理学研究科卒業生の國友有与志さんと中道晶香教授、原哲也名誉教授が地球や太陽の磁極の反転に関する理論研究の論文を出版

2021.07.15

研究成果

理学研究科物理学専攻卒業生の國友有与志さんと中道晶香教授(専門:宇宙論、理論天文学)、原哲也名誉教授との共同研究で、地球や太陽の磁極の反転の周期性を記述する結合スピン・モデルの時間発展に関する理論研究に新しい進展があったと発表しました。この研究成果は、日本物理学会発行の学術誌Progress of Theoretical and Experimental Physicsの論文として出版されました。

掲載論文

Title : Coupled macro-spin model with two variables for polarity reversals in the Earth and the Sun
Authors : Ariyoshi Kunitomo, Akika Nakamichi, and Tetsuya Hara
Progress of Theoretical and Experimental Physics, ptab062 (2021)
DOI: doi.org/10.1093/ptep/ptab062
URL: https://academic.oup.com/ptep/advance-article/doi/10.1093/ptep/ptab062/6294412

背景

星内部にはその自転によって引き起こされる内部対流があり、電流が巻きつくことで磁束がつくられると考えられます。その磁束を1本の磁気モーメント(マクロスピンと呼ぶ)として扱い、複数のスピンが束となった惑星磁場のモデルが考えられました。スピン間の結合を仮定した理論模型を結合マクロスピン・モデルと呼びます[文献1: Nakamichi et al., Mon. Not. R. Astron. Soc. 423, 2977 (2012) ]。図1の矢印はこのマクロスピンを表します。
過去の研究から地球や太陽の磁極は時代とともに反転することが観測から判明していました。結合マクロスピン・モデルはこのような星の磁極の反転を再現できる有望なモデルとして提案され、地磁気の不規則な反転や太陽の規則的な反転を再現することに成功しました[文献1]。また磁極が自転軸のまわりをふらつく様子も再現できました(図2)。しかしながら、結合マクロスピン・モデルの磁極の反転の様子がどのような条件で生じているか系統的な理解が不十分なままでした。
図1:結合マクロスピンモデルの概念図。自転軸のまわりの太線の矢印がマクロスピンを表しています。
図2:自転軸まわりの磁極のふらつきの投影図。

研究概要

磁極反転の様子が変わる上で初期値の選び方が非常に大事なカオス系と予想されていましたが、今回の系統的な数値シミュレーションから全エネルギーの値が時間発展を支配していることが判明しました。また、各パラメーターの同じ値を用いて2次元スピンも3次元スピンも同じように反転することや長時間シミュレーションを続ければいつかは反転が起きるということもわかりました。 

本論文は理学研究科物理学専攻の大学院教育から生まれた研究成果の論文です。本学理学部・理学研究科は、伝統的に宇宙物理学・天文学の教育を特徴としてきました。大学院教育の中から新たな研究成果を生み出すとともに、宇宙関連企業や教育現場、科学館等に人材を輩出しています。物理学専攻卒業生の國友有与志さん(写真の右)は現在、仙台市天文台の学芸員として活躍されています。
写真:右から國友有与志さん、原哲也名誉教授、中道晶香教授。
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