理学部物理科学科 伊藤 豊教授らの共同研究グループが銅酸化物Hg1212の銅の超微細結合定数に関する論文を出版

2018.08.07

研究成果

理学部物理科学科の伊藤豊教授は、産業技術総合研究所の町敬人研究員と芝浦工業大学の山本文子教授との共同研究で、単位胞内に銅と酸素の2次元正方格子を2枚もつ高温超伝導体HgBa2CaCu2O6+d(Hg1212)の銅核の超微細結合定数の組成変化に関する研究成果を Journal of Physics: Conference Series の論文として出版しました。この論文は第30回超電導国際シンポジウム(30th International Symposium on Superconductivity:ISS2017)において発表された研究成果です。 

掲載論文

Title:Cu hyperfine coupling constants in HgBa2CaCu2O6+d  
邦題:HgBa2CaCu2O6+dの銅の超微細結合定数 
Authors:Y. Itoh, T. Machi, A. Yamamoto  
著者:伊藤 豊,町 敬人,山本 文子
J. Phys.:Conf. Series 1054 (2018) 012006/1-8
DOI:10.1088/1742-6596/1054/1/01200
URL:http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1742-6596/1054/1/012006

背景

銅酸化物高温超伝導体Hg1212は結晶の単位胞内にCuO2平面を2枚持つ系の中で最高の転移温度 Tc = 127 Kをもつ物質で、銅イオンの不対電子の軌道波動関数と酸素の軌道の結合からなる平面構造(図参照)が電気伝導を担っており、どのような量子力学的な軌道状態の舞台設定が超伝導を生み出しているのか研究が続けられています。核磁気共鳴法によって測定される物理量には銅核からみた不対電子の波動関数のスピン分極の大きさが反映されることがわかっていましたが、これまで実測値に基づく確定的な評価があまり多くされてきませんでした。

研究概要

今回、Hg1212の銅核のスピンナイトシフトと核スピン格子緩和時間の異方性データから超微細結合定数の異方性の値が実験的に一意に決定できることを理論的に示し、実際の測定結果からその値の組成変化を評価することに成功しました。これまで多くの研究論文でアプリオリに仮定されていた値が排除され、実験的な測定値に置き換わることになりました。あまり物質群によって変わらないとされてきた結合定数の成分が、ホール濃度によって大きく変わることがわかりました。
銅イオンの不対電子のいるd(x2-y2)軌道の波動関数と移行電子により分極する内殻の4s軌道と酸素イオンを描いたもの。
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