見えないものを見る感動を—
最新鋭クライオ電子顕微鏡「Glacios 2」導入へ

2025.05.15

~巨視×微視、“見えないものを見る感動”を京都産業大学から~

 本学は2025年(令和7年)秋に、Thermo Fisher Scientific社製の最新鋭クライオ電子顕微鏡「Glacios™ 2 Cryo-TEM」を導入いたします。※1
クライオ電子顕微鏡は、タンパク質やウイルスなどの生体分子を極低温で凍結し、高解像度で観察できる最先端の顕微鏡で、医薬品開発や感染症対策に不可欠な技術として世界的に注目されています。
クライオ電子顕微鏡を所有する大学※2は、西日本の私立大学としては初めてとなります。本装置の稼働開始を、創立60周年を迎える本学の新時代の幕開けと位置づけ、生命科学分野における研究・教育・産学連携のさらなる高度化を目指します。
※1 導入時期は予定
※2 本学調べ(2025年4月時点)

タンパク質動態研究所がリードする構造解析研究

 本装置の活用において中心的な役割を担うのが、本学の「タンパク質動態研究所(所長:生命科学部 遠藤 斗志也 教授)」です。
同研究所には、遠藤教授をはじめ、生命現象の本質に迫るタンパク質の構造解析において、国内外で高く評価される研究者が集結しています。
クライオ電子顕微鏡を用いた研究では、2019年以降、Nature、Scienceおよびその姉妹誌に掲載された関連論文数は私立大学で最多(10報)を記録(PubMed「cryoEM Japan」検索、last authorで集計)するなど、構造生物学分野において、本学は私立大学トップの実績を誇ります。
現在、研究所所属の6名の教員のうち4名が本装置を用いた研究を推進しています。本装置の導入により、本学の研究力・国際発信力のさらなる強化が期待されます。

学部教育にも活用 体験授業の導入を視野に教育改革を構想

 本学では、クライオ電子顕微鏡の導入を契機として、学部教育における教育改革を進めます。全国的にも例がない、学部段階での電子顕微鏡解析の体験授業(ハンズオン)の実施を視野に入れており、生命科学部3年次の選択科目「細胞構造生物学」において、装置を活用した実践的な授業の導入(2026年度より)を検討しています。
また、学部1・2年次の必修科目では、構造科学の視点を取り入れたカリキュラムへと転換を図るとともに、大学院科目「タンパク質科学特論」などとの接続を通じて、学部—大学院教育の一貫性・専門性の強化をめざします。
最先端の装置を学生自らが体験することにより、「見えないものを見る」ことの感動を実感しながら学びを深める学修環境の構築を進めます。

クライオ電子顕微鏡を軸に産学連携を推進、学びと研究の連携を広げる

 クライオ電子顕微鏡の導入により、教育・研究体制のさらなる強化に加え、社会とのつながりを意識した展開にも取り組みます。
同装置の導入に対しては、近隣大学や、製薬やバイオテクノロジー分野の地域企業からも関心が寄せられており、大学間・産学共同研究、インターンシップや教育プログラムを通じた人材育成の機会創出にもつながることが期待されます。
また、本学「感染症分子研究センター」が有するBSL3(バイオセーフティレベル3)対応の感染実験施設を活かし、本学がこれまで培ってきた鳥インフルエンザなどの感染症対策の研究、高度な病原体研究にも対応できる体制を整えます。さらに、「植物科学研究センター」とも連携し、植物科学の基礎研究から農学的応用に至るまで、クライオ電子顕微鏡による構造解析技術を軸とした学内の研究基盤を広げていく方針です。

巨視×微視、“見えないものを見る感動”を京都産業大学から

 本学には、私立大学として最大級の反射望遠鏡を有する「神山天文台」があり、神山宇宙科学研究所を拠点に、宇宙の謎に迫る研究と教育に取り組んできました。
これを巨視(マクロ)の視点とするならば、一方の微視(ミクロ)の分野でも、生命をかたちづくる分子・構造の世界に目を向け、タンパク質研究を中心に探究を進め実績を積み重ねてきました。
クライオ電子顕微鏡の導入を契機に、「生命の構造科学」研究を、本学の大きな柱の一つとし、学術的な発信力と社会との繋がりの強化を一層進めてまいります。
巨視と微視、両方の視座をあわせ持つ大学として、京都から世界へ、新たな挑戦を続けていきます。

タンパク質動態研究所 遠藤 斗志也 所長 コメント

 クライオ電子顕微鏡は、これまで見ることができなかったタンパク質などの微細な構造を、壊さずにそのままの姿でとらえることができる、非常に画期的な装置です。これまでは、他大学や研究機関に出向いて使用していましたが、本学にこの装置が導入されることで、最先端の研究を自分たちの拠点で、継続的かつ自由に進められるようになります。これは、研究のスピードも質も大きく変える、本当に大きな一歩です。今後は、より複雑なタンパク質の構造や働きが明らかになり、生命のしくみや病気の原因に迫る研究が、さらに進展していくでしょう。学生にとっても、この装置に触れる経験が、将来の研究者としての道を切りひらくきっかけになればと願っています。ここから、たくさんの新しい発見が生まれていくことを心から楽しみにしています。 
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