2024(令和6)年度 過去の研究会詳細

2024年(令和6)年度 第5回研究会

日時 2024年12月25日(水)
14:00〜16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

伊ヶ崎 泰枝(外国語学部准教授)
シモーヌ・ド・ボーヴォワール作品と演劇界

フランスの作家・フェミニストであるボーヴォワールの作品において演劇界が果たす役割は看過できない。『招かれた女』をはじめとする小説においては、親交のあったパリ演劇界の人々に着想を得て多くの作中人物を創出した。エッセイ『第二の性』では、演劇に携わる女性の考察を通して自由、ナルシシズム、身体と老いといったテーマを論じた。さらに一連の回想録においても演劇人たちの活動に多くのページを割き、彼らの状況に対する選択と責任の問題を喚起している。本発表では、サルトルの小説作品との比較も交えながら、演劇界がボーヴォワール作品に織り込まれていく経緯を検証し、新たな解釈を試みる。

北上 光志(ことばの科学研究センター員・外国語学部教授)
アントン・パーブロヴィッチ・チェーホフの全作品における動詞結合について
~チェーホフ没後120 周年によせて~

「桜の園」「小犬を連れた貴婦人」など300 を超える作品を世に出したロシアの文豪A.P.チェーホフが亡くなって、今年で120 年になる。これを記念してチェーホフの全作品で用いられている動詞結合(動詞と不定詞の結合)(総数11822 例)を分析する。チェーホフ作品における動詞結合を「結合度、語彙、アスペクト、極性」の観点から考察し、言語学的意義を明らかにする。

2024年(令和6)年度 第4回研究会

日時 2024年11月27日(水)
14:00〜16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

木寺 律子(外国語学部准教授)
『カラマーゾフの兄弟』におけるサクランボのジャム

F.M.ドストエフスキー(1821-1881)の晩年の大作長編小説『カラマーゾフの兄弟』(1880) は大変有名な作品であるが、作品の細部には、読者に未だ気づかれないままであった様々な問題が、多く隠れている。アリョーシャ、イヴァン、ゾシマ長老と関わるサクランボのジャムもその一つである。この作品にほかにも料理や食べ物の描写が多く登場するが、これをキリスト教の精進や世俗の問題によって解釈しつつ、一見深刻で深遠に感じられるドストエフスキーの思想のコミカルな側面にも言及する。

島 憲男(ことばの科学研究センター員・外国語学部教授)
ドイツ語「オノマトペ」表現の諸相:個別言語の視点と言語類型論の視点からの考察

発表者はこれまで宮沢賢治作品のドイツ語訳を中心に日本語を原典とする作品に生起する擬音語・擬態語表現がどのようにドイツ語に翻訳されているかを分析してきた。本発表では、Talmy(1985, 2000, 2007), 乙政 (2009), Malchukov/Moravcsik (2024) 等の研究成果を援用し文中に生起したドイツ語の様々なオノマトペ表現がどのように分析できるかを検討していきたい。

シンポジウム「ことばの歴史を復元する」

日時 2024年10月12日(土)
14:00〜17:00
場所 図書館ナレッジコモンズ

発表者及びテーマ

14:00

開会の辞 吉田和彦(京都産業大学ことばの科学研究センター長)

14:05~ 15:00

梶茂樹(京都産業大学元客員教授、京都大学名誉教授)
フィールドからのアプローチ:
ウガンダ西部のバンツー系諸語の声調変化の研究

15:05~16:00

吉田和彦(京都産業大学客員教授)
文献からのアプローチ:
-ae-/-ai-という不規則な接尾辞を持つヒッタイト語動詞の起源

16:15~16:35

コメンテーター:小林正人(東京大学教授)

16:35~16:55

質疑応答

17:00

閉会

2024年(令和6)年度 第3回研究会

日時 2024年7月24日(水)
14:00〜16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

井上 俊博(外国語学部准教授)
「マルロー『王道』とインドシナ山地民」

アンドレ・マルローが1930 年に発表した小説『王道』は、仏領インドシナとシャムを舞台とする冒険小説である。本作の背景にはインドシナ半島に侵出し植民地支配を行うフランス・イギリスと、これらの勢力に挟撃されるシャムというインドシナ半島が経験した歴史的展開が存在している。また、本作中には数多くのインドシナ山地民が登場し、物語展開のキーとなっている。本発表では、作中描き出されたこの山地民達の存在に着目し、英仏のインドシナ半島侵出がこの地にもたらした歴史的展開に対するマルローの視点を考察していく。

鈴木 孝明(ことばの科学研究センター研究員・外国語学部教授)
「プラトンの問題と階層構造の獲得-日本語の数量詞遊離現象を中心に鈴-」

言語獲得におけるプラトンの問題をとりあげる。この問題に取り組む多くの研究がインプットの貧弱さに関する実証的データを提示することなく、アウトプット(個別言語の文法)の複雑さに焦点を当ててきた。本発表では日本語の数量詞遊離現象に見られる主語と目的語の非対称性を階層構造に依存した規則ととらえ、幼児がこれに関する言語知識を有すること、さらにその知識はインプットから帰納的に導き出すことが困難であることを示す。

2024年(令和6)年度 第2回研究会

日時 2024(令和6)年6月22日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

菱岡 憲司(山口県立大学国際文化学部教授)
「小津久足の文体—今古和漢雅俗一致—」

江戸時代後期を生きた小津久足(おづ・ひさたり、1804-1858、号桂窓など)は、伊勢松坂の裕福な商人、歌人・紀行文作家、西荘文庫を成した蔵書家、馬琴と作品の評答をやりとりした友人など、多彩な顔を持ち、生涯に和歌は 7 万首、紀行文は 46 点を残している。そうした多面的な久足の文事を紹介しつつ、とくに自己表現の器とした詠歌と紀行文執筆について、歌論と紀行文論を参照して、久足が標榜した「今古和漢雅俗一致」という文体を確認し、時代に即した表現を模索した様子をうかがいたい。

杉山 豐(ことばの科學硏究センター員・外國語學部准敎授)
「—『蒙山法語』諺解への檢討を通して—」

『蒙山和尙法語略錄(諺解)』(1459~1461 成書か)は、南宋末元初の臨濟宗楊岐派の禪僧、蒙山德異(1231~?)の法語集に、朝鮮語による譯解を施した文獻であり、朝鮮初の學僧、慧覺尊者信眉(1405?~1480?)の手になる。先行硏究の夙に指摘する如く、該書には、白話への沒理解に基づくと思はれる誤譯が隨處に見られる。本發表では、これまで誤譯と解せられてきた一事例について、‘誤譯’の現れる文脈に注目して再檢討する。さうして、これが信眉が意を以て下した、‘確信犯的’措辭であつた可能性を示す。加へて、近代以前の朝鮮において流布の痕跡の認められない『無門關』との影響關係についても、問題を提起する。

2024年(令和6)年度 第1回研究会

日時 2024(令和6)年5月22日(水)
14:00~16:00
場所 4号館2階 総合学術研究所

発表者及びテーマ

森博達(ことばの科学研究センター員・京都産業大学名誉教授)
「仏教漢文から見た記紀の交渉」

書紀の仏典表現はβ群とα群では種類が異なる。β群の仏典表現は古事記にも数多く見つかる。一方、α群の仏典表現は714 年以後に加筆された箇所に現れるが、これらは古事記ではほぼ見られない。太田善麿は記序の幾つかの用語や用字が書紀の伊・イ(巻1~13・22~23)に偏在することから「伊・イ太安万侶参与説」を提唱した。私見では、安万侶は書紀の草稿を見て、712 年に古事記を撰上した。その後、α 群に仏典表現を含む記事が加筆された。かくて古事記にはα 群ではなくβ群の仏典表現が用いられることになった。

高峰 香織(UiT ノルウエー北極大学工学科学技術学部准教授)
「ノルウェー語の二つの公用書き言葉 言語政策の目的、現状と課題」

世界には複数の公用語を持つ多言語国家が多くありますが、一つの言語に対し複数の「公用書き言葉」がある国は珍しいと思われます。ノルウエーはその稀有な国であり、公用語ノルウエー語には正書法で確立されたブークモールとニューノシュクという二つの「公用書き言葉」があります。人口約550万人の小国ノルウェーにおいて、なぜ二つの公用ノルウエー語書き言葉が定められているのでしょうか。このトークでは、ブークモールとニューノシュクを確立した言語政策を歴史的観点から考察し、現状と課題を概観します。

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