想いをつなぐM&A!事業承継から始まる新たな起業の形態についてゲストスピーカー講演

2025.02.26

2025年1月16日(木)、経営学部の森口 文博助教が担当する『アントレプレナーシップと戦略』の講義において、株式会社ことぶきの代表取締役社長・竹内 健太氏がゲストスピーカーとして講演を行いました。講演のテーマは「起業の一手段としての事業承継M&A」でした。株式会社ことぶきは、竹内氏が2024年8月にM&Aにより事業承継をした会社で、訪問看護事業を営んでいます。竹内氏はなぜこの企業を買収し、事業承継を行ったのか。事業承継時の意思決定と自身の想いについて語りました。学生は彼の想いをどのように感じ取ったのでしょうか。

事業承継のリアルと意思決定

日本の企業の99%は中小企業であり、その後継者不足の問題が深刻になっています。竹内氏は、「事業承継問題」の現状について、日本企業の社長の平均年齢が60.5歳になっており、33年連続で上昇している現実を学生に伝えました。学生は、この60.5歳という数字が平均値であることや、竹内氏自身が社長というカテゴリーでは比較的若手にあたることを具体的な数字を通じて実感し、驚いている様子でした。
こうした事業承継にまつわる現状を話した後、竹内氏は2024年8月に株式会社ことぶきをM&Aを通じて事業承継を行った際の具体的なプロセスやその際のエピソードを語りました。ことぶきの創業者である内海壽子氏は、看護師歴50年の大ベテランで、訪問看護に対する情熱をもとに68歳で起業しましたが、経営の諸課題に悩んでいる状況でした。その中で、過去に事業承継M&Aのプラットフォームサービスを起ち上げた経験のある竹内氏が、M&A仲介会社を経由して、内海氏との接点を得ました。竹内氏は内海氏との面談を経て、内海氏の訪問看護に対する理念に感銘を受け、わずか3日でM&Aを通じた事業承継を意思決定し、3ヵ月で正式な手続きを終えたスピーディなエピソードを学生に話しました。竹内氏は、事業承継後も内海氏と連携し、現場とのコミュニケーションを大切にしながら、経営面での立て直しに奮闘しているリアルな語りに、学生たちは真剣に聞き入り、メモを取っていました。

新たな挑戦には、コミットを

また、竹内氏は事業承継により経営陣が交代することに関連する話として、過去のキャリアの中で株式会社ミクシィの再建に経営企画室長として携わったエピソードも共有してくれました。竹内氏は、同社が営んでいたSNS事業が低迷する中で、新たなゲーム事業(モンスターストライク)のマスプロモーションを、大型の資金調達を通じて成功させ、業績のV字回復に貢献した経歴があります。

経営者が交代することは、会社の従業員にとって不安なこともあり、時にさまざまな風当たりを受けることもあります。竹内氏は、こうした際に自身のコミットメント(覚悟)を示すことが重要であることを学生に語りました。当時、再建に向けて、「来期に連結PLを黒字化できなければ、責任を取って身を引く(Showing Commitment: Success or Harakiri)」との強いコミットメントを示し、なみなみならぬ想いでミクシィ社の再建にチャレンジした際のエピソードに、学生は魅了されていました。

やりたいことは言い続けること

竹内氏の講演後、学生から「竹内さんはさまざまな経歴があり、たくさんのことを成し遂げてこられました。やりたいことが沢山ある場合、どのように実現すればよいのか?」という質問が出ました。これに対して、竹内氏は「やりたいことが沢山あることは幸せなことです。やりたいことはぜひ言葉に出し続けてください。やりたいことが直ちに全て実現できなくても、時間が経ってから実現できることも多々あります。やりたいことを言い続けてきたことで、私も時間はかかりましたが、少しずつ実現できてきました。その時々で取り組んでいることを通じて自分に負荷をかけることで、経験が積み重なり、自らのキャパシティが広がっていきます」と回答し、若いうちにチャレンジするメリットを語ってくれました。

その後も、「家業をいつか承継したい」「いつか起業したい」という学生からの質問が相次ぎ、竹内氏の熱くユーモアあふれる講演はあっという間に終わりました。講義時間内では質問に答えきれず、講義後も5人以上の学生が竹内氏に熱心に質問を行い、一人一人の質問に熱心に向き合い、京産大生にエールを送る姿が印象的でした。

学生からの感想

講義後、学生からは以下のような感想が寄せられました。

「ぼんやりと「将来起業したい」と考えていたけれど、自分の中で「M&A」という新しい選択肢が生まれた気がします」

「M&Aはむりやりお金で買収されるといったイメージが強かったのですが、今回のお話を聞いて、人々の経営の助けになっていることを知りました」

「M&Aによる事業承継は単なる企業売買ではなく、みんなにメリットのある円滑なバトンタッチだと思いました」

アントレプレナー育成プログラム

本学のアントレプレナー育成プログラムでは、文系・理系10学部の全ての学生がワンキャンパスで学べる起業家育成プログラムを2023年度より正課教育として導入し、アントレプレナーシップに関する基礎・応用の学びの場を提供しています。ゲストスピーカー講演もあり、アントレプレナーシップに関するリアルな学びを得ることができます。

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