学部4年次)

海洋プラスチックゴミをまた海に使えたら面白いかなと思い、ルアーを作りました。実際に海ゴミを拾ってきて、今日砕いて射出成形しました。結構厚みがあるため、離型がとても大変でした。今回は角のついたデザインでしたが、もう少しラウンドを付けることと、シリコンスプレーをしっかり付けることで離型しやすくなると思います。また、型は3Dプリンターで作ったのですが、耐熱性の素材を使った所、そうでない型よりもきれいに仕上がりました。

香川さん(情報理工学部4年次)

将棋のコマを作りました。型はアクリルをレーザーカットして作ったのですが、1回目は射出成形の圧力で割れてしまいました。空気口の方向を放射線状にして改善を図ったところ、うまく出力ができました。この将棋の特徴として、それぞれのコマが進む方向に小さい突起が付いています。これによって、将棋が初めての方や目の見えない方でも楽しむことができます。あと、ブータン王立大学のロゴの型も作ったのでよければ持ち帰ってください。

高見さん(ファブスペーススタッフ)

レーザーカッターならではの物を作りたかったので、いろいろなパターンの柄をアクリル型に彫刻して作ってみました。色によってもかなり違いますが、シンプルな形でも柄があるだけで違う表情を見られるので、また機会があれば試してみたいです。

まとめ

2日間にわたり、循環型社会と環境教育、そしてPRECIOUS PLASTICについて深く学べたワークショップになりました。PlaRial | PRECIOUS PLASTIC KYOTOの松本氏が、1人では思いつかなかったような作品が学生たちによって沢山生み出されました。ここから更に、PRECIOUS PLASTICが広まり、プラスチック問題に対する意識と行動の促進が加速されることを祈っております。

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