2023年度「若泉敬記念基金」懸賞論文表彰式開催

2024.03.25

京都産業大学世界問題研究所主催の2023年度「若泉敬記念基金」懸賞論文表彰式が、2024年3月13日(水)にオンライン方式で開催されました。世界問題研究所の所員や関係者、懸賞論文の入賞者など15名が参加しました。

「若泉敬記念基金」懸賞論文は、長年にわたって世界問題研究所所長を務めた故 若泉 敬 教授の寄付をもとに設置された「若泉敬記念基金」の活動の一環として実施されています。本学の学生を対象に「今日の世界問題に関するテーマを各自で設定し、副題をつけて論じる」という趣旨で論文を募集したところ、第21回目にあたる本年度は1年次生から4年次生まで過去最多の21篇の応募作があり、二席2篇・佳作7篇の計9篇が入賞しました(一席は該当作なし)。

表彰式では世界問題研究所所員の耳野 健二 現代社会学部教授が司会進行を務めるなか、所長の岩本 誠吾 法学部教授から「今回応募された懸賞論文は、まさに、若泉先生が推奨されています『読み、書き、考える』を実践した成果物であり、若泉先生のお言葉を借りれば、『言語能力を涵養し、想像力と創造性を開発し、精神的貧困を克服する』ことにも繋がります」「学生の皆さんは、懸賞論文に応募するために一生懸命に勉強されたことと思います。この素晴らしい経験を忘れることなく、引き続き、深く思考をめぐらし文化創造の実践をこれからも続けていくことを祈念」しています、と所長挨拶がありました。そして、岩本所長から参加した入賞者一人一人に賞状が授与されました。

その後、入賞作の講評に移りました。まず岩本所長から「今回は、1年生の学生さんが、それも2名応募されました。また、2年連続で応募された学生さんもいらっしゃいます。主催者側として、果敢に挑戦してくれた多くの学生さんの熱意に感謝するとともに、高く評価したいと思います」「どれ一つ同じテーマはなく、どれも非常に重大でかつ多彩なものでした。将来を生きる現代の学生さんは、どんな問題が気になっているのか、未来社会を考える上で非常に興味深く感じました。今後とも、多様な世界問題に興味関心を持ち続けて、その解決方法を考え続けてほしいと痛感しました」との全体講評がありました。

つづいて、二席の2篇について、所員の久保 秀雄 法学部教授から、論文の内容の紹介とともに、どのような点が高い評価を得たのか、詳しい講評がありました。また、佳作の7篇については、所員の中谷 真憲 法学部教授から、優れた点とさらなる研鑽を期待する点について、個別に講評が行われました。

そして、来賓である世界問題研究会INC(インターネットクラブ)幹事の木野 正博氏から、1966年に創立され2001年まで存続した学生団体である世界問題研究会の活動内容等についてご紹介があるとともに、「卒業後、商社に勤務し、石油・エネルギー部門での業務に従事してきましたが、学生時代に学んだ世界情勢を視る目や、国際感覚というものが仕事に大いに役立ってきました」「培った問題意識やロジカルな分析・研究のアプローチ・手法は、これからの皆さんの人世の中で、きっと役立つものとなってくると思います」と祝辞を頂戴しました。

講評の後には、入賞者一人一人から執筆時の苦労や受賞の喜びなどが語られました。入賞者からは「ゼミの先生や同級生がアドバイスをしてくれたおかげで考えが深まった」「あまり注目されていないテーマなので独自性を出すことができた。これからも研究を深めたい」「インタビューや実地調査で多くの人にご協力して頂いたおかげで研究を進められたので、感謝したい」「どうまとめるか苦労したが、何度も書き直して、ようやく仕上げることができた」「今回の研究を発展させて卒業論文を執筆する予定なので、来年も挑戦したい」「研究した内容を4月からの就職先でも活かしていきたい」「自分の大学生活の集大成になった」「ドイツ語でインタビューを実施するのが難しかったが、自分ができる分かりやすいドイツ語で実施したのでインタビュイーにも理解しやすく話をしてもらうことができた」といった声などが、寄せられました。

最後に、来賓として参加した鍵本 優 現代社会学部教授から、「ゼミで進めてきた佐藤 凜大郎さんの研究が評価されて、私どもも大変喜んでおります。佐藤さんは随分苦労しながら内容を詰めていかれましたが、学生時代ならではの経験で、ゼミで一つ一つコメントをもらって吟味しながら論文の執筆を進めることができていました」とのコメントを頂戴しました。

二席

  • 現代社会学部現代社会学科4年次生 佐藤 凜大郎
    「震災復興過程についての全国向けマスメディアの姿勢・方法の研究——『寄り添う報道』の必要性」
  • 国際関係学部・国際関係学科4年次生 中澤 柚葉
    「持続可能な観光業の実現—評価の為の指標の提案—」

佳作

  • 国際関係学部国際関係学科4年次生 池田 遼真
    「日本の再生可能エネルギー普及とその市場構造に関する研究:送配電市場における癒着と出力抑制ルールを事例に」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 井村 安里
    「森林減少対策としての貧困撲滅 インドネシアにおけるREDD+成功に向けて」
  • 国際関係学部国際関係学科4年次生 佐藤 美宇
    「グローバル課題と『食』~環境、福祉、多様性から考える~」
  • 法学部法政策学科4年次生 鹿野 海人
    「今日の世界問題 国家間紛争による地域利益損失を回避するための自治体による予防外交についての考察」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 南 優希
    「使い捨てプラスチックが海洋に与える影響~循環型社会の実現に向けたプライベート・ガバナンス協働の在り方~」
  • 国際関係学部国際関係学科4年次生 山口 和華
    「開発援助とグローバル・ガバナンス:誰のためのグローバル・ガバナンスなのか?」
  • 国際関係学部国際関係学科4年次生 吉野 百香
    「ドイツの初等教育科目Sachkundeからみる環境教育の在り方」

その他の応募作

  • 現代社会学部現代社会学科4年次生 阿部 奏音
    「『お口の健康』から健康寿命へ~ベトナムにおける口腔衛生への意識~」
  • 文化学部国際文化学科1年次生 石井 陽也
    「今日の世界問題 精神障害による自殺対策をするにはどうするべきか——精神科医と宗教家の協力」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 礒谷 美乃加
    「脱炭素社会におけるカーボンプライシングの有効性について~EUの政策を中心に~」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 岩﨑 泰輝
    「北アイルランド紛争から見るテロリズムと民族問題について」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 奥村 力斗
    「ウクライナ戦争下における教育の後退—『人間の安全保障』の観点からの考察—」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 澤岻 杏吏
    「福祉国家フィンランドにみる持続可能な社会の構築に向けた取り組み—フィンランドがSDGsの各分野を達成しつつある社会・経済的要因は何か?—」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 谷口 明泉
    「日本において地熱発電が普及するための解決しなければならない課題は何か?」
  • 現代社会学部現代社会学科3年次生 中田 大賀
    「世界問題としての新自由主義的潮流と福祉国家への支持—アメリカと日本のデータの分析—」
  • 現代社会学部現代社会学科4年次生 日置 七緒
    「『変革のシルエット』~ベトナム女性の伝統衣装アオザイから考える社会的情勢とボディイメージの関係性~」
  • 国際関係学部国際関係学科3年次生 松澤 健
    「海洋進出新主体としての中国海警局—『沿岸警備隊』の台頭を読み解く—」
  • 国際関係学部国際関係学科4年次生 道井 知真
    「『日本防衛協力の選択肢』—国際安全保障のステークホルダーとしての日本—」
  • 国際関係学部国際関係学科1年次生 南 怜那
    「性と自己の確立—同性婚を世界の事例とともに考える—」
   ※区分ごとに氏名の50音順

若泉敬 記念基金

若泉 敬(わかいずみ けい 1930-1996年)国際政治学者。東京大学法学部を卒業し、ロンドン大学やジョンズ・ホプキンズ大学に留学。1966 年に本学教授として招聘され、同年世界問題研究所所員となり、1970 年から 1980 年まで同研究所所長を務める。1992 年退職時には退職金の全額を同研究所の活動資金として寄付。同研究所では 2001 年にこれを「若泉敬記念基金」と命名。若者の教育に熱心だった若泉教授の精神を学生に伝承するため、講演会開催、懸賞論文募集などの経費に充てている。
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