2022年度「若泉敬記念基金」懸賞論文表彰式開催

2023.04.11

2023年3月15日(水)に、京都産業大学世界問題研究所主催の2022年度「若泉敬記念基金」懸賞論文表彰式がオンラインで開催されました。世界問題研究所の所員や関係者、懸賞論文の入賞者など17人が参加しました。

「若泉敬記念基金」懸賞論文は、長年にわたって世界問題研究所所長を務めた故 若泉 敬 教授の寄付をもとに設置された「若泉敬記念基金」の活動の一環として実施されています。本学の学生を対象に「今日の世界問題に関するテーマを各自で設定し、副題をつけて論じる」という趣旨で論文を募集したところ、本年度は18篇の応募作があり、二席2篇・佳作7篇と過去最多の計9篇が入賞しました(一席は該当作なし)。

表彰式では世界問題研究所所員の岩本 誠吾 法学部教授が司会進行を務めるなか、所長の 川合 全弘 法学部教授から所長挨拶があり、受賞者に対する祝辞の中で、「本来、『文化』の語源は“耕す”ことにある。読み、書き、考えながら、吾が心田を耕すことだ。これこそ、人間にとって不可欠の言語能力を涵養し、想像力と創造性を開発し、精神的貧困を克服する身近な王道である。そしてまた、これこそ、教育の本質ではないだろうか」という若泉敬先生の言葉が紹介されました。

つづいて、二席の2篇について、所員の久保 秀雄 法学部准教授から、どのような点が高い評価を得たのか、詳しい講評がありました。また、佳作の7篇については、所員の中谷 真憲 法学部教授から、優れた点とさらなる研鑽を期待する点などについて、個別に講評が行われました。

そして、来賓である世界問題研究会INC(インターネットクラブ)幹事の木野正博氏から、1966年に創立され2001年まで本学文化団体連盟構成クラブとして存続した学生団体である世界問題研究会の歩みについてご紹介があるとともに、研究会での研究活動が卒業後に勤務した総合商社で大いに役立ったので、学生の皆さんも今回の経験を糧に活躍してほしいといったエールが送られました。

その後、入賞者一人一人から執筆時の苦労や受賞の喜びなどが語られました。入賞者からは「自分は沖縄出身者として、若泉先生のご恩に何らかのかたちで報いたかった。」「ゼミの先生から、文責としていい加減なことはいけないと指導され、一文一文を何度も読み直して繰り返し書き直した。文章を書くことの難しさを身にしみて感じた。」「大学院進学を考えているが、自分に自信がなかったので、第三者に評価して頂ける貴重な機会となった。」「現在進行形の出来事を追っていたので、どこで新たな情報を収集すればよいのか悩んだ。」「現地に渡航予定だったが直前にコロナのため中止になったので、代わりにオンラインでインタビューを行うなど工夫をし、そこが講評でも評価されたのが嬉しかった。」「外国語の専門的な文献を入手して翻訳し、専門外の人にも分かるようにかみ砕いて説明するのが大変だった。ゼミの先生にも相談して、色々とアドバイスを頂いた。」といった声などが、寄せられました。

最後に、インドに研究出張中だった所員の 志賀 浄邦 文化学部教授から、若泉先生の「心田を耕す」という言葉に関連して仏教のエピソードが紹介され、「ブッダもまた、たとえ周囲から批判されようとも、心という田畑を耕すために努力を続けることは人間にとって重要な仕事の一つであり、それは自身のみならず他者の心を耕すことにもつながる、と説いています。これから皆さんも、自身と世界の未来像を描きながら耕した心田に何らかの種を蒔いてみてください。時間がかかるかもしれませんが、必ずやその種は発芽し、将来色とりどりの大輪の花を咲かせてくれると思います」とのコメントが寄せられました。

また、ベトナムの大学で講義があり当日は参加できなかった 加藤 敦典 現代社会学部准教授からは、「「世界」はひとつであると同時に非常に広く、私たちの日常からは想像できないような事態も日々進行しているように思います。受賞者の皆さまの研究はそれぞれのかたちで、このことを改めて認識させてくれているように思いました。」といったメッセージが寄せられました。

二席

  • 法学部 法政策学科 4年次生 川満 拓夢
    「軍用地取引と沖縄県経済」
  • 文化学部 国際文化学科 3年次生 雪丸 温翔
    「戦争への抵抗としての代議制—権力論を通して—」

佳作

  • 国際関係学部 国際関係学科 3年次生 池田 遼真
    「地球の寿命と再生可能エネルギー 再エネ大国ドイツの行動予測」
  • 国際関係学部 国際関係学科 4年次生 板坂 梨央
    「カンボジアの初等教育における教育と教師の質的向上—未来学から目指す課題解決—」
  • 国際関係学部 国際関係学科 4年次生 菅 右京
    「歴史の中のベラルーシ反体制運動—反ルカシェンカ政権運動の深層」
  • 現代社会学部 健康スポーツ社会学科 4年次生 馬久地 あすか
    「食べ物を捨てる社会~日本とベトナムの比較研究~」
  • 国際関係学部 国際関係学科 4年次生 森口 颯太
    「ウクライナ侵攻後の抑止概念について 日本のとるべき防衛戦略」
  • 国際関係学部 国際関係学科 3年次生 山口 和華
    「今日の世界問題—援助を終わらせるための援助とは何か—」
  • 国際関係学部 国際関係学科 4年次生 吉馴 真汐
    「より良い国際開発に向けたサスティナブル・サプライチェーンの構築-ガバナンス・制度の視点から-」

若泉敬 記念基金

若泉 敬(わかいずみ けい 1930-1996年)国際政治学者。東京大学法学部、ロンドン大学院卒業。1966年に本学教授として招聘され 、同年世界問題研究所所員となり、1970年から1980年まで同研究所所長を務める。1992年退職時には退職金の全額を同研究所の活動資金として寄付、同研究所では2001年にこれを「若泉敬記念基金」と命名。若者の教育に熱心だった若泉教授の精神を学生に還元するため、講演会開催、懸賞論文募集などの経費に運用している。
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